少し前になりますがリプロダクションクリニック東京(RCT)の説明会に行ってきたので、説明会の内容を共有したいと思います。
リプロの説明会は1時間くらいとコンパクトにまとまっていて、わかりやすかったですね。
同クリニックの方針など、ポイント(要点)のまとめと、全てメモった全貌を記載しておきますので、リプロを検討されている方は参考にしてください。
(自身の勉強のためにも)あくまで説明会内容をある程度まとめながら、私見なく淡々と書いているものとなります。
くっそ長いので(約1.7万文字=原稿用紙約43枚分に相当)、簡単ですが最初に要点をまとめています。詳しいことが知りたい場合は読み進めてみてください。
また、以下「目次」の中で気になる項目があればタップすると詳細にジャンプできますよ。ご活用ください。
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RCT説明会内容の要点まとめ(ポイント要約)
今回説明会に出てみて、リプロダクション東京は不妊治療を病気であると捉えており、幅広い患者層に対応できるクリニックだなと感じました。
- 刺激〜自然周期
- 新鮮胚移植〜凍結胚移植
- 体外受精(顕微含む)〜人工授精
- 体外受精に伴うリスクへの手厚い対策
- 妊娠を高めるオプション
- 不育症の検査から治療
といった幅広い治療オプションを有しているという点では至れり尽くせりのクリニックだと思います。まさに不妊治療界の総合商社です。
更にいうならば
不妊治療の最後の砦
不妊治療者の駆け込み寺
といった感じでしょうか(と感じました)。
一応、自然周期もありますが、個人的にはほぼ「刺激周期」メインのクリニックかと思います。
早い内にいかに多くの卵を採ることができるか
突き詰めると、ここに重点を置いているクリニックだと思いますね。
よって多くの卵を採るためにはホルモン補充の「刺激周期」が有効だと。
ただ、そこを基本としながらも、それができない患者に対しても真摯に全て対応できるよう努力しているクリニックだと感じました。
転院先として最後までNACと本当に悩みましたね。興味のある方はこの先を読み進めてみてください。
- 不妊は病気
- 卵子は老化するので、早いうち(質が落ちないうち)に薬を用いて、たくさんの卵を採り凍結保存する。
- 体外・顕微を主に人工授精も個別に対応可能。
- 移植は胚盤胞または初期胚どちらも対応しており、卵の凍結のタイミング(発育過程)を分けることもできる。
- その人の状態に応じて刺激から自然周期(完全自然周期もあり)、また高FSHの方にもFSH周期で対応できるという幅広い選択肢を有している。
- 不育症の検査および治療も可能。
- 基本的には刺激周期が主であり、投薬によるさまざまな弊害(OHSSなど)もあるが、こちらに対しても予防としての投薬をしっかりと行い対策を取っている。
- 年間361日開院しておりベストなタイミングを逃さぬ体制を敷いている。
↓説明会の流れと各要点↓
【卵子や精子について】
- 卵子は増えない減る一方
- 卵子は加齢と共に老化
- 加齢と共に流産率は上昇
- 加齢と共に生産率は下降
- 精子は毎日射精が望ましい
- 精子は日産1,000万匹
妊娠のメカニズムや男女の体の構造など基礎的な部分の説明。
【体外受精について】
- ふりかけ式と顕微授精(AIHも対応可)
- 最初はスプリット法から
- 刺激から自然周期まで対応可能
- その人にあった治療方法を提供する体制構築
- 高FSHの方でもFSH調節周期で対応可能
- 各周期のメリットデメリットの明確化
- 採卵は基本的に局所麻酔を使用(全身も有)
- 採卵は全ての卵胞に針を刺し採取する
- いかに卵を多く採れるかが鍵(=刺激)
- 刺激周期での薬の副作用は心配不要
- 成熟卵のみを選抜し育て移植する
- 採精は院内または自宅どちらでも可
- 基本は凍結胚移植
- 初期胚移植と胚盤胞移植どちらも対応可能
- シート法など妊娠率を高めるオプション有
- 移植卵数は原則1個なるも2個まで対応可
- 刺激周期は自己注射が基本(指導実施)
- 妊娠判定は血中hCG値と超音波での胎嚢確認
【体外受精のリスクについて】
- 採卵に伴う身体的リスク(出血等)
- (採卵時)麻酔のリスク
- OHSSのリスクと予防策
- 多胎妊娠・子宮外妊娠・不育症のリスク
これらの詳細な説明。
【その他】
- サプリや薬の摂取可否について
- 禁煙は不妊治療の一環
- PCOSの治療にはドリリングが有効
- 子宮内膜症の場合は体外受精が有効
- 不妊は病気。健康保険の対象となるべき
- 助成金は申請期限を必ず確認のこと
- 他に助成金が無いか役所で必ず確認のこと
- これまでのRCT治療実績
- 不妊は病気
ライフスタイルや助成制度など不妊治療関連情報の説明。
以下、説明会内容のほぼ全て
まずは基本的なところ(妊娠の仕組み)から説明は始まります。
自然妊娠の成立の仕組みと体外受精
【自然妊娠の仕組み】①膣内で射精____↓②精子が子宮を通り抜け卵管内に入る____↓③排卵(卵の生成と発育後)____↓④卵子が卵管采に取り込まれる____↓⑤卵管内(卵管采近く)で受精____↓⑥受精卵が、分割・成長しながら卵管から子宮へ移動する____↓⑦排卵から1週間で子宮に着床
②精子が子宮を通り抜け卵管内に入る
子宮の入り口である子宮頚管まで精子が来ているかどうかは「フーナー検査」で確認が可能。それ以上先(子宮〜卵管)まで精子が入って行っているかはサンプルを取れないので確認はできない。
精子の状態については「精液検査」で確認が可能。
③排卵(卵の生成と発育後)
