結婚から約6年。妊活から始まり不妊治療を経て11月中旬、顕微授精によって第一子を出産しました。

不妊治療を経験し感じたことを綴ってみたいと思います。

 

医療の力を借りるということは、否が応でも命と向き合わざるを得ない。

当初、体外受精はもちろん卵子に針で精子を直接注入する顕微授精はとても怖いと思っていました。

 

「知らないから」
「身近で聞いたことがないから」
「ちょっと高額すぎて」

 

恐怖や偏見がありました。そこまでしては…と、そう短くない期間思っていました。

だけどいざ経験してみるとこの医療から学ぶことが多くありました。

 

採卵、採精、受精、培養、胚盤胞、移植・・

 

普通なら絶対に見ることなどない自分の卵子と夫の精子。そして受精卵。

こんなにも命と、自分自身と、また夫と向き合ったことは人生で初めての経験でした。

結果的に不妊治療に対し「もっと早く挑戦しても良かったのかもしれない」という気持ちも持っています。

 

無知ゆえの偏見にも近い先入観から先延ばしにしていたことを後悔しています

 

本邦での体外受精で生まれる子供は年間5万人超。18人に1人という現実

現在、夫婦の5.5組に1組は不妊に悩んでいると言われています。

また、体外受精・顕微授精で生まれる子供は18人に1人という割合にまで達し、決して珍しいことではなくなってきました。

 

100万人を切り年々減り続ける年間出生児数とは対照的に、体外受精によって生まれる子供は右肩上がりで増え続け、今や年間5万人を超えています。

このように生殖について医療の力を借りる不妊治療は、一昔前に比べれば身近になってきていると言えるかと思います。

この治療は子を授かることに悩むカップルにとって、その希望を叶える有効な選択肢の一つですが、とは言え手放しで安易に勧められるものでもないと個人的には思っています。

 

不妊治療当事者を取り巻く課題

その理由として、現在の不妊治療には、

 

①高額な医療費
②周囲(世間)の正しい理解の不足
③仕事との両立の難しさ
④当事者にしか分かり得ない孤独

⑤自身に適切な情報の取捨選択が難しい
⑥世界の主流な治療法が本邦では公式に認められていない

 

といった現状があるからです。

 

①高額な医療費

不妊治療はそのほとんどが保険適用外であり、人工授精は1〜5万円、体外受精になるとぐんとあがって1回あたり30〜80万円前後と高額です。費用に幅があるのは自費診療ゆえに価格設定が病院により様々だからです。

もちろん費用をかければ結果が約束されるものではなく、結果を得られるまで何度もトライし、その都度高額な医療費がかさんでいくことになります。

 

「不妊治療には高額な費用が必要」

さらに、

「高いお金を払い続けても結果が得られない」

 

これは経験してみるとものすごく大きなインパクトです。治療が長引くほど、金銭的、精神的、身体的にどんどん追い詰められていきます。

子供が欲しいという希望とは裏腹に、心はどんどん疲弊していきます。

現在助成金もありますが、夫婦合算所得730万円以下が全国一律の条件となっており、特に共働きの夫婦や、さらに平均所得の高い都市部においてはそもそも対象になりにくく、必要としている方々に十分に活用されているとは言い難い現状があります。

 

②周囲(世間)の正しい理解の不足 / ③仕事との両立の難しさ

NPO法人Fineの調査によると、不妊治療当事者の約95%が「仕事と治療の両立は困難」と回答しています。

不妊治療の診察はホルモンの状態に準じて行われるため、変則的かつ頻繁に通院せざるを得なかったり、投薬によって著しく体調が優れない日があるためです。

こういった事情によって約20%の方が治療に専念するため泣く泣く退職の道を選んでいます。仕事へのやりがいはもちろんですが、高額な治療を続けるためにも働きたいのにそれが難しいのです。

これを解決していくには、社会の「意識」を変えていくことが必要だと思います。

例えば子育てと仕事の両立の困難さという社会課題を軽減〜解決しようという機運の高まりや企業の取り組みの中に、不妊治療も社会課題の一つとして同じように軽減〜解決に向けて意識改革が行われて欲しい。

