アメリカは不妊治療の成功率の報告義務がある、とな!日本にもそんな仕組みが欲しい…

Surveillance
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先日こりんごさんのブログで紹介されていましたが、アメリカでは全ての不妊治療クリニックに、

政府機関へ治療における成功率の報告が義務づけられている

そうです。

そのデータは毎年公表され、それを見て患者は治療を受けるクリニックを比較検討することが出来るらしい・・

 

え、すごくない?

 

気になったので詳しく調べつつ、この成功率公表システムを日本で導入した場合についても考えてみました。

 

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政府機関CDCが管理する信頼のおけるデータ群

アメリカの不妊治療の成功率データを公表しているのは、保健福祉省所管の感染症対策総合研究所、通称 CDC(Centers for Disease Control and Prevention)と言われる機関です。

CDCは感染症対策において世界最強の機関とも言われ、その予算は年間約8000億円にのぼり、約1万4000人の職員が世界中の支部で働いています。

そのCDCの使命の一つは、米国の安全保障のために世界中の新たな病原体や疾病に立ち向かうこと。

ウォーキングデッドなど、ハリウッド映画やドラマのセリフ・シーンにも「CDC」ってよく出てきますよね〜。

CDCが管理するこのポータルサイト↑では、病気・健康に関する様々なデータが最新情報として発信されており、その内容はアメリカのみならず世界中の機関からも注目されています。

そしてこの中にAssisted Reproductive Technology(=生殖補助医療)についてのページがあり、

 

「不妊治療には時間と努力が必要です。生殖医療について、また健康について学びましょう」

 

という言葉とともに、不妊治療を考える際の基本情報や注意事項、アメリカ全土の不妊治療クリニックの基礎データ・成功率等が記載されています。

 

どんなことを知れるの?

このページの「ART SUCCESS RATES(生殖医療成功率)」のリンクに飛ぶと、アメリカ全土のクリッカブルマップが表示され、ART(生殖補助医療)を行うクリニックをエリア単位で検索することが可能です。

 

お目当てのクリニックをクリックすると住所や電話番号などの基本データの他、

 

  • シングルの女性の治療は可能か
  • 卵子提供は行っているか
  • 受精卵提供は行っているか
  • 受精卵を保存しておくことは可能か
  • 卵子を保存しておくことは可能か

 

等の情報、またそのクリニックで行った

 

  • 総治療周期数
  • 妊娠に至った人数
  • 出産に至った人数
  • 出生児数

 

等が記載されています。

そしてその右隣のタブには、

 

  • ARTを受ける患者の年齢分布
  • ARTを受ける患者の不妊診断(原因)
  • ARTを受ける患者の移植胚の種類

 

の割合がグラフで表記されています。

そしてさらに右隣のタブで、クリニックの成功率を知ることが可能です。

一言で成功率といっても、

 

  • 周期ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
  • 胚移植ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
  • 妊娠ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
  • 周期ごとでの妊娠率
  • 胚移植ごとでの妊娠率
  • 採卵ごとでの妊娠率
  • 妊娠ごとでの生産率
  • 採卵前にキャンセルとなる確率

 

といった切り口でかつ、年齢別の統計データが表記されています。

さらには、

 

  • 診断(不妊原因)
  • 初期胚移植 or 胚盤胞移植
  • ナショナルデータとの比較

 

といった項目で絞り込み検索も可能で、より詳細に知りたい情報にアクセスできる体制が整っているようです。

詳細で膨大な情報をデータベース化し、それをオープンにしているなんて・・すごい・・・。

これによりクリニックの比較ができるので、ユーザーにとってはとてもありがたいシステムですね。

クリニックごとの実績やナショナルデータへのアクセスは以下動画にまとめています↓

 

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このシステムの仕組みとは

いや、すごいなこのデータベース・・。

CDCが世界最強機関と言われるのも納得っす。

 

 

このようなデータ収集が可能な枠組みはというと、どうやらCDCにはNASS(National ART Surveillance System)という

ARTの効果と安全性を監視するシステム

があるようです。

このシステムにのっとり、アメリカ全土で行われる全てのART周期がこのNASSを通じてCDCに報告されるようですね。

成功率などの情報提供はARTを行うクリニックの義務であり、アメリカ全土の(一部の小規模クリニックを除いた全クリニックの約95%にあたる)440以上のクリニックのデータが収集後、公表されるという流れ。

これらのデータからユーザーはARTの基本情報を学ぶことができます。

また比較検討の材料となるクリニックごとの実績データもあるので、自身にマッチしそうなクリニックを探すことも可能です。

個人差もあるので全てをまかなえるわけではないですが、少なくとも治療開始時の迷いの軽減に寄与していることは間違いないでしょう。

ただしこのデータはあくまで周期ごとの報告結果であり、1人あたりの報告結果ではない点には注意が必要みたい。

(例えば、1クリニックに10周期の結果報告があったとしても、これは10人の患者の結果ではないということ。この10周期は5人の患者が2周期づつ行い、結果的にクリニックとして計10周期を実施したということだったりしますので)

 

