本記事は、以前に書いた卵子凍結を考える友人のその後のアクションを書いています。
具体的には卵子凍結を実施する都内クリニックのセミナーや説明会に参加していて、卵子凍結に向けて準備を進めているところです。
今回、品川にある京野アートクリニック高輪でセミナーを受けてきたとのことで、そのレポートを共有してくれました。
ということで本記事では、京野アートクリニック高輪での卵子凍結における
- 概要
- 採卵
- 移植
- 期間
- 費用
- 実績
- 凍結リスク
- Q&A 等々
についてまとめています。
本記事情報はセミナーを受けた2018年時点の情報ですのでご留意下さい。具体的アクションを起こす際には必ずクリニックにご自身で確認願います。
スポンサードサーチ
卵子凍結を考えた理由や動機についての確認
セミナーの形式はカウンセラーと個室で1対1で行われます。
まず「なぜ卵子凍結をしたいのか?」と理由を聞かれます。友人は、
- 現在独身だが将来子供が欲しいから
- 友人が不妊治療をしていると知ったから
- 卵子は老化するという情報を聞いたから
- 現在の仕事との兼ね合いも考えて
- 将来の保険として
卵子について基本知識
卵子凍結の具体的な話に入る前に、以下のように卵子についての知識をセットされます。
- 卵子は卵胞の中にあり卵胞は卵巣の中にある
- 月に一度どちらかの卵巣の中の一つの卵胞から一つの卵子が飛び出す=排卵
- 卵胞の中に空の場合もあり排卵されない場合もある=空砲
- 卵子は胎児の時に作られ精子のように新たに作られることはない
- その数は胎児時の700万個位→新生児時200万個位→月経開始時40万個位と減る
- 一回の排卵で1,000個前後卵子が失われている
- 卵巣は実年齢と同様に加齢によって老化現象が誰しも公平に起こる
- 老化とは染色体異常の可能性が高まること
- 排卵される卵子は優秀だから選ばれるのではなく大きくなったから飛び出す
- よって染色体異常や損傷のある卵子が飛び出る可能性もある
数に限りがあり、加齢とともに卵子も老化し、月一回必ずしも良好な卵子が排卵されるとは限らない
との説明がなされるようです。
つまり、
加齢 → 止められない
であれば、時を止められる「卵子凍結」は有効な選択肢の一つであると示される流れのようですね。
スポンサードサーチ
卵胞刺激から採卵の流れ
自然排卵で1個だと非効率なので、卵胞をたくさん育てるため基本アンタゴニスト法(刺激=投薬)で進めていくらしく、生理3日後に来院の上、内診と血液検査を実施して患者にふさわしい注射を医師が処方する流れとのこと。
その日から生理13日後まで毎日自己注射を行い、通院は不要。最後の3日間はアンタゴニストを自己注射し、2日前の夜に排卵させるための注射を打ちます(自己注射)。これは時間厳守。
採卵は局所麻酔をして行うとのことですが、痛みの感じ方は人それぞれなので絶対に痛くないとは言えないようです。採卵にかかる時間は長くても片卵巣5〜6分ほどとのこと。
一回(周期)に取れる採卵数は様々
一回での採卵数は千差万別。一回(1周期)で20個とれる人も入れば0個という方もいる(ちなみに1回で10個取れればかなり良い方らしい)。
卵が多いか少ないかは血液検査でAMH値を測ることで推測することができます。
年齢別のAMHの平均値と比較して卵の在庫数を推測し、この数値が平均値よりも高ければ誘発(投薬)の負荷にも耐えられると考え、低ければ自然に近い軽めの投薬にしようという風に、治療方法を決める一つの目安とするようです。
スポンサードサーチ
凍結基準や融解率
受精が可能になる「成熟卵」のみをガラス化法で凍結。
成熟卵とは、核分裂の途中で第一極体が放出された状態の卵でM2期とも言われるものです。
未熟卵であっても採取後数時間待って成熟を期待するとのこと。