子育てと仕事の両立に悩む方のように、産むことに全力で取り組み悩む方も同じ線上に存在すると知って欲しいのです。

 

④当事者にしか分かり得ない孤独

不妊という悩みはセンシティブがゆえに、簡単に誰かに相談したり吐露することが難しく、私は治療中 現実世界では夫以外に悩みを打ち明けることができませんでした。

その分、「顔の見えない」ネット上で治療当事者の方々と繋がり、支え合ってきました。

もちろんこの点については個人差があると思いますが、多くの当事者の方は「孤独」を感じているはずです。

スムーズに授かる方々がいる中、治療が必要なこと、また治療を続けてもなかなか授かれないこと。これは経験してみると想像以上の苦しみです。

 

⑤自身に適切な情報の取捨選択が難しい

生命の誕生という未だ解明しきれていないこの神秘の領域において、素人が世の中に溢れる膨大な医学情報の大海原から、自分に適すると思われる正確な情報を的確に取捨選択することは極めて困難です。

特に「クリニック選び」は何を指標にしていいか私にはわかりませんでした。

玉石混交の情報の中、一体何を頼りに進んでいけばいいのかわからない。

不妊治療クリニックはいつも混雑していて診察のほとんどが「秒診」。細かく聞き相談することもままなりません(全てのクリニックに当てはまるか分かりませんが、多くのクリニックはそうではないかと思います)。

治療当事者の方は常に情報を求め、SNSなどで互いに情報収集〜交換を行いながら懸命に最短航路を探しているのが現状です。

 

⑥世界の主流な治療法が本邦では公式に認められていない

世界を見渡すと、子宮に戻す胚(受精卵)の染色体を事前に調べ、正常胚のみを移植するための検査が行われています。いわゆるPGSやPGTといわれるものです。

流産の多くは胚の染色体異常に起因します。この検査によって染色体異常を事前に判別することにより、可能な限り流産を回避することが期待できますし、流産率の低下はすなわち、着床後の妊娠継続〜生産率に寄与することに繋がります。

日本でもじょじょにこの検査の導入機運は高まってはいるものの、いまだ倫理的側面や運用面から ”公式には” 容認されてはいないのが現状です。

現在、妊娠後に行われる出生前診断*が容認されている中、この技術の利用がなぜ認められないのか。技術的な面で難しいのならまだ理解し得るのですが、倫理観によって容認されないのならばいまいち合点がいかないというのが本音です。

(*妊娠後に染色体等を調べる検査。結果を受けて妊娠22週までであれば中絶も可能)

高額な治療費を支払い授かるために懸命に努力している中、流産は身体のダメージだけでなく心を大きく大きく消耗するものです。

 

体外受精における生産率はそれほど高くない

体外受精(顕微授精含む)は、生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technology)と言われている通り、あくまで妊娠の可能性を高め人為的に補助(Assisted)するもの。

よってその妊娠〜生産率は必ずしも高いわけではありません。

2016年ART妊娠率・生産率・流産率

(出典:日本産婦人科学会ARTデータブック)

 

<体外受精における一回あたりの生産率>
30歳→約21%
35歳→約19%
40歳→約9%

※妊娠率=妊娠の確率
※生産率=出産に至る確率
※流産率=流産の確率

 

体外受精とは、突き詰めれば

 

卵子を育て、その卵子と精子を取り出して体外で受精させ、培養〜生育させて子宮に戻す

 

までを人為的に行うものです。つまり当たり前ですがその先の、子宮に着床し妊娠が継続するかは神のみぞ知るということ。全て医療で解決できるわけではないのです。

したがって、結果を得るためには

治療をできる限り継続し、転院や新たな検査や技術等、様々な可能性にトライし続けること

がとても重要になってきます。

 

不妊治療は特別なことではなく、子を望む夫婦の純粋な行いです。

 

せめてもう少し費用が軽減されたら・・

助成金の所得制限が撤廃されたら・・

不妊治療費が保険適用になれば・・・

通院の為、時間休や休みを取りやすい会社の理解や社会の風土があれば・・

 

