東京、大阪、愛知、北海道、福岡に引き続き、宮城県も調べてみました。
本記事は、2019年5月下旬に調査を実施し、
- 公表しているクリニックは?
- 妊娠=胎嚢確認としているのは?
- 年齢ごとに妊娠率を並記
という観点で構成しています。
もしかすると漏れや誤りがあるかもしれませんが、その際はそっとDMかコメント欄よりご指摘いただけると有難いです。
業界をなんとなく俯瞰する一つの視点としてお読み頂けると幸いです。
では行きましょう。
クリニックのウェブサイトは更新される性質につき、本調査時点の表示・表現、結果と必ずしも一致しない可能性がありますこと予めご理解ください。
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公表しているクリニックは40%
2019年5月現在、日本産科婦人科学会登録の「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」は17となっており、(病院を除いた)いわゆる専門クリニック(産婦人科含む)で絞ると、実質対象となるのは5院となります。
この5院全てのウェブサイトを調べるにあたって基準としたのは、
- 治療成績の特設ページを設けている
- 又はその他ページで実績についてある程度スペースを割いている
と特設ページの有無、あるいは無くとも他のページである程度実績についてスペースを割いているクリニックを抽出しました。
この基準で調べたところ、治療実績を公表しているのは5院中、
2院(40%)
と、東京(41%)と同じくらいの開示率でした。
ということで以下が公表(成績に言及)している2クリニックです(日産婦名簿記載順)↓
- 京野アートクリニック
- 仙台ARTクリニック
公開情報の内容や表現方法は様々
もちろん公表しているといっても詳細データを全公開しているわけではなく、あくまで
- 妊娠率
- 妊娠数
を、
- 年齢別
- 年代別
- 誘発方法別(自然〜刺激)
- 受精方法別(人工授精〜体外受精)
- 胚グレード別
- 年・年度別 などなど…
といった角度やメッシュから自由に算出していて、基礎となる生データのフォーマット自体は同じなんでしょうが、公表にあたってはその表現方法は様々というのが現状です。
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妊娠の定義を「胎嚢確認」と明示しているクリニック
妊娠の定義を「胎嚢確認(臨床妊娠)」と明確に記載しているクリニックが2院の中でどれくらいあるのかを調べてみました。
結果は、
- 京野アートクリニック
の1院のみでした。
(明確に胎嚢確認との記載はありませんが、「化学的妊娠、異所性妊娠(子宮外妊娠)は含めません」との記載がある為、該当としてカウントしています)
年齢ごとの妊娠率を比較
表現の方法が一緒ではないので、前提を揃えて公平に比較するのは難しいですが、記載のある年齢や年齢帯の妊娠率または妊娠数を
- 妊 娠:心拍/胎嚢確認 > 陽性判定
- 種 類:体外 > 顕微 > 人工授精 >
- 誘 発;刺激 > 自然
- 段 階:凍結胚 > 新鮮胚
- 分 割:胚盤胞 > 分割胚 >
- 質評価:合計 > 最良 > 良好 >
- 個 数:1個 > 2個
- 期 間:最新(含む) >>>
- 妊娠率:移植 > 採卵 > 患者 あたり
と、各CLのウェブサイトに上記左側からの項目記載がある条件での妊娠率または妊娠数を年齢や年齢帯ごとに並べてみました(上記各項の左から最初にヒットした条件における妊娠率をピックアップし並べたもの)。
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まとめ
宮城県って、登録施設内における専門クリニックの割合が少ない印象ですね。
同県の日産婦登録の「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」は17院と、福岡県の18院とほぼ同じですが、病院を除く専門クリニックの割合は低いように思います。
これまで調べた都道府県を並べて比べてみると一目瞭然です。
比較 | 全登録施設数 | 病院除く施設数 | 割合 |
---|---|---|---|
宮城 | 17 | 5 | 29% |
福岡 | 18 | 12 | 66% |
東京 | 102 | 72 | 70% |
大阪 | 42 | 34 | 80% |
愛知 | 41 | 29 | 70% |
北海道 | 32 | 19 | 59% |
病院を除くいわゆる専門クリニックの割合は福岡の半分ですね(ただ、人口も福岡の半分なので専門クリニックの人口比割合はほぼ一緒ではありますが)
これまで登録施設内における専門クリニック割合は北海道が低いなぁと思っていましたが、宮城はその上を行きますね。
この割合をみて思うのは、同県において高度生殖医療を担うのは「病院」が主役と言えるのではないでしょうか(これって国内初の体外受精を成功させた東北大学のお膝元ということが関係してたりするのでしょうか?)
あとは、新幹線で東京まで1時間半というアクセスの良さをいかして、実は都内のクリニックに通うという事情が実は結構あったりして、だから専門クリニックの割合が少ないとか。
とは言え、倍の人口の福岡と全登録施設数(宮城17、福岡18)がほぼ一緒ということを考えれば、宮城県は高度生殖医療の環境(数として)は充実しているとも言えそうです。
※追記
宮城の方からDMにて以下情報を得ましたので参考情報として追記します。
やはり宮城県では不妊治療においては病院が主のようです。
私は宮城県のスズキ記念病院というところで不妊治療をしています。
創設者の方は(もう亡くなられてますが)東北大学病院の教授時代に日本初の体外受精による妊娠出生に国内初の成功。 その後、日本初の体外受精の高度不妊治療専門の医療施設、スズキ病院を開設されました。
その後、日本初の顕微授精の妊娠出生も成功され、数年後には日本初の成熟卵子の凍結解凍後の受精・妊娠・分娩に成功。 現名誉院長先生も東北大学病院時代、成功された一員です。
不妊治療では昔から有名な病院なので、生殖医療科はいつも混みあっていて、県内はもちろんのこと、県外からも患者さんは来院すると聞いたことがあります。
データの開示はクリニック選びの一つの参考にはなるものの、妊娠〜出産に至るには様々な要因があるため、一概に妊娠率が高いクリニックがイコール必ずしも自身に合うということではなく、それはまた別の話であることを認識しておく必要があると考えます。
さらにいえば、クリニックの自主性に任せたデータ開示は恣意的になっていないとも言えないですし、また中途半端に表層的なデータ開示にとどまることで、悪くいえば「妊娠率が高いか低いか」と読み手側の選定基準を極端に「単純化」させてしまわないかと危惧する部分もあったりします。端的に丸められた結果だけでなく、その結果の過程(根拠)を確認できる情報もセットされていることが大事かなと。
ということで、一箇所で比較検討できるように学会が詳細データを公開してくれると良いんですけどね。公的機関による開示なら公正でしょうし(と信じています)。
次回、神奈川やります。
夫
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