卵胞の中に必ずしも卵子が入っているとは限らない。空胞もある。空胞の割合は約2〜3割。つまり卵子が入っている卵胞の割合は7〜8割。
④卵子が卵管采に取り込まれる
卵子は卵胞が破裂し飛び出るが、卵管采にうまくキャッチされないと卵管には入れない。ただ世界中でだれもこのキャッチの瞬間を捉えた人はいない。なのでどういう条件だと上手くキャッチされるかということはわかっていない。
またキャッチされないことを「ピックアップ障害」と言い、不妊原因の12%を占めると言われている。キャッチされれば卵管膨大部へ移動し精子を待つ。
⑤卵管内(卵巣近く)で受精
精子は卵子の周りに集まる性質がある。通常は出会えば自然に受精するはずであるが、受精しない原因はわからない。この部分は調べようがない。
⑥受精卵が、分割・成長しながら卵管から子宮へ移動する
受精すると子宮を目指し卵管を移動しながら約1週間をかけて胚盤胞となる。
POINT妊娠に至る過程の大半は調べることができない。しかし、体外受精であれば確認ができない卵管内の過程を体外で人為的に行えるのでカバーができる。あとは移植して着床すれば妊娠となる。
卵子の老化と精子について
卵子の数
生涯作られる精子と違い、卵子の元となる原始卵胞は生涯一度しか作られない。
生まれた時に卵子の元となる原始卵胞は200万個程あるが、これをピークにあとは減る一方。閉経年齢は40〜60歳と開きがある。
卵子の数は「AMH」という抗ミュラー管ホルモンを調べると、ある程度卵子の数がわかる。AMHは、35〜37歳で平均3.65位となる。
年齢 | 平均AMH値(ng/mL) |
30歳未満 | 6.44 |
30〜34歳 | 4.96 |
35〜37歳 | 3.65 |
38〜39歳 | 3.00 |
40〜45歳 | 1.93 |
46歳以上 | 0.96 |
・AMHの測定(採血)はできるだけ生理の頃に測定するのが望ましい。
・単位がng/mLと、pmo/L(pM)の2種類があるので注意。ng/mL=pM ÷ 7.14(試薬によっては5.5の場合もある)
卵子の質・老化
卵子の質は年齢。生まれてから眠っている間にダメージを受けている。
つまり加齢=時間の経過により異常な卵子が増える。
異常な卵子の増加は、
・妊娠率の低下
・流産
・奇形率
を招く。
卵子の質の低下による妊娠率低下を今の医療技術では改善できない。よって早く治療することが大事。早め早めに対処することで、
・時間
・お金
・身体的負担
が小さく少なくて済む。
遅くなればその逆で、より高度で高額な治療をすることになる。
年齢と関係するホルモン「FSH」について
FSHは年齢とともに高くなり数値が100位に達すると閉経すると言われている。
数値としては15が基準で、それ以下なら青信号。いつ測っても15を超えていると赤信号。
ただFSHが15を超えてくる人というのは、AMHが1を切ってからがほとんどで、AMHが1を切っていなければFSHの値をそれほど心配する必要はない。つまりFSHの値よりAMH値の方が大事(優先)。
ちなみに、FSHが70位まで上がったら普通は諦めるが、RCTは諦めない。”FSH調節周期” というもので対処する。
一例として、他院で過去1年間採卵できなかった人が、RCO(リプロ大阪)で毎月確実に1個づつ卵が取れ、妊娠に導いた事例あり。その人の年齢は43歳だった。
体外受精の年齢別妊娠率
日産婦のデータによると、35歳付近から1つ歳をとるごとに妊娠率は3%づつ低下していく。
染色体異常(ダウン症等)や流産率について
ダウン症は20歳で約1,600人に1人、40歳で約100人に1人(1%)の割合で生まれる。
ダウン症含めたすべての染色体異常だと、20歳で約500人に1人、40歳で約60人に1人となる。
出産時母体年齢 | ダウン症 | 染色体異常 |
20歳 | 1/1667 | 1/526 |
25歳 | 1/1200 | 1/476 |
30歳 | 1/952 | 1/385 |
35歳 | 1/378 | 1/192 |
40歳 | 1/106 | 1/66 |
45歳 | 1/30 | 1/21 |
流産率については、平均で15%。35歳で20%、40歳で40%と、加齢と比例し高くなっていく。
年齢 | 流産率(流産/妊娠) |
平均 | 15% |
35歳 | 20% |
40歳 | 40% |
42歳 | 50% |
体外受精における年齢別生産率
生産率とは、流産を除外した出産率。
年齢 | 生産率 |
40歳 | 12.1% |
41歳 | 10.3% |
42歳 | 7.6% |
43歳 | 4.9% |
44歳 | 2.6% |
45歳 | 1.6% |
現実的には、43歳までが体外受精で妊娠可能な妥当な時期だと考えている。ただ年齢だけで測れない要因もあるので、あくまで目安。
よくメディアで、芸能人の高齢妊娠〜出産のニュースが流れるが、あれは氷山の一角。うまくいった人だけが公表しているだけで、裏側にはうまくいっていない人たちが多くいることを知っておくべき。
精液検査について
精液検査の基準値はWHOを基準としている。
このWHOの数値は10年に一度の頻度で改定されるもの。勘違いしていけないのは、この数値は妊娠できる数値ではないということ。
この基準の設定方法は、過去1年以内に妊娠した夫の精液を並べて下から5%に線を引いたものである。つまりだいぶ下の基準である。
例えば正常形態率が4%ということは、裏を返せば96%が奇形でも良いということ。さらにいうと、形態が正常だからといって遺伝子が正常かはわからない。
2010年 WHO改定基準 | |
