アメリカでは全ての不妊治療クリニックに、
政府機関へ治療における成功率の報告が義務づけられている
そうです。
そのデータは毎年公表され、それを見て患者は治療を受けるクリニックを比較検討することが出来るらしい・・
気になったので詳しく調べてみました。
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政府機関CDCが管理する信頼のおけるデータ群
アメリカの不妊治療の成功率データを公表しているのは、保健福祉省所管の感染症対策総合研究所、通称 CDC(Centers for Disease Control and Prevention)です。
CDCが管理するこのポータルサイト↑では、病気・健康に関する様々なデータが最新情報として発信されており、その内容はアメリカのみならず世界中の機関からも注目されています。
そしてこの中にAssisted Reproductive Technology(=生殖補助医療)についてのページがあり、
「不妊治療には時間と努力が必要です。生殖医療について、また健康について学びましょう」
という言葉とともに、不妊治療を考える際の基本情報や注意事項、アメリカ全土の不妊治療クリニックの基礎データ・成功率等が記載されています。
どんなことを知れるの?
このページの「ART SUCCESS RATES(生殖医療成功率)」のリンクに飛ぶと、アメリカ全土のクリッカブルマップが表示され、ART(生殖補助医療)を行うクリニックをエリア単位で検索することが可能です。
お目当てのクリニックをクリックすると住所や電話番号などの基本データの他、
- シングルの女性の治療は可能か
- 卵子提供は行っているか
- 受精卵提供は行っているか
- 受精卵を保存しておくことは可能か
- 卵子を保存しておくことは可能か
等の情報、またそのクリニックで行った
- 総治療周期数
- 妊娠に至った人数
- 出産に至った人数
- 出生児数
等が記載されています。
そしてその右隣のタブには、
- ARTを受ける患者の年齢分布
- ARTを受ける患者の不妊診断(原因)
- ARTを受ける患者の移植胚の種類
の割合がグラフで表記されています。
そしてさらに右隣のタブで、クリニックの成功率を知ることが可能です。
一言で成功率といっても、
- 周期ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
- 胚移植ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
- 妊娠ごとでの満期(臨月)で正常出生体重の子供が生まれる確率
- 周期ごとでの妊娠率
- 胚移植ごとでの妊娠率
- 採卵ごとでの妊娠率
- 妊娠ごとでの生産率
- 採卵前にキャンセルとなる確率
といった切り口でかつ、年齢別の統計データが表記されています。
さらには、
- 診断(不妊原因)
- 初期胚移植 or 胚盤胞移植
- ナショナルデータとの比較
といった項目で絞り込み検索も可能で、より詳細に知りたい情報にアクセスできる体制が整っているようです。
詳細で膨大な情報をデータベース化し、それをオープンにしているなんて・・すごい・・・。
これによりクリニックの比較ができるという、患者にとってとても有益なシステムですね。
クリニックごとの実績やナショナルデータへのアクセスは以下動画にまとめています↓
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このシステムの仕組みとは
いや、すごいなこのデータベース・・。
CDCが世界最強機関と言われるのも納得っす。
このようなデータ収集が可能な枠組みはというと、どうやらCDCにはNASS(National ART Surveillance System)という
「ARTの効果と安全性を監視するシステム」
があるようです。
このシステムにのっとり、アメリカ全土で行われる全てのART周期がこのNASSを通じてCDCに報告されるようですね。
成功率などの情報提供はARTを行うクリニックの義務であり、アメリカ全土の(一部の小規模クリニックを除いた全クリニックの約95%にあたる)440以上のクリニックのデータが収集後、公表されるという流れ。
これらのデータからユーザーはARTの基本情報を学ぶことができます。
また比較検討の材料となるクリニックごとの実績データもあるので、自身にマッチしそうなクリニックを探すことも可能です。
個人差もあるので全てをまかなえるわけではないですが、少なくとも治療開始時の迷いの軽減に大きく寄与していることは間違いないでしょう。
ただしこのデータはあくまで周期ごとの報告結果であり、1人あたりの報告結果ではない点には注意が必要みたい。
(例えば、1クリニックに10周期の結果報告があったとしても、これは10人の患者の結果ではないということ。この10周期は5人の患者が2周期づつ行い、結果的にクリニックとして計10周期を実施したということだったりしますので)
2016年のアメリカART出生児数と日本の比較
CDCの発表によると、2016年の1年間においてアメリカの
463クリニックで263,577周期が行われ(うち65,840周期は将来に備えた卵子or胚凍結目的)、76,930人の子供が産まれました。
対して2016年に日本のARTを行う約600クリニックでは447,790周期が行われ、ART出生児数は54,110人でした。
クリニックの平均治療周期数 | ||
---|---|---|
2016年 | USA | 日本 |
①ART実施クリニック数 | 463 | 約600 (1.3倍) |
②年間全治療周期数 | 263,577 | 447,790 (1.7倍) |
③1CLの平均治療周期数(②÷①) | 569 | 746 (1.3倍) |
ART成功率(生産率) | ||
---|---|---|
2016年 | USA | 日本 |
①年間全治療周期数 | 263,577 | 447,790 (1.7倍) |
②年間ART出生児数 | 76,930人 (1.4倍) |
54,110人 |
③成功率(②÷①) | 29% (2.4倍) |
12% |
日本の方がクリニック数(1.3倍)、治療周期数(1.7倍)は多いけれど、成功率でみればアメリカが日本の2.4倍と圧倒的に高い結果となっている。
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日本で同様の仕組みはあるのか?
さて、このように全てのクリニックの成績が公表されているアメリカですが、日本ではどうでしょう?
日本の不妊治療クリニックには、このCDCのように「クリニックごとの成功率」を公表するような包括的なシステムは今現在なく、ごく少数のクリニックが自院のウェブサイト上で自発的に公表しているにとどまっています。またデータの集め方やグラフの項目にも統一性はありません。加えて第三者の目があるわけではないので、あくまで「正直に報告している」前提のデータとなります。
日本において不妊治療の蓄積データといえば日本産婦人科学会が報告してるARTデータブックくらいでしょうか。
このARTデータブックでは
- 年別治療周期数
- 年別出生児数
- ART 妊娠率・生産率・流産率
- 年別:妊娠率・生産率・多胎率
- 新鮮SET率
- 凍結SET率
- 移植ステージ別・年齢別の移植あたり妊娠率
を知ることはできるのですが、あくまで全体統計に留まっており、全体感把握には適当ですが、クリニックごとの個別具体的な情報までは網羅されてはいません。決して「患者目線」のデータではないんですよね。
患者が治療を受けるための比較材料を
日本の不妊治療の現状としては、大金を支払っているのにも関わらずその内幕を知ることが出来ないのが実情だと思います。
だからこそ日本にもこういったCDCのような仕組みが求められますし、何をおいても「時間」が最重要項目の一つである不妊治療において、様々な比較材料・データがあることは当事者にとって心強いものとなるはずです。当事者が自身の治療針路をより立体的に捉えることを可能にすべく、今後 日本も「患者目線」としても有益な公表システムの構築が急務だと思います。
妻
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