治療を続けやすくなるのに。

こんなにも強く、子を授かることを望んでいるのに。

不妊治療には、本当にお子さんを強く望む夫婦が治療を始めること・続けることができるよう軽減すべき課題が、下げるべきハードルがたくさんあるんです。

 

不妊治療は特別なことではない、子を望む夫婦の純粋な行いです。

 

今日もたくさんの夫婦が子を授かることを強く希望し、治療に悩み、クリニックの待合は診察を待つ人で溢れかえっています。

 

これは現実に毎日起こっていることです。

 

近年「不妊治療」は、東尾理子さんなど著名人が発信していることもあり、また「妊活」という言葉の浸透によっても、よりイメージしやすくその知名度は上がってきているように感じます。

さらに2018年始めには、松山ケンイチさんと深田恭子さん共演の「隣の家族は青く見える」という不妊治療を題材としたドラマも放送されたことから、その知名度はより高まったように感じます。

知名度の高まりによって、世間から不妊治療に横たわる様々な課題を見つけてもらいやすくなることも期待でき、こういう風にスポットライトが当たることは良いことだと思っています。

ただ願わくば、名を知られる知名度にとどまらず、当事者を取り巻く実情課題に踏み込んだ「正しい理解」という認知が進めばと願っています。

デリケートでセンシティブな医療であるため、全員がオープンにし声をあげることは難しいですし、その必要性に肯定的ではない方も少なからずいらっしゃると思います。

賛否あるとは思いますが、声をあげられるのならどんどん世間の認知を促すべく行動していくことこそが、結果的に医療界を含む社会環境が良い方向に進んでいくことに繋がると私は強く信じています。

 

性教育のアップデートと切れ間ない周知が行われる社会へ

私が学生時代の性教育といえば「避妊」を念頭に置いたものでした。もちろん避妊の知識は今も大切であることに変わりなく、この点に異論はありませんが、

 

  • 妊娠〜出産は奇跡的な出来事
  • 女性には妊娠のリミットがある
  • 不妊の原因は男女半々
  • 卵子の数は増えることはなく減少し続ける  etc・・

 

というような妊娠についての正しい知識もこれからはセットで教えていくべきだと思います(現在じょじょに推進が図られているようです)。

 

また、結婚や妊娠の予定はまだ先の方、現在不妊治療とは無縁の方がもしこの記事を読んでくれているのならば、お伝えしたいことがあります。

男性も女性もパートナーと出会う前・妊活前から出来る検査もたくさんあります。

「知らなかった」が一番悔しいことです。現代においてライフステージの設計は容易ではありません。

正しい知識という「引き出し」を多くの方が持てるように、教育をはじめ社会生活の中で切れ間なく発信され周知される仕組みが構築整備されることを願ってやみません。

そういった教育や仕組みによって正しい理解が広まることで、知らないことから湧くあらぬ偏見や、過剰に抱く心理的なハードルをも下げることに繋がり、いざ子供を欲する中で疑問を抱いた際、不妊治療という選択肢をよりスムーズに想起でき行動に移しやくなるのではないでしょうか。

そしてそのためには、不妊治療の現状を知ってもらうための多くの小さな発信が必要な一歩だと思っています。

 

子を望み悩む多くの方が治療にトライしやすい社会を目指したい

様々な意見があると思います。時に倫理観という難しい議論になることもあるかもしれません。

でも極論 倫理観なんて本人が、夫婦が、カップルが、子を望む全ての方が、歩んでいく過程で丁寧に作っていけばいい。

私はそう思います。

どんな家族の形でも多様性のある価値観が認められ受容し合える社会になるよう、微力ながら今後も発信していきたいと思います。

不妊治療の周知やそこにある多くの課題を少しでも軽減していきたいという気持ちから、あえてこの機会に発信させて頂きました。

 

不妊治療をもっと身近な選択肢に、

本当にお子さんを望む方々が治療を始められるよう、続けられるよう

そんな社会の実現を願ってやみません。

そのために、微力ながら少しでも寄与できるように行動していきたいと思います。

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1983年生まれ。約4年の妊活〜不妊治療を経て顕微授精による移植で2018年に出産しました。経験から不妊治療を取り巻く環境の課題軽減、当事者支援に取り組んでいます。
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