精液量 | 1.5mL以上 |
精子濃度 | 1,500万個/mL未満 |
精子運動率 | 40%以上(うち8割が前進運動精子) |
正常形態精子 | 4%以上(=奇形率96%未満) |
精液中白血球 | 100万個/mL未満 |
色調 | 乳白色 |
ちなみに、精液の採取はクリニック(採精室3部屋完備)でも、自宅でもどちらでも構わない。
精子の1日の生産量
精子は1日1,000万匹作られる。精子は精巣の中の精細管で作られ、精液は前立腺と精嚢で作られ精子とは別の場所で作られている。
精子の生産にはある程度精巣にスペースが必要。よってスペースを空けるため適度な射精が大事。
また古い精子は活性酸素が出て精子や精子を作る細胞にダメージを与えるので、溜めすぎは良くない。理想の射精頻度は毎日。これにより精子の質は良くなる。
ただ毎日はきついと思うので、実際には2日に1回もしくは週に3〜4回位が現実的で、質問されたら禁欲は1〜3日位でいいと指導している。
射精頻度が多くなると薄くなると思われがちだが、精子はそれほど少なくはならない。ただ精液は作られるスピードが遅いので確かに精液量は減り薄くなる。
精子に良いこと18か条
- 禁煙
- ブリーフよりトランクス
- 飲酒は適量に
- 長風呂、長サウナは避ける
- 自転車やバイクに乗り過ぎない
- 放射線に要注意
- 育毛剤を飲まない
- 規則正しい生活
- 膝上でノートPCを使わない
- 禁欲しすぎない
- 運転しすぎない
- 携帯電話は精巣から離す
- 昔ながらの食生活
- 太りすぎない
- アンチエイジングを考慮
- 有機化合物に注意
- 環境ホルモンに注意
- 心理的ストレスの軽減を
参考に。
体外受精について
大きな6つのステップ
①卵胞育成(注射で数を育てる)
_____↓
②採卵(卵胞から卵を採取)
_____↓
③受精(体外受精・顕微授精)
_____↓
④胚移植(受精卵を子宮に入れる)
_____↓
⑤黄体補充(刺激周期)
_____↓
⑥妊娠判定
①卵胞育成(注射で育てる)
hMG注射で卵胞をたくさん育てるところからスタート。この注射は毎日22〜23時に自分で注射するため各自注射の仕方を覚えてもらうことになる。
卵胞を育てている時に排卵してはいけないので、以下の様な点鼻薬(鼻のスプレー)または注射を併用しおさえる。
使用方法 | 名前 | 違い |
点鼻 | Long法 | 長く使う |
Short法 | 短く使う | |
注射 | アンタゴニスト法 |
そして卵を成熟させる為に「hCG」を注射する。
自己注射が怖い場合は、ご主人に打ってもらうのも一つの手。その場合はご主人に打ち方の指導も可能。
クリニックでの注射も診療時間内であれば対応も可能だが、採卵2日前の注射だけは夜間の時間指定(営業時間外)で行う為、必ず自己注射となる。
ちなみに、このような刺激法は個人差が大きいので、
- 年齢
- AMH
- FSH
- 他院での治療歴(卵の取れ方、刺激歴等)
をみて決めていく。
よって100人いれば100通りのやり方がある。
②採卵(卵胞から卵を採取)
麻酔
採卵に痛みが伴うと怖がられるが、局所麻酔を使用するので問題ない。
そもそも卵巣には痛みの神経はないので局所で十分と考えているが
・痛みに弱い
・それでも怖い
・卵胞が多く採取に時間がかかる
といった場合には、完全に眠る全身麻酔も選択可能。
現在は局所麻酔が約9割、全身麻酔が約1割といった比率。
採卵方法
採卵は超音波装置で見ながら大小に関わらず全ての卵胞に針を刺していく(吸引)。
これは、超音波ではどこに卵子が入っているかわからないため。卵胞の中(体内)を顕微鏡でみることはできないので。
③受精
卵子のグレード
採れた卵子のうち、成熟卵しか受精卵にならない。
割合としては、10個取ったら成熟卵7個、未熟卵子(GV・M1)2個、変性卵1個位といった比率。空胞率2〜3割の中で採卵しても、さらにここでも目減りするということ。
受精方法
受精方法は
・ふりかけ
・顕微授精
の2つ。
受精率は ふりかけ で5〜8割となっている。顕微授精(ICSI)でも同じく5〜8割位。
基本的に初めての高度不妊治療の方にはスプリット法を推奨している。
このスプリット法は、体外受精と顕微授精を同時に行うもの。採った卵子を2 つのグループに分け、一方を体外受精、もう一方を顕微授精とすることで、受精率を高めることができる(リスク分散)。
体外受精と顕微授精の分配比率は卵の採れ方をみて、1:1だったり1:2だったりとその人ごとに最適と思われる比率で行う。
さらにこの二つを同時に行うことで受精障害もわかる可能性がある。スプリット法で受精障害がないことが確認されたら2回目以降は基本的に ふりかけのみで進めていく。
ただ、精子の状態として、
・数が少ない
・運動率が悪い
・奇形率が高い
・精巣の精子を使う
という場合には、顕微授精1択となる場合もある。
顕微授精と聞くとよく
「卵子に針を刺したり抜いたりして問題ないのでしょうか?」
との質問を受けるが、問題ない。
風船にセロテープを貼って針を抜き差しするようなもの。ちなみにセロテープの役割は透明帯=殻が担っている。
精液検査と採卵当日の採精について
精液はクリニック(採精室3部屋完備)でも、自宅でとってもどちらでも構わない。
また精子の凍結も可能。採卵当日の旦那さんの都合が悪い場合、採卵前日までに精液を提出してもらえれば凍結保存も可能。
受精判定
受精させたら翌日受精判定を実施。
判定は精子と卵子にそれぞれあるPNと呼ばれる前核が二つになっていたら受精と判定(受精したら精子と卵子から1+1で2PNとなる)。
受精卵の成長過程