融解率については、受精卵(胚)の融解率が99%以上であるのに対して、卵子の融解率90%前後と差があるようです。
これは卵子が細胞1個(水分の含有率が高い)で構成されているのに比べ、受精卵は100個位で形成されていて構造的に強いということもあるからだそう。よって融解率に差が出るとのこと。
カウンセラーsaid
「例えば卵子をマグロの刺身、受精卵をどら焼きとした場合、二つを冷凍して常温に放置したらどうなると思います?マグロは水が出るけど、どら焼きはそれほど変わらないですよね。そんなイメージです。」
どら焼きを冷凍するシチュエーションが思い浮かびませんが、細胞が詰まっていて水分含有量の違いを端的に表そうとしてのことでしょうか、、何はともあれそういうことらしいです。
具体的な料金と費用目安
体外受精の費用より高度な卵子凍結技術を要する分、基本料金は若干高めとのこと。
投薬量や採卵数によっても変わりますが、1周期採卵〜凍結で30〜70万円くらいと、かなり幅がある印象。
細かい料金体系は示されなかったものの、
- 採卵費用は通常の体外受精より若干高い
- 保管料は9個までは年間5万円
- +〜3個ごとに1万円
基本3個で1セット(本)として凍結保存され、3セット(9個)で5万円の年間保管料が毎年かかり、4本目以降(10個以上)は1本(3個)あたり1万円が毎年かかるとのこと。
仮に10個とれたら4本(3個/本+3個/本+3個/本+1個/本)となり、5万円(3本)+1万円(1本)の計6万円が毎年かかることになります。
ただこれは1回(1周期)に取れたケース。
もし同じ10個でも3周期にわたって取れた場合はその費用は大きく異なります。
- 1月→3個(1本)=5万円
- 2月→3個(1本)=5万円
- 3月→4個(2本)=5万円
この場合は周期ごとに区切られるので、毎週期5万円がかかることになり総額15万円を毎年支払うことに…。
同じ個数でも採卵周期が異なれば費用は周期数に比例して増えるので注意が必要です。
尚、融解は1セット3本単位からとなるので、1個のみ融解といったことはできないことにも同じく注意が必要。
スポンサードサーチ
推奨される卵子の必要個数
年齢分だけ取れることを推奨しており、35歳の友人は35個取ることが望ましいとのこと。
仮に毎回10個取れたとしても最低でも4回は行わなければなりません(5個なら7回、3個なら12回、1個なら……)。
費用の目安が1回30〜70万とのことなので掛け算すると、120〜280万円位でしょうか。前述の通り「1回(周期)10個も取れれば良い方」とのコメントから、このレンジでも上の方になると思われます(多い分だけ手技代や凍結料などもかかるでしょうし)。
さらに4周期で40個取れているとすれば、毎年保管料は24万円かかる計算に…
単純に月額2万円払い続けているようなものですね。
管理コストを下げる為には、いかに一回で多くの卵子を取るかがキモだと言えそうです。
受精と移植方法について
尚、融解後の受精は顕微授精一択です。
移植は新鮮胚移植が基本とのこと。
採卵周期に移植することはほぼないでしょうから、融解を自由に決定できるので凍結胚移植と同じように新鮮移植でも内膜との同調ははかれそうですね。
ただ受精するか、胚盤胞に向かうか(順調に分割するか)という不確定要因もあるので、狙い通り移植を行えるかどうかは凍結胚移植より超えるべきハードルが多そうな気もします。
また、一度凍結しているので再凍結はちょっと難しいという事情もあるんでしょうね。
スポンサードサーチ
これまでの実績について
実績は非公表とのことなので、具体的な数字は差し控えますが、
- 卵子凍結は数百周期実施
- 内1割が融解を実施
- その内の1割強にあたる数人が妊娠
ということみたいです。
これを聞く限り融解してから妊娠に至る過程に多くのハードルがありそうですね。
Q&A
加齢によって染色体異常の確率はあがりますか?
