採卵当日の培養士からの説明の中で得たデータを詳しくシェアしたいと思います。
具体的にいうと、
- 胚盤胞凍結施行日別の妊娠率
- 採卵時の成熟度における受精率
- 採卵時の成熟度における良好胚盤胞率
- 採卵時成熟度の違いによる妊娠率
- 採卵時成熟度の違いによる生産率
についてグラフ化して書いています。
このデータはNACのみのデータではなく、おそらく永遠幸グループのものと思われます(各種データの期間がNAC開院前となっている為)。
これまでの症例からはじき出された統計なので、ぜひ参考にしてみてください。
ちなみにM2やGVといった卵子の成熟度合い(グレード)における呼び名ですが、以下の通り認識の上読み進めてください。
- M2→成熟卵
- M1・GV→未成熟卵
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胚盤胞凍結施行日別の妊娠率
受精後何日目に胚盤胞になり凍結できたかで、その後の妊娠率に差がでるようです(2009年11月〜2011年12月のデータ)。
日数 | 妊娠率 |
---|---|
5日目 | 70.4% |
6日目 | 62.7% |
7日目 | 33.3% |
最も良いのは5日目に胚盤胞になり凍結できれば、妊娠率は70.4%ですが、7日目だとその半分以下の33.3%となります。
早く胚盤胞になるというのは、卵に力があるからと言えるのかもしれません。
採卵時の成熟度における受精率
採卵時の成熟度合いによって、その後の受精率に差が出てくるようです。
2010年〜2011年において30〜40歳(平均36.4歳)の方を対象としたデータです。
成熟度合 | 受精率 |
---|---|
成熟(主席) | 86.2% |
成熟(小卵胞) | 84.8% |
当日にM1→M2 | 80.6% |
翌日にM1→M2 | 83.8% |
翌日にGV→M2 | 64.6% |
採卵時に主席卵胞から採れた成熟卵子が一番受精率は高いですが、総じてM1以上であれば、成熟が当日だろうが翌日だろうが80%以上の高い受精率を誇っています。
ただ採卵時にGVの場合はガクッと落ち、60%台となっています。
M1以上を採る為には、やはりできる限り高い精度で採卵のタイミングを見極めることが重要ですね。
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採卵時の成熟度における良好胚盤胞率
採卵時の成熟度によって、その後良好な胚盤胞になれるかどうかの可能性に差が出てくるようです。
成熟度合 | 良好胚盤胞率 |
---|---|
成熟(主席) | 55.0% |
成熟(小卵胞) | 38.5% |
当日にM1→M2 | 30.8% |
翌日にM1→M2 | 19.7% |
翌日にGV→M2 | 8.3% |
採卵時に主席卵胞から採れた成熟卵子であれば、55%の高い確率で良好な胚盤胞まで成長するのに対し、GVはなんと8.3%と非常に低い確率となっています。
良好な胚盤胞に成長する確率が高いのは、
- 主席卵胞の卵子であること
- かつ成熟していること
良好な胚盤胞に成長する確率が低いのは、
- 未熟であること
- その場合主席・小卵胞関係ない
- GVは特に厳しい
ということですね。
こちらもまさに主席卵胞から成熟した卵が採れるかにかかっています。つまり採卵のタイミングの見極めが命運を分けるということ。
採卵時成熟度の違いによる妊娠率
採卵時の成熟度の違いによって、その後の妊娠率に差が出てくるようです。
成熟度合 | 妊娠率 |
---|---|
主席M2 | 55.4% |
小卵胞M2 | 53.1% |
小卵胞M1 | 48.6% |
小卵胞GV | 55.2% |
ここでも主席卵胞から採れた成熟卵子の妊娠率は高い数値ですが、驚くべきは小卵胞から採れたGV卵子が主席卵胞卵子とほぼ変わらない55.2%という高い数値を叩き出している点。
ただ一番数値の低い小卵胞のM1卵子で48.6%なので、トップの主席と7%ほどしか差はありません。
よって、妊娠率に関しては成熟度による差は限りなく小さく、成熟度はそれほど重要ではないのかもしれません。
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採卵時成熟度の違いによる生産率
採卵時の成熟度合いによって、その後の生産率に差が出てくるようです。
成熟度合 | 生産率 |
---|---|
主席M2 | 39.7% |
小卵胞M2 | 40.5% |
小卵胞M1 | 31.2% |
小卵胞GV | 40.3% |
こちらも数値の上と下の幅は9%位とそれほど大きな開きはなさそうです。
それほど差はないですが、小卵胞のM2とGVが高い数値を示しているのは興味深いですね。なぜ小卵胞でもM1は低くてGVが高くなるのか疑問です。
まとめ
今回のデータから読み取れることをまとめると、
- 受精や良好な胚盤胞になるには、成熟が重要
- 妊娠・生産率は採卵時の成熟度による差は小さい
といえそうです。
主席卵胞から採れる成熟卵子が受精から〜生産率まで一貫して良いことはわかりますが、面白いのは未熟卵、特にGVといった受精率が低く、良好な胚盤胞になりづらい卵子が受精し胚盤胞になった場合には、その後の妊娠率や生産率は主席卵胞の成熟卵子と遜色ない結果になるという点です。
あくまで個人的な推測の域をでませんが、超難関を乗り越えてきた未熟な卵子は未熟でも「力」があると言えるかもしれません。
なんか、逆境を乗り越えた奴は強い!みたいな感じがしますね。死の淵を見たサイヤ人がすげーパワーアップするみたいな。
そう考えると小卵胞からも採卵するNACってすげーな、というか可能性あることを常識や慣習に囚われることなくトライする姿勢は非常に頼もしいですね。
夫
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