受精卵の成長2日目で4分割、3日目で8分割=初期胚、4日目になると細胞がくっつきひとかたまりになる=桑実胚、5日目以降は胚盤胞と呼ばれる。
受精卵成長過程目安 | ||
日数 | 分割 | 名称 |
1日目 | 2分割 | 2細胞期胚 |
2日目 | 4分割 | 4細胞期胚 |
3日目 | 8分割 | 初期胚 |
4日目 | 一塊に | 桑実胚 |
5日目 | 胚盤胞 | |
6日目 | 拡張胚盤胞 | |
7日目 | 脱出胚盤胞 |
④移植
使用する卵と移植方法
移植する卵は、
- 初期胚
- 胚盤胞
のいずれかを使用。
初期胚と胚盤胞どちらが妊娠率が高いかというと胚盤胞が高い。それは成長が先まで進んでいるから。通常、体内では胚盤胞の段階以降で着床するので、その環境と同じで胚盤胞にして移植する方が着床・妊娠率は高い。
ちなみに妊娠率が高いので胚盤胞しか取り扱っていないクリニックも多くあるが、裏を返せば胚盤胞にならない場合は対応できないということ。
「胚盤胞にならないあなたの卵に、うちは対応できません」
と簡単にギブアップされることも多いと聞く。
しかし、RCTは初期胚移植も行っているので問題ない。初期胚で普通に妊娠する。そもそも体内と体外での生育環境は違うので、体外環境で胚盤胞にならなくとも、初期胚で母体に戻すと胚盤胞になる可能性もある。
つまり、初期胚も扱えるRCTは選択肢が多いので相対的に妊娠率はあがるといえる。ある一つの方法に固執することは可能性を狭めていることに等しい。よってRCTではなんでも対応できるようにしている。
また移植方法は、
- 新鮮胚移植
- 凍結胚移植
の2通り。
現在日本では凍結胚移植が主流であり、基本的には凍結胚移植で行うことになる。
凍結胚移植とする理由は、
- 約10%ほど妊娠率が高い
- 採卵周期は着床環境が悪い
- 子宮外妊娠の回避
- OHSS※(卵巣刺激症候群)の回避
※卵胞が過剰な刺激により膨れ上がり腹水などが溜まる症状
採卵周期は卵胞からのホルモンが出にくい状況(卵胞吸引後は自力ではホルモンが出ない状況)になっており着床環境は良いとは言えない。
さらに言うと、妊娠出産に伴うリスク(周産期リスク)も減らしてくれる。このリスクとは
・分娩前の出血
・早産
・低出生体重児
・周産期死亡
・妊娠高血圧症候群
など。基本的に凍結胚移植は良いことづくめ。
また日本は凍結技術で世界のトップを走っており、他国の約5年先くらいを行っている。
余談だが、凍結移植は日本人を始めとして日本に近接するアジア圏で多く、欧米ではそれほど多く無い。これは日本の凍結技術が高いことが背景にあるものと思われる。
具体的な移植方法は、
- TV法
- TM法
で行う。
TV法は子宮頚管からチューブで移植する方法。柔らかいチューブで痛みはない。
TM法は子宮の形によって子宮頚管からチューブが入らない場合、子宮に針を刺して注入するという方法をとる(TOWAKO法)。
その他、妊娠率(着床率)を高める方法
- 二段階移植法
- シート法
- スクラッチング法
- G−CFS法
通常の移植以外にも移植の方法は上記のようなものがある。
二段階移植法は、約15年前くらいに出てきた移植方法。
これはまず3日目の初期胚を移植し、5日目以降にさらに胚盤胞も移植する。2個移植することで確率を上げようというものだが、実は最初の卵(初期胚)が着床環境を良くしてくれ、2個目の胚盤胞の着床を助けるという作用もある。ただ言わずもがな双子の可能性も高くなる。
この二段階移植法を1つの卵で行えないかと考案されたのが、シート法。
これは日本で考案されたもので、体外環境で培養されている胚盤胞の培養液(この培養液には胚盤胞の周りから染み出たエキスが含まれている)を保存しておき、先にこれを体内に入れることで、二段階胚移植の1個目の初期胚移植と同等の効果(=着床環境改善)が得られる。
体外環境で胚盤胞まで育てられる人はこのシート法が可能。ただこのシート液(培養液)は1回の採卵で、1回か多くて2回分くらいしか取れないのがネックではある。
よって、この液がなくなった場合には他の方法として「スクラッチング法」や「G−CFS法」という方法がある。この二つの方法は同じ狙いがある。
そもそも着床現象とは炎症反応を伴うもの。つまり子宮内に軽い炎症が起きると着床に有利に働くことがわかっている。そこで人為的に炎症を起こそうというのがこの二つの方法である。
スクラッチングは機械的に ”こする” ことで炎症を起こし(惹起)、G−CFS法は化学薬品を注入して炎症をおこす(炎症物質注入)。これにより着床率の安定を目指す。
このシート法、スクラッチング法、G−CFS法の実施は移植前に行うもの。
これに加え、さらに移植当日にできることもある。それは「エンブリオグルー」というもの。
グルーとは、糊(のり)という意味で、糊のような粘り気の高い培養液を用いて移植を行う。これにより受精卵が子宮内膜にひっつきやすくなる。
こういったその人にあった組み合わせ(シート法+エンブリオグルーとか)を提供できる点もRCTの強み。
移植する卵の数
戻せる卵の数は参加婦人科学会で原則1個だが2個までは許容となっている。
多胎を避ける理由は、
- 双子の妊娠は母体や胎児へのリスクが2倍から16倍になる
- 未熟児を受け入れる施設「NICU」が慢性的に不足している
ことから。
後者は都市部、地方関係なく全国的にあり得る。上記のようなことから、なるべく双子にはしない。
移植を実施しない場合もある
以下のような場合にはその周期に移植を実施せず、次周期に持ち越しとなる。
- 卵子が採れなかった時
- 採取卵が全て変性卵、未熟卵の時