ダウン症の確率は35歳だと378分1人、40歳で106分の1と上がる。妊娠のしやすさもこの染色体異常の割合と比例する。
尚、流産は染色体異常が原因で起こることがほとんど。体を冷やしたり転んだから流産するといったドラマみたいなことはほぼない。
尚、卵子凍結によって卵子の染色体異常が増えるといったこともない。
多嚢胞性卵巣症候群ですが採卵は可能ですか?
それを見越して計画を立てていくのでそれほど心配する必要はない。
他院への凍結卵子の輸送は可能ですか?
悲しいことですが、出来なくはない。
但し、液体窒素の入ったタンクごと輸送する為、大掛かりな話になる。また手続きも煩雑になるのでオススメはしない。
天災などの有事(停電等)の際の保管体制はどうなっていますか?
液体窒素のタンクに扉をつけて厳重な保管体制を取っている(ここまで厳重な体制を敷いているのは国内でも珍しいとのこと)。仙台発祥のクリニックであり、東日本大震災も乗り越えた経験がある。
また停電によって卵子が融解するということはない。なぜなら卵子は電源を必要としない液体窒素充填のタンクに入っているから。よって停電による心配は不要。
しかし、停電によって被害を受ける可能性があるものもある。それは培養中の卵。インキュベーターは電源が必要。もちろんバックアップ電源があるので72時間は大丈夫。
学会などが高年(43〜45歳以上)の方の卵子凍結は推奨していませんが、この辺についてはどう思われますか?
卵が若くても戻す先の母体が高年だとどうなのか?ということを聞きたいのだと理解した上で言うと、一概にはどうだと断定しては言えない。
もちろん卵巣年齢は実年齢とイコールで老化するのは事実。ただ子宮は筋肉の袋なので、加齢の影響はそれほど受けない。
例えば内膜の状態は薬でいかようにでも整えることができる。極端な話、閉経後の女性にホルモンを投与すれば内膜を厚くすることだって可能。
着床することだけに限って言えば20歳の受精卵を使って60歳の内膜を整えた方に移植すれば妊娠する可能性はある。
ただ理論上の話ではなく現実的な話をすれば、50代で小学生を育てると考えた時、20〜30代に比べれば体力的に大変になることは容易に想像できる。そういう話。
また高年出産は産科のお医者さんは管理が大変なので嫌がる。血圧と血糖値が高くなりやすく、お産の時も子宮の戻りが悪いため、出血が多くなりがちで色々とリスクが高くなる。
つまり、妊娠よりも出産リスクが高いといえる。そういうことだと思う。
スポンサードサーチ
まとめ
卵子凍結を前のめりに検討している(我々夫婦共通の)友人からのレポートを聞いていて思ったのは、かなり費用がかかるんだなぁと。
卵子の老化リスクを回避するという意味では有効だと思う一方、
- いくつ成熟卵が採れるか=凍結できるか?
- 凍結胚より低い融解率はどう影響するか
- 受精はできるか(精子側の問題もある)
- 順調に分割するか(胚盤胞へ向かうか)
- 着床に至るか?
- 妊娠は継続するか(染色体異常のリスク)?
と不妊治療をしたからこそわかるというか、凍結した先にこれだけ多くのハードルがあることを考えれば、妊娠出産という「奇跡」を成す多くのピース(ハードル)を卵子凍結が解決することって実はそれほど多くはないのかもしれない、などと思ったり。
もちろん精神的な安定や安心感に繋がることは良いけれど、その安心感が逆に婚期の射程距離をいたずらに延ばすことにならないか少しだけ、ほんの少しだけ危惧してもいる(聡明な女性なのでそんなことは百も承知であり、杞憂ではあると思うけれど)。
夫
最新記事 by 夫 (全て見る)
- 「体外受精にのぞむ女性のこころの動きに関する追跡研究」にご協力をお願いします。 - 2019年10月8日
- 卵巣年齢チェックキット「エフチェック」を購入。採血してみた - 2019年8月21日
- 【寄稿記事】妊娠ファーストでパートナー選びを焦りたくない私のオーク銀座での卵子凍結レポ。仕事に趣味に全力で打ち込みたい! - 2019年7月3日
コメントを残す