本記事は、2019年5月下旬に調査を実施し、
- 公表しているクリニックは?
- 妊娠=胎嚢確認としているのは?
- 年齢ごとに妊娠率を並記し比較
という観点で構成しています。
もしかすると漏れや誤りがあるかもしれませんが、その際はそっとDMかコメント欄よりご指摘いただけると有難いです。
業界をなんとなく俯瞰する一つの視点としてお読み頂けると幸いです。
では行きましょう。
クリニックのウェブサイトは更新される性質につき、本調査時点の表示・表現、結果と必ずしも一致しない可能性がありますこと予めご理解ください。
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公表しているクリニックは37%
2019年5月現在、日本産科婦人科学会登録の「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」は32となっており、(病院を除いた)いわゆる専門クリニック(産婦人科含む)で絞り、現在体外受精の受付を休止している1院を除くと、実質対象となるのは19院となります。
この19院全てのウェブサイトを調べるにあたって基準としたのは、
- 治療成績の特設ページを設けている
- 又はその他ページで実績についてある程度スペースを割いている
と特設ページの有無、あるいは無くとも他のページである程度実績についてスペースを割いているクリニックを抽出しました。
この基準で調べたところ、治療実績を公表しているのは19院中、
7院(37%)
と、東京(41%)、大阪・愛知(59%)を下回る開示率でした。
ということで以下が公表(成績に言及)している7クリニックです(日産婦名簿記載順)↓
- 岩城産婦人科
- 神谷レディースクリニック
- 美加レディースクリニック
- 産科・婦人科北見レディースクリニック
- レディースクリニックぬまのはた
- セントベビークリニック
- さっぽろARTクリニック
公開情報の内容や表現方法は様々
もちろん公表しているといっても詳細データを全公開しているわけではなく、あくまで
- 妊娠率
- 妊娠数
を、
- 年齢別
- 年代別
- 誘発方法別(自然〜刺激)
- 受精方法別(人工授精〜体外受精)
- 胚グレード別
- 年・年度別 などなど…
といった角度やメッシュから自由に算出していて、基礎となる生データのフォーマット自体は同じなんでしょうが、公表にあたってはその表現方法は様々というのが現状です。
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妊娠の定義を「胎嚢確認」と明示しているクリニック
妊娠の定義を「胎嚢確認(臨床妊娠)」と明確に記載しているクリニックが7院の中でどれくらいあるのかを調べてみました。
結果は、
- 神谷レディースクリニック
- さっぽろARTクリニック
の計2院と、3割弱でした。
年齢ごとの妊娠率を比較
表現の方法が一緒ではないので、前提を揃えて公平に比較するのは難しいですが、記載のある年齢や年齢帯の妊娠率または妊娠数を
- 妊 娠:心拍/胎嚢確認 > 陽性判定
- 種 類:体外 > 顕微 > 人工授精 >
- 誘 発;刺激 > 自然 >
- 段 階:凍結胚 > 新鮮胚
- 分 割:胚盤胞 > 分割胚 >
- 質評価:合計 > 最良 > 良好 >
- 個 数:1個 > 2個
- 期 間:最新(含む) >>>
- 妊娠率:移植 > 採卵 > 患者 あたり
と、各CLのウェブサイトに上記左側からの項目記載がある条件での妊娠率または妊娠数を年齢や年齢帯ごとに並べてみました(上記各項の左から最初にヒットした条件における妊娠率をピックアップし並べたもの)。
年齢帯のくくりが様々ですね。
見やすいように似たメッシュで表記しているクリニックを近づけて並び替えてみましょう。
年齢帯ごとに分割している数でみると、
- 分割無 → 2院(29%)
- 3分割 → 1院(14%)
- 4分割 → 3院(43%)
- 5分割 → 1院(14%)
個人的には最低でも、〜30代前半・後半・40代以上という年齢帯で分かれている、3分割以上のクリニックは親切だなと感じますね。
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まとめ
開示率低いですね。
正直、治療成績として「独立したページ」があり、内容が比較的「濃い」のは、
- 神谷レディースクリニック
- さっぽろARTクリニック
の2院。
なお今回調べてわかったのは、婦人科や産科に「加えて」不妊治療を行なっているところが多く、不妊治療「のみ」を行なっているのは恐らく、
- 神谷レディースクリニック
- 美加レディースクリニック
- セントベビークリニック
- さっぽろARTクリニック
- さっぽろARTクリニックn24
の5院かと思います(最後の2院は同系列)
これって他地域に比べ、人口に比して凄く少ない印象です。特に北海道はデカイので通院距離も他地域と比較して相対的に長くなってしまうと思われ、不妊治療を受ける環境としては非常に大変な環境なのではないでしょうか。
そういった環境を補っているのが病院や産婦人科なんだと思いますし、その重要性は他地域よりも高いように思われます。
実際、日本産科婦人科学会の北海道における「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」名簿内での病院や産婦人科の割合は他地域よりも多かったような気がします。
以下は以前に実施した全国の通院先アンケートです。この中で道内の通院距離について言及していますので、ご参考まで。
データの開示はクリニック選びの一つの参考にはなるものの、妊娠〜出産に至るには様々な要因があるため、一概に妊娠率が高いクリニックがイコール必ずしも自身に合うということではなく、それはまた別の話であることを認識しておく必要があると考えます。
さらにいえば、クリニックの自主性に任せたデータ開示は恣意的になっていないとも言えないですし、また中途半端に表層的なデータ開示にとどまることで、悪くいえば「妊娠率が高いか低いか」と読み手側の基準を「単純化」させてしまわないかと危惧する部分もあったりします。端的に丸められた結果だけでなく、その結果の過程(根拠)を確認できる情報もセットされていることが大事かなと。
ということで、一箇所で比較検討できるように学会が詳細データを公開してくれると良いんですけどね。公的機関による開示なら公正でしょうし(と信じています)。
次回、福岡やります。
夫
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