- 受精しなかった時
- 異常受精の時
- 移植出来るまで卵が育たなかった時
- 胚の状態が非常に悪い時
- 卵巣過剰刺激症候群になった時
- 体調面で胚移植できる状態にない時
- 採卵前採血で黄体ホルモンが高い時
ちなみに、黄体ホルモンが高い場合は着床率は通常の半分になるとのデータがある。
⑤黄体補充(刺激周期)
採卵には、刺激周期(ホルモン補充)と自然周期がある。
これはどちらが良い悪いということではなく、人よってに合う合わないがある。よってRCTではどちらも対応できるようにしている。
しかしながら、刺激周期(ホルモン補充)の方が妊娠率が高く、また調節もしやすいのでこちらを選ぶことが多い。
刺激周期(ホルモン補充)のメリットは、妊娠率が高く、スケジュール調整がしやすいこと。1週間くらいなら診察日をずらしても妊娠率にはなんら影響はない。
よって刺激周期は、忙しい人や遠方の人にはオススメ。
デメリットとしては、薬をたくさん使うので文字通り薬漬けとなること。
刺激周期で結果が出ない場合は自然周期に変えてみるとか、その逆もしかり。どちらも対応できるのはRCTの強みである。その人その人にあった方法を見つけることが重要。
⑥妊娠判定
妊娠判定日に血液中の妊娠ホルモン(hCG)を測定し妊娠判定を実施。
血中のhCG | |
数値 | 判定 |
20mIU/mL以上 | 陽性(妊娠) |
5〜20mIU/mL | 判定保留 |
5mIU/mL未満 | 陰性 |
陽性の場合は、1週間後に超音波検査を行い胎嚢確認を行う。
判定保留の場合は、数日後に再度採血をして、hCGを測定する。
妊娠判定陽性後の診察の流れ
まず基本として、採卵日(排卵日)を妊娠2w0dとして計算する。流れは以下の通り。
週数 | 流れ |
4w | 妊娠判定(超音波ではまだ見えない) |
5w | 超音波にて胎嚢(GS)を確認 |
6w | 超音波にて胎児を確認 |
7〜8w | 超音波にて胎児心拍を確認 |
10w〜 | ホルモンサポートはここまで必要。以降は産科外来へ |
妊娠判定陽性後の注意点。初期症状など
妊娠初期症状によく見られる症状として、
- 軽度の下腹部痛
- 違和感
- 少量の出血
- 茶色い出血の付着
これらの症状は特に心配はいらない。よくある初期症状である。
子宮は風船のような形をしており、風船同様、膨らます時に力が必要。だがある一定の大きさに達するとそれほど力をいれずとも膨らむ。
妊娠初期の軽度の下腹部痛は、この風船が膨らむ初期段階と同じで、子宮の拡大と収縮の力が強く拮抗していることが原因。この生理痛のような痛みは2〜3週間でおさまるものなので心配は不要。
また、子宮拡大にともない、子宮周辺の靭帯が引っ張られるため、両足の付け根や左右の下腹部に痛みが出ることもある。こちらも心配は不要。
付着程度の出血については、受精卵が着床して胎盤をつくる際に胎盤が子宮の壁を壊しながら子宮内膜に侵入するので、着床部位で出血が起こる。また着床の場所によっては、その出血が子宮内から膣へ出ていくことがあり、そのため付着程度の出血が起きる。
そもそも出血するのは当たり前の現象で「胎盤を作っていますよ」というサインと考えられている。決して流産のサインではないので、慌てず騒がず平静を保つこと。
ただ生理並みの出血がみられた時や、何か異常と感じることがあればすぐに受診すること。
また、妊娠維持のためホルモン剤(内服薬・注射・膣座薬)の使用を継続することが必要。
薬について、続けるもの、中止するものについては必ず個別に説明する。不明な点があれば必ず医師に確認すること。
妊娠に際しての薬剤やサプリの服用可否について
妊娠後も飲んで良い薬剤やサプリもあれば、服用を中止すべきものがある。以下一覧を確認のこと。
中止すべきもの | 継続OKのもの |
ユベラ | 葉酸 |
DHEA | シナール(ビタミンC) |
レスベラトロール | フェロミア |
温経湯 | ラキソベロン |
加味逍遙散 | マグミット |
メタライト | 当帰芍薬散 |
ノベルジン | 柴苓湯 |
※上記以外の薬やサプリもそれぞれ該当する場合がありますので必ず医師に確認ください。
このほか、万が一緊急などによりRCT以外の病院を受診した場合には、その旨RCTへ連絡のこと。
体外受精に伴う身体的リスク
体外受精に際し、大きく以下リスクが想定される。
- 採卵のリスク
- 採卵時の麻酔に伴うリスク
- その他のリスク
①採卵のリスク
採卵の際に起こりうるリスクは以下の通り。
・腹腔内出血(卵巣出血)
・骨盤内感染(卵巣・卵管感染、腹膜炎)
・迷走神経反射(血圧低下、徐脈、ショック等)
・腸管損傷
などの可能性がある。
腹腔内出血や卵巣出血など、お腹に針を刺すので出血のリスクはゼロではない。
採卵したら必ず膣内にガーゼを入れ、30分〜1時間してから抜き、抜く時にもう一度確認をして出血リスクを減らしている。
その後エコーで膣内とお腹の中を確認し、大丈夫だとの確認が取れてから帰ってもらうようにしている。一般的に他院では採卵したらそのままおかえりというところが多い。
体内に針が入るので、卵管、卵巣、腹膜、骨盤膜などに感染のリスクがないとは言えない。
予防策としては、採卵後に数日間抗生物質を飲んでもらうという方法が一般的だが、RCTでは採卵後のみならず採卵前から抗生物質を飲みダブルで予防する体制をとっている。この体制であれば感染のリスクは限りなく減らせる。
ただ、例外として子宮内膜症(チョコレート嚢腫)がある人は非常に感染しやすい。
