前回の記事【中編】で、卵子凍結のため採卵を終えた友人。
本記事では、
- 採卵後の診察や凍結結果
- かかった総費用
- そして卵子凍結を終えた友人の感想
についてまとめています。
本情報は2018年11月〜2019年2月の間に友人が行なった卵子凍結の体験談です。主観に基づくものですので、あくまで一参考としてください。具体的なアクションを起こされる際には必ずご自身でクリニックにご確認下さい。
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採卵結果。数とその内訳
友人は生理3日目から刺激法で排卵誘発を行ったのだが、誘発中 高熱の風邪が重なったり、排卵誘発剤の副作用なのかたびたび嘔吐したりと体調が優れず
「早く採卵を終わらせたい・・」
と漏らしながら、ようやく採卵日を迎えた。
「採卵すればひとまず楽になれる!」
と思って最後自分を奮い立たせ臨んだが、採卵終了後も静脈麻酔の影響か嘔吐は続き、なんとか採卵翌日には快方に向かったそうだが採卵終了後はすぐに回復とはならなかったそう。
当日、彼女とラインで連絡を取り合っていたのだが、経過を聞いている私も「大丈夫かいな・・」と不安を覚えるほどに彼女の体調は最悪だった。
そんな満身創痍で終えた採卵の結果は・・
成熟卵 12
未成熟卵 6
と、計18個が取れたそうだ。
原則凍結に進めるのは成熟卵(極体放出ありの卵)のみなので、採卵後、未成熟卵の成熟を期待する体外成熟培養(IVM)を追加料金を支払って行うかどうか打診があったそう。
友人は意識朦朧としていたため、あまり頭が回らなかったそうだが
「もう1回採卵なんて無理・・・」
ということは唯一分かっていたので、この体外成熟培養(IVM)を申し込んだとのこと。
体外成熟培養(IVM)とは
IVMとは、ホルモン剤などを添加した専用の培養液を用いて未成熟卵を1〜2日培養し、体外で成熟させようとする処置。ただし、IVMを行ったからといって必ずしも成熟するとは限らない。
この処置を施すケースは、
- 排卵誘発剤を使用しても体内で成熟しない時
- OHSS回避のため未成熟な段階で採取せざるを得ない時
- 卵胞の大きさに卵子の成熟が伴っていない時
- 成熟卵と同時に未成熟卵が多数採取された時
尚、同院のIVM費用は、個数に関係なく10万円(税別)がかかる。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の経過観察
採卵から2日後、卵巣の状態を診るため再び通院。
診察の結果、友人の卵巣は7cmほどに腫れており、軽度の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と診断された。
そのため次の生理が来るまではなるべく安静にするよう勧められると同時に、重症化を避けるため、以後2週間ほど継続して毎日同じ時間に
- 体重計測(急な増減がないか)
- 腹囲計測(急な増減がないか)
- 尿量計測(1日の尿量が500ml以上あるか)
を行い、何か異変があれば直ぐにクリニックに電話するようにとの指示を受けたとのこと。
その他にも、自宅安静中は、
- 性交渉や激しい運動は禁止
- 入浴はせずシャワーのみ
との指示。
安静をとる中で懸念された大きな異変はなかったものの、
- お腹の張りを感じていた
- なぜか空腹感がなかった
といったいつもとは違う小さな変化はあったそう。安静中はOHSSの重症化を恐れ、とにかく水分をとって安静にしていたと話していた。
余談だが、彼女は趣味で(といってもかなり本格的だが)トライアスロンに打ち込んでいる。
今回の卵子凍結にあたり、彼女の一番の懸念は「運動出来ない日が何日くらいあるか?」だった。
仕事に趣味に全力で打ち込む彼女らしい一面なのだが、採卵後はさすがに彼女自身も安静にしなければと自然と感じたらしい。
(卵子凍結を始める前は、本当に何度も「運動出来ないと困るなぁ」と言っていたので、採卵後すぐに動き出さないか少々心配していたが、ちゃんと自宅で安静している様子を聞いてホッとひと安心…)
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医師からの採卵結果の詳細についての説明
採卵日翌日、IVMを踏まえた最終的な凍結数は17個だったとまずは電話で伝えられ、詳しい説明は採卵日から12日目のD24に行われた。
説明にあたっては、本人の卵子が映された以下プリントを渡され、それをもとに培養士から説明を受けた。
凍結した17個の内訳は以下の通り。
成熟卵12個全て凍結。