2016年のアメリカART出生児数と日本の比較

CDCの発表によると、2016年の1年間においてアメリカの

463クリニック263,577周期が行われ(うち65,840周期は将来に備えた卵子or胚凍結目的)76,930人の子供が産まれました

対して2016年に日本のARTを行う約600クリニックでは447,790周期が行われ、ART出生児数は54,110人でした。

クリニックの平均治療周期数
2016年 USA 日本
①ART実施クリニック数 463 約600
(1.3倍)
②年間全治療周期数 263,577 447,790
(1.7倍)
③1CLの平均治療周期数(②÷①) 569 746
(1.3倍)

 

ART成功率(生産率)
2016年 USA 日本
①年間全治療周期数 263,577 447,790
(1.7倍)
②年間ART出生児数 76,930人
(1.4倍)
54,110人
③成功率(②÷①) 29%
(2.4倍)
12%

 

まとめ

日本の方がクリニック数(1.3倍)、治療周期数(1.7倍)は多いけれど、成功率でみればアメリカが日本の2.4倍と圧倒的に高い結果となっている。

※参考:日本産婦人科学会ARTデータブック

 

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日本で同様の仕組みはあるのか?

歯車

さて、このように全てのクリニックの成績が公表されているアメリカですが、翻って日本ではどうでしょう?

日本の不妊治療クリニックには、このCDCのように「クリニックごとの成功率」を公表するような包括的なシステムは今現在なく、ごく少数のクリニックが自院のホームページ上等で自発的に公表しているにとどまっています。またデータの集め方やグラフの項目にも統一性は無さそう。

日本において不妊治療の蓄積データといえば日本産婦人科学会が報告してるARTデータブックくらいでしょうか。

このARTデータブックでは

 

  • 年別治療周期数
  • 年別出生児数
  • ART 妊娠率・生産率・流産率
  • 年別:妊娠率・生産率・多胎率
  • 新鮮SET率
  • 凍結SET率
  • 移植ステージ別・年齢別の移植あたり妊娠率

 

を知ることはできるのですが、このデータはあくまで「不妊治療の現状まとめ」的なもので、全体感把握には適当ですが、クリニックごとの個別具体的な情報までは網羅されてはいません。

したがって差し迫った悩みを持つ当事者にとっては痒いところに手が届かないもどかしさがあります。決して「患者目線」のデータではないと思うんですよね。

今後、日本もこのCDCのように「患者目線」としても有益な公表システムの構築は急務かと思います。

 

クリニックごとの成功率が公表された場合に想定される懸念

ただ仮にそういった仕組みが実現した場合に懸念されることは、例えば

 

  • 成績至上主義の加速によりクリニック側が患者を選別する
  • 成績至上主義の加速により結果を改ざんや粉飾する

 

といったことが起きないとも言えません。

現状、自費診療である高度不妊治療。

治療というサービスの提供継続のためにも、一定の利潤追求が必要であることは言うまでもありません。

しかし、クリニックごとの成績が明らかになることで、「成功率」ばかりに目がいき、自院の成績のため意図的に

 

  • 卵が取れそうな方
  • 移植が成功しそうな方

 

を優先したりと、結果として選別とも取れる由々しき事態を招かないか。

また成功基準を改ざんしたり、そもそもの母数を減らしたりなど、都合よく操作するクリニックが出てくるかもしれません。

 

いや、もちろんそんなことは起きないと信じたいですが・・そういった可能性はゼロではないという想定を持って、しっかりとした監査体制も同時に整備することが重要ですね。

また日進月歩で技術革新が進む中、データ収集と公表のタイムラグはできる限り短くすることが必要でしょう。精度とともにその鮮度を保つ速報性を意識したしっかりとした運営が望まれます。

 

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仕組みが構築され公明正大に運営された場合でも想定される懸念

また無事この仕組みが構築され正しく運用されたとしても、それはそれで起きうる弊害(という表現が適切ではないですが)も少なからず想定されます。それは、

 

クリニックの二極化/集中 ?

 

成績の公表により、良好な成績を残しているクリニックにはどんどん人が集中するようになるでしょうし、またその逆もしかりかと。

(すでにこの現象は起き始めていると感じていますが)そういった状況を解消する為、人気クリニックのグループ化戦略やサテライト戦略、フランチャイズ戦略などが進み、どの業界にも見られる、数クリニックによるある一定の寡占化が起きる(加速する)かもしれません。

 

患者にとって治療を受けるための比較材料は多いほうがいい?

日本の不妊治療の現状としては、大金を支払っているのにも関わらずその内幕を知ることが出来ないのが実情だと思います。

だからこそこういった仕組みがあると助かる方が多いはずですし、何をおいても「時間」が最重要項目の一つである不妊治療において、様々な比較材料・データがあることは心強い仕組みではありますよね。

こういった仕組みがあることで、当事者は自身の治療針路をより立体的に捉えることが可能になると思いますし、この仕組みによって当事者とクリニックも良い緊張関係を保てると思います。

公的機関による情報収集〜公開による良し悪しはあると思いますが、当事者側からするとメリットが大きいと思いますので、日本でもぜひこういった仕組みを取り入れてほしいですね。

それにしてもさすが合理的な国アメリカ。すごいね。

tokyo tower

【東京】不妊治療クリニックの妊娠率等の実績開示状況を調査!公表成績を年齢別に並べてみた

2019年5月13日
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妻

83年早生まれの35歳。約4年半の妊活・不妊治療を経て第一子を妊娠しました。不妊治療で得た経験や知識、顕微受精からの妊娠〜出産・育児について綴っていきます。
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