チョコレート嚢腫はそもそも古い血液が卵巣に溜まったもの。血液というのはバイキンの生育に非常に好都合なもの(血液培地と呼ばれるものもあるほど)でチョコレート嚢腫の人は「そこに感染してください」と言っているようなものである。
ではどうするか。そこで採卵前後の抗生物質はもちろんのこと、採卵当日に抗生物質の点滴を行いトリプルの予防策をとることでほぼ感染のリスクなくすようにしている。
②採卵時の麻酔に伴うリスク
種類 | 症状 |
局所麻酔 | 局所麻酔中毒 |
舌のしびれ | |
耳鳴り など | |
全身(静脈)麻酔 | 呼吸抑制 |
血圧低下 | |
悪心・嘔吐 | |
気分不良 など | |
重篤な場合 | 呼吸停止 |
低酸素症 | |
アナフィラキシーショック など |
といった可能性がある。
③その他のリスク
その他のリスクとして考えられるのは、
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
- 多胎妊娠
- 流産
- 子宮外妊娠(異所性妊娠)
- 深部静脈血栓症
- 肺塞栓症
- 薬剤アレルギー
など。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防
OHSSは排卵誘発剤の投与により卵胞が過剰に発育し、排卵後に卵巣腫大、腹水貯留等多彩な症状を呈する症候群のこと。おしっこが出ないといったことが多い。このように多くは軽症だが、まれに深部静脈血栓症など、生命に関わる重篤な場合(肺塞栓、脳梗塞など)も起こることもある。
刺激周期をやるにあたり、このOHSSが怖くて夜も眠れないという人がいる。だいたい注射を打って採卵をした2〜5日後位がピークになることが多い。
OHSSのリスクが高い人の傾向として、
・多嚢胞性卵巣症候群の人(PCOS)
・AMHが高い人(卵が沢山取れる人)
・排卵誘発剤が大量に必要な人
・35歳以下の人
・やせ型の人
が挙げられる。
そしてOHSSの予防のためRCTでは以下7つの対策を講じている。
- 採卵をキャンセル(次回はゴナドトロピン投与量の減量)
- コースティング(hMG注射をせず最大3日間E2低下を待つ)
- トリガーのhCGを減量(個人差あるので必要最小限の量に調整が必要)
- トリガーをGnRHaに変更(点鼻薬)
- 黄体補充にhCGを用いない(Pを用いる)
- カバサール内服(ドーパミン製剤)
- 全胚凍結(胚移植は別周期に行う)
このうち、特に6と7が重要。
6番のカバサールという薬はもともと別の目的で作られたものであるが、OHSSの予防に効果があるとして4年程前から使われ始めている。
このカバサール登場前はOHSSの症状で入院する患者が年間3〜5人位は出ていたが、カバサール登場後はほぼ入院する人はいなくなった。非常に有効な薬。
7は全胚凍結は、凍結するのでOHSS完治後に移植が可能。
このようなしっかりとした予防策をとっているからこそ、安心して刺激周期を提供できると言える。
多胎妊娠について
多胎妊娠は胎児のみならず、母体にも影響がある。
以下は1個の胚移植で1人を2回出産した場合と比較した、2個の胚移植で双子を1回出産した場合のリスク一覧。
赤ちゃんの合併症 | |
32週未満の早産 | 7.43倍 |
37週未満の早産 | 12.7倍 |
出生時体重1,500g未満 | 4.72倍 |
出生時体重2,500g未満 | 16.6倍 |
低出生体重児 | 7.62倍 |
呼吸障害 | 4.92倍 |
敗血症(重症の感染症) | 2.31倍 |
黄疸(黄色くなる) | 5.03倍 |
母体合併症 | |
重症妊娠高血圧症候群 | 2.64倍 |
前期破水(陣痛前の破水) | 8.43倍 |
帝王切開 | 4.19倍 |
子宮外妊娠と流産、不育症について
昔、この流産と子宮外妊娠は体外受精に多いと言われていたが独自に統計を取り直したところ、子宮外妊娠は凍結胚であればその確率はぐっと減ることがわかった。
例えば、一般的な統計だと子宮外妊娠に至るのは、人工授精で1.5%。しかし凍結胚を用いた体外受精の場合、0.7%くらいと半分以下に下がる。
さらにRCTの実績から統計を取ると0.3%と非常に低い確率になっている。これは300人に1人の割合。仮に子宮外妊娠となっても早め早めに対応(転院・入院・治療=薬物治療あるいは手術)をすることで対処している。
流産については年齢に依存する。流産率は人工授精でも体外授精でもほぼ一緒。ちなみにRCTでの流産率は30代前半で13%台と低くなっている。
一般的な年齢別の流産率 | |
年齢 | 流産率(流産/妊娠) |
平均 | 15% |
35歳 | 20% |
40歳 | 40% |
42歳 | 50% |
流産は繰り返すことが多く不育症の可能性もある。RCTでは不育症の検査と治療が可能。
通常他院では
「不育症は専門CLに行ってくれ」
と言われがち。それだと時間的にも体力的にも辛くなる。一カ所で検査や治療ができるのは大きなメリットだと思っている。
刺激周期と自然周期の違いや各種採卵〜移植スケジュールなど
- 刺激
- 低刺激
- 自然周期
- 完全自然周期
と不妊治療には色々ある。RCTではこれら全て対応可能。
刺激、低刺激、自然周期の違いや関連性をざっくりいうと、刺激周期1回分は、低刺激3〜4回分、自然周期6〜7回分に相当する。
刺激周期1回分は | |
種類 | 比較 |
低刺激周期 | 3〜4回分に相当 |
自然周期 | 6〜7回分に相当 |
各周期の治療(診察〜採卵〜移植)スケジュール
診察から採卵までの流れ
各周期ともに生理3日目から診察開始し、その後8日目、10日目にも診察と3回ほど。
ホルモン補充(注射マーク)は、刺激周期で約7〜8回、低刺激周期で3回位、刺激周期で1回程度となっている。
