数ヶ月前、仲のよい友人の妹から
「おすすめのクリニックってある?検査だけでもしてみようかなぁと・・」
と相談を受けたので、検査の流れや費用、婦人科と不妊治療クリニックの違いなどを分かる範囲で簡単に説明した。
そして先日、久しぶりに会った際友人は「この前は話を聞いてくれてありがとうね。ただその後(妹は)まだ検査には行っていみたいなんだよね」と少し気がかりそうに吐露してきた。
妹曰く、
「不妊治療はやっぱりちょっと・・」
と話しているらしい。
どうやら、
検査に行く=不妊治療開始
というイメージが彼女に二の足を踏ませているようだ。
いつも思うのだけど・・
「不妊」治療という呼び方。
これって、ベストなのだろうか・・?
自分の経験を振り返ってみても「不妊治療」という呼称はなかなか重たかったように思う。
そんなことについて考えてみたい。
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不妊治療の中にも段階がある
考えてみると、一言で不妊治療と言ってもその中には
- 不妊検査
- タイミング法
- 人工授精
- 生殖補助医療
- 男性不妊治療 etc・・
と、検査から始まり最終的なステップである高度生殖医療まで含まれる。
以前に「妊活」と「不妊治療」に対して持つイメージについて自分なりに考えたことがあるけれど、
不妊治療の中にも段階はあると思う。
いや私、不妊じゃないから!という気持ちで選んだ産婦人科
そう考えると、悩み始めた方やとりあえず検査だけでもという方にとっては、ファーストチョイスとして「不妊治療」という呼称は少々荷が重いのかもしれない。
私が初めて総合病院にかかった時を思い返しても、
「不妊治療?いやいや排卵日特定してもらうだけ」
と、専門クリニックではなく婦人科を選んだことを鮮明に覚えている。不妊治療の専門医に通うことは、自分を不妊と認める工程のように感じてしまい、確かに足が向かなかった。
「不妊治療」はとてつもなく大きなことだと捉えていたのだ。
友人の妹も、そしておそらく多くの人にもこういった感情があるのではないかと思う。
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不妊症の定義は「1年」
また考え過ぎかもしれないが、不妊が一般的に「1年以内に妊娠に至れない状態」と定義されていることも「不妊」という言葉に対し過度に警戒してしまう一つの要因かもしれない。
この1年という定義によって、良くも悪くもその境界線を鮮明にさせてしまうことで、
「1年経っていなければ不妊ではない(だろう)」
と、不妊と思いたくない気持ちと、1年経っていなければ不妊ではないという定義が掛け合わさり、最初の1歩をセーブする心理的なブレーキになっていないとも言い切れない。
日本産婦人科学会は、
「定義を満たさなくても不妊かもしれないと考えて検査や治療に踏み切った方が良いこともある」
と併せて記載してはいるが、なかなか難しい感情があると思う。(そもそもこういった所見にもなかなか辿り着かない!)
ポジティブな言葉が使われていたら?
個人的に思うのは、例えば、ネガティブなニュアンスの「不」を用いるのではなく、もっとポジティブな単語に置き換えたとしたら、悩み始めの方の初動に良い影響を与えたりするのではないだろうか。
もちろんこれが具体的解決策になり得るわけではないし、あくまでイメージという抽象度の高い話ではあるけれど・・
でも、生きていく中で ”モノゴト” の「イメージ」が私たちに与える影響は意外なほど大きいとも思うのだ(ツイッターなど、SNSのアイコン一つを変えただけで相手に抱くイメージがガラッと変わるように)
そんなことを考える中、他国での呼称や、同じように呼び方への違和感から呼称を変えようと提案〜実践されている方々を紹介したい。
Fertility Treatment
英語圏で不妊治療は、Fertility Treatment.
このFertilityが持つ意味は「不妊」ではなく、
Fertility(ファティリティ)
・肥沃(ひよく)
・多産
・繁殖力 etc・・
打ち消しの意味がある「不」とは真逆の単語たちだ。
なお、Fertility の反意語が infertility となり、「不妊」や「不毛」といった意味を持つ。
つまり、同じ治療でもそれぞれの言葉が示すベクトルは、日本とは真逆なのだ。
Trying to Get Pregnant
体外受精で3人のお子さんを授かった芸能人として有名な東尾理子さん。
彼女は不妊治療のスタート時点から、
「不妊の不はネガティブだから、TGPと呼ぶ」
(Trying to Get Pregnant=妊娠の為に頑張っているという意)
と公言し、不妊治療の日々をTGP生活と名付け、クリニックの通院詳細までブログで公表されていた。
望妊治療
岡山にある「岡山二人クリニック」は、不妊治療を望妊治療と呼んでいる。
同クリニックのWebサイトには不妊の二文字は出て来ず、全て望妊治療と表記する徹底っぷりだ。
その他にも、不妊治療は夫婦2人で行うものであるということから、クリニック名にありがちなレディース、ウィメンズなど女性を連想させる名前を避け、あえて「二人クリニック」としていることでも知られている。
懐妊治療
不妊治療を保険適用にするための署名活動をされているメアリーさん。
メアリーさんは「不妊は医療的介入が必要」「ガチで妊娠するための治療」という意味を失わせないようにしつつも、「不妊治療」よりもう少しポジティブにという思いから「懐妊治療」が現状一番ベターであるとおすすめしている。
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ベターな呼称
割と多くの方が、不妊治療という呼称には重さやネガティブさ、変えた方がいいのではないか?という気持ちを少なからず持っているのではないかと思う。
晩婚化・晩産化が進む現代においては不妊治療の存在感はますます高まっていくだろう。だからこそ、そのスタートを少しでも早めるためにはガラッとその名前を変えてもいいのではないだろうか。
しかし実際問題、ここまで不妊治療という呼称が浸透しているとなかなか難しいのも確かだ…
とはいえ、なるべく心の重荷にならないようなポジティブな呼称探しを私も諦めたくはない。
友人の妹のように、悩み始めたカップルがその一歩を踏み出せるような、また願わくば治療中も少しでも心が軽くなるような呼称・・
例えば、アシスト医療/治療とかはどうだろう。
もちろんポジティブな要素なんていらない、という時期もあると思うし、ニュアンスによって一長一短はあると思うのだけれど。
イメージからよいきっかけが生まれるかもしれない
晩婚化が進む昨今、35歳を過ぎてからの妊活開始も一般的といっても過言ではないと思う。
検査や治療のきっかけは早ければ早いほど時間を有効に使えるし、特に30代における半年や1年は本当に大切だ。
だからこそ、最初の一歩を踏み出しやすい空気の醸成が必要であると思うし、呼称が変わることはもちろんのこと、結果はどうあれ変えようとするプロセス(機運の高まり)こそがその醸成をより加速させるのではないだろうか。
今回友人の妹の話を聞き、少しでも前向きな一つのきっかけづくりとして、改めて呼称を変えていくことも必要ではないかと感じた。
妻
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