採卵は各周期ともにだいたい12〜13日目に行う。
高FSHの人には「FSH調節周期」で対応
プレマリンを使ってFSHの値を下げて対応する方法。
流れとしてはこういった感じ↓
各周期の採卵個数や胚移植率・回数
周期 | 採卵個数 | 胚移植率 | 移植回数 |
刺激 | 12〜15個 | 100% | 3〜4回 |
低刺激 | 3〜5個 | 90% | 1回 |
自然 | 1〜2個 | 40〜45% | 0〜1回 |
FSH | 1〜2個 | 40〜45% | 0〜1回 |
※胚移植率と移植回数は「採卵あたり」。
刺激と自然周期では採卵数に10倍以上の開きがある。
採卵と移植の各周期サイクルイメージ
仮に1月から各周期を同時に始めた場合の採卵と移植のサイクルイメージは以下の通り(☆は妊娠)。
妊娠となるのは、刺激周期で7月、低刺激で10月、自然周期で翌年の2月となる計算(想定です)。
周期 | 妊娠までの最短期間 |
刺激 | 7ヶ月後 |
低刺激 | 10ヶ月後 |
自然 | 14ヶ月後 |
ちなみに刺激周期で7ヶ月後までに妊娠する人の割合は、なんと70%にものぼる。
妊娠後あまった凍結胚は第2子のために残しておくことが可能。
刺激と自然周期のメリットとデメリット
周期 | メリット | デメリット |
刺激 | 卵が沢山取れる | 投薬量が多い |
採卵回数が少ない | 副作用の心配 | |
診察日の調整の自由度が高い | ||
自然 | 投薬量が少ない | 採卵回数が多い |
診察日の調整ができない |
卵子の老化を考えると早いうち(=最初)に採卵した方が良い。卵がたくさんとれるのは刺激。つまり刺激は早めにたくさんの卵を確保しておくことと言える。
また刺激周期というと
「副作用が心配だ」
という声が必ずある。
しかし、投薬による体内のホルモン値は確かに自然周期よりは多いが、人間の体の許容範囲である。
例えば、女性ホルモン(E2)の値を、妊婦と各周期で比較すると、
対象 | E2 |
妊婦 | 30,000 |
刺激 | 3,000 |
低刺激 | 500 |
自然 | 100 |
となる。
ちなみに黄体ホルモン(P4)の値を、妊婦と非妊娠、融解移植周期で比較すると、
対象 | P4 |
妊婦 | 200 |
非妊娠 | 10前後 |
融解移植周期 | 10前後 |
※なぜ妊婦との比較対象が各周期でないのかは不明。説明なし。
妊娠中の女性ホルモンを見れば分かる通り、刺激周期の投薬によるホルモン値上昇は許容の範囲であり、濃度はせいぜい10分の1から20分の1で、女性の体として耐えられるもの。よって過剰に心配する必要はない。
これに対し自然周期は、薬剤の使用が少ないため「自然」と言われる。薬剤で卵を育てないので1回で採れる個数が少なく、どうしても採卵回数が多くなる。ただ、この「採卵」という行為自体は自然なことではないことを理解すべき。
また自然周期は、排卵日が確定したら動かせないので、非常にキャンセルが多くなるというデメリットも。
つまり、物事はどちらから見るかということ。どちらも良し悪しがある。
刺激ができる人は刺激をした方がいいし、刺激ができない人もいるので自然周期にも対応している。
このように、いろんな方法がある。その人に最もあったやり方を提案し最短のルートを示していく。多くの選択肢があるのがRCTの強み。
体外受精の費用一覧
以下に体外受精に関する諸費用一覧を載せました。
非常にたくさんの項目があるので見にくいかもしれませんが、確認し参考にしてください。
よくある質問について
質問1:凍結回数について
「胚凍結1年保存、1回採卵で1回目凍結、2回目凍結、3回目凍結とはどういう意味でしょうか?」
という質問が多い。
RCTでは受精卵の発育状況を見てどのタイミングで、どの受精卵を凍結させれば確率が上がるかを念頭において凍結を行っている。よっていろんなパターンがある。例えば、
3日目に1回目(5万円)
5日目に2回目(5万円)
6日目に3回目(3万円)
という感じの凍結パターンなど、その他いろいろなパターンがある。
3日目と5日目の2回だけだったり、3日目と6日目の2回だったり、あるいは1回だけということもある。
そういったいろいろなパターンに対応できるように細かく価格を設定している。
受精卵や卵子は凍結してから1年後が凍結更新期限となる。
質問2:助成金についての質問
「不妊に悩む方への特定治療支援事業」=助成金は、大まかに以下のようなくくりになっている。
A:採卵+新鮮胚移植(15万円)
B:採卵〜融解胚移植(15万円)
C:融解胚移植(7.5万円)
D:採卵+全胚凍結(15万円)
E:採卵+受精まで(15万円)
F:採卵のみ(7.5万円)※採卵し全胚凍結で、融解胚移植1回の場合はBとなる。2回目以降の融解胚移植はCとなる。妊娠判定日以降でなければ書類は記入できない。助成対象、申請のルールは自治体によって異なるため必ず各自確認のこと。
助成金の書式は住まいの自治体によってちょっとづつ違うので、役所に書類を取りにいった際に特に確認してほしいのが以下2点。
- 申請期限(締め切り)
- その他受けられる助成金の有無
- 対象となる年齢(制限)
申請期限は自治体によって1ヶ月だったり3ヶ月だったりとマチマチ。
また、「これ以外にまだもらえる助成金はないか?」と聞くことも必要。
市町村や県単位で別々に助成があったりする。もらえるものはもらうべき。ただ、聞かないと教えてくれないところが多いので必ずツッコンで聞くこと。
また初歩的ではあるが不妊治療期間の自身の年齢は助成対象となるかどうかは必ず確認のこと。
ちなみにあくまで私見ではあるが、2016年4月よりB部分について初回のみ30万円の助成が始まったが、これは選挙対策ではないかと思っている。この助成は次の選挙までは継続されるだろうと見ている。つまり、裏を返せば次の選挙が終わればなくなる可能性もあるということ。
質問3:精子や卵子を良くするためには
精子や卵子の質を良くする解決策は現在見つかっていない。
ただし、できる限り悪くしない方法はいくつかある。それは
- 環境汚染物質を避ける
- 環境ホルモンを避ける
といったこと。
環境汚染物質を避けるとは、殺虫剤スプレーなどを使わない(吸い込まないように)といったこと。
環境ホルモンはコンビニ弁当などのプラスチック容器を温めた時に発生する。この環境ホルモンが弁当内に溶け出して、はからずも摂取してしまうので、温めないか、別の容器に移して食べることが望ましい。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について
PCOSとは、
- 卵巣のネックレス様多嚢胞
- 排卵障害
- 月経時のホルモン異常(LH>FSH)
を示す症候群。
原因はよくわかっていないがメタボの一種と考えられており、糖尿病の前段階症状(耐糖能異常)をしばしば伴う。このため糖尿病の薬(グリコラン)が有効な場合がある。
排卵障害に対する主な治療は、以下の排卵誘発剤が用いられる(内服・注射)。
・クロミッド
・フェマーラ
・FSH製剤
・HMG製剤
PCOSの人はそうでない人に比べ、排卵誘発剤の注射により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性が高くなる。ただ、OHSSを避けようとして注射量を減らすと卵胞が育たないということもあり、注射量の調整が難しいのが特徴である。
POCSの治療として有効なのは、卵巣にたくさんの穴を開ける手術(ドリリング)。これにより全てが改善され、排卵が起きるようになる(手術後約1年で元に戻る)。
子宮内膜症の治療と不妊治療は両立しない
子宮内膜症の治療と、妊娠を目指すこと(不妊治療)は正反対のベクトル。
子宮内膜症病巣の完璧な除去は、卵巣・子宮・卵管を全て取ってしまうということ。よって妊娠はできなくなる。
一部の子宮内膜を除去した場合も、病巣を全て取り去ることはできず、必ず再発する。
ちなみにチョコレート嚢胞の病巣を摘出する手術を行うとAMH(残存卵子数)が低下する。
また、
・GnRHa(排卵と月経を止める)
・低用量ピル(排卵を止める)
・ディナゲスト(排卵を止める)
といった薬での治療は女性ホルモンを低下させる治療であり、これまた妊娠を目指すことはできない。
排卵誘発剤や女性ホルモン製剤は不妊治療には欠かせないものだが、これらの使用は子宮内膜症を悪化させる。またホルモン製剤を使用せずとも自然排卵や自然の月経でも子宮内膜症は悪化する。
しかし、子宮内膜症の有無で、体外受精の妊娠率は変わらない。
つまり体外受精は子宮内膜症のマイナスを全て打ち消す効果がある。
不妊と喫煙
- 不妊症の13%は喫煙が原因
- 喫煙は明らかに生殖機能を悪化させ、1〜4年閉経が早くなる
- 喫煙者の精液所見は22%低下し、タバコの本数に比例する
- 喫煙は流産と子宮外妊娠のリスクを増加させる
- 喫煙は胎児(受精卵)奇形率の増加の一因
- 喫煙者は体外受精で妊娠するには、禁煙者の2倍の回数を要する
- 受動喫煙が多い方は喫煙者と同等
タバコが不妊や流産に与える悪影響↓
タバコ
__↓
テメロア短縮
__↓
遺伝子異常
__↓
異常卵
__↓
不妊・化学流産・流産
タバコが精子に与える悪影響↓
タバコ
__↓
ミトコンドリア膜電位低下
__↓
精子運動率低下・DNA損傷増加
__↓
アポトーシス
禁煙は不妊治療の一環である。不妊治療をするのであれば夫婦で必ず禁煙すること。
これまでのRCTの治療実績
凍結融解胚移植周期(回数)あたりの臨床妊娠率(エコーで胎嚢確認/胚移植)。
最後に
不妊症とは命には影響ないが、子宮・卵管・卵巣・精巣の構造や機能に異常があるもので、これは病気である。
つまり健康保険適用になるべきであり、RCTとしてもそうなる様に働きかけを行っている。
不妊治療は他の病気と違い、治療してみないとわからない(治療しながらの診断となる)。例えば受精障害は体外受精をしてみて初めてわかる。
そうはいっても不妊治療の開始は夫婦の意思によって決まる。よって治療をしないという選択もあってしかるべき。ステップアップしない、ステップダウンするという選択もあるということ。RCTではステップダウン=人工授精(AIH)も個別に対応も可能である。
12月31日〜1月3日は休みだが、361日稼働し、卵子と精子のベストのタイミングで対応ができる体制を敷いている。
RCTのキャッチコピーは「妊娠のお手伝い」。
採れた精子と卵子の質を上げることはできないけれども、最良の状態で預かり、最高の状態で受精卵を作って、最適なタイミングで移植することはできる。
妊娠への最適かつ最短の道を示すことができるのがRCTと言える。
※この情報は2017年9月時点のものです。あくまでメモと記憶と配布資料をもとに説明会内容を書き記したものとなります。誤りがあった場合は申し訳ありませんが、必ずしも情報の正確性は担保しておりませんことご了承願います。あくまでご自身の責任において随時ご判断ください。この情報をもとにしたご判断や結果に対しての責任は負いかねますので予めご了承願います。
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