未成熟卵6個のうち2個は自然に成熟卵に成長したため残り4個をIVMし、内3つが成熟卵に成長。この元未成熟卵6個から成熟卵に成長した5個全てを凍結し、最終的な凍結数は17個となった。
もともと友人が目指していた凍結目標数
当初友人は、いろいろと事前に調べた予備知識から自身に必要な凍結卵子数は20個とし、目標としていた。
電話で問い合わせをしたり、説明会やカウンセリングを受けて、その目標の実現にはおそらく2周期の採卵が必要だろうと予想していたそうだが、
- 目標に近い17個が凍結できたこと
- 排卵誘発〜採卵はもうしたくない
と、目標数には届かなかったけれど、上記理由から今回で終了とすることに決めたそうだ。
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凍結結果への医師の説明と見解
培養士から卵子についての説明を受けた後、同様に凍結結果を見ながら医師から総括的な説明があった。医師曰く、
「凍結卵子を使い将来生産に繋げるには、年齢と同じ数(つまり35個)の凍結を勧める」
と、もう1周期の採卵を勧められたそうだが、彼女は自分なりの結論に達していたため丁重に断った。
彼女曰く、この「再採卵の勧め」にビジネス色はなく、あくまで将来の妊娠の確率をあげるための医師の率直な考えに基づく、真摯な提案だと感じたとのこと。
その他、
- 今回行なった処置の説明
- OHSSのリスクや対処
- 今後の生活について
- 将来の生産率について
等の説明があり、彼女の質問も受け付けながら30分ほどかけて診察は終了。
卵子凍結費用の総額はいくら?
- 凍結卵子数→17個
- クライオトップ数※→6本
- 凍結プラン→5年
※クライオトップとは卵子を入れる容器。最大3個まで入る。融解は1本単位。つまり〜3個ごとに融解することになる。
彼女は1〜3年など短期間の凍結プランではなく、総額は大きいけれど途中で融解すれば返金もある5年プランを選んだ。もちろんどちらも凍結延長の際は別途費用はかかる。
今回の費用まとめ↓
項目 | 料金 |
---|---|
申込診察 | 10,270円 |
採卵周期計 | 313,370円 |
凍結保存 | 417,910円 |
自費再診 | 842円 |
超音波検査 | 1,620円 |
合計 | 744,010円 |
※自費再診と超音波検査は最終診察の際の費用だと思われる。
前納金35万円と相殺し、残金を支払って終了。なおクレジットカード決済が可能。
やはり高額であり、特に凍結保管料はなかなかのもの。友人は費用面からみても、もう1周期の採卵はちょっと現実的ではないと感じたそうだ。
通院日まとめ
オーク銀座へ通院した回数をまとめると、
- 説明会
- 月経前
- D3
- D8
- D10
- D12 ← 採卵
- D14
- D24
説明会まで含めると計8回の通院となった。
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卵子凍結を終えての感想とまとめ
こうして無事、卵子凍結を終えた彼女。
治療を終えて改めて卵子凍結を決断した経緯や、治療を終えての率直な感想を聞いてみた。
卵子凍結を決意したきっかけと理由
一番は将来への保険。
将来は結婚し子供が欲しいけれど、今現在具体的なパートナーがいるわけではない。また、結婚や出産を目的としたパートナー探しに躍起になるつもりもない。
とは言え、年齢による妊孕性の低下については以前から気になっていたので、現状と将来のギャップを埋める選択肢として現時点で有効と思われる卵子凍結を半年ほど前からちょこちょこ調べ始めた。
当初凍結には懐疑的な部分もあったが、調べてみると自分にとってはあまりデメリットになり得る要素が見当たらなかった。
もちろん高額な費用やOHSSの危険性は気になるけど、シリアスなリスクはないと感じた。
もし凍結して結果として子供が出来なくても、やれることをやったら私は後悔が少ないと思う。あの時卵子凍結しておけば・・と思うほうが悔しいと思ったから、だったらやったほうがいいんじゃない?と思い行動に移した。
卵子凍結周期を終えての感想は?
安心した。やってよかった。これで少し余裕ができた気はしている。
感覚的には1年くらいの余裕が出来たのかな?と。
性格的にもやらないことを悶々と考えているより行動する方が合っていた。
ただ、排卵誘発や採卵後の体調は本当に辛くて若干トラウマなので、もしまた予備のための卵子凍結を検討するとしても、2〜3年後かな。
卵子凍結を考えている方に伝えたいこと
個人的にはオススメしたい。
もちろん各々現状を踏まえ、メリットとデメリットをきちんと事前に検討した上で。
ただ採卵〜凍結は超高額なうえ心身共に不安定になるし、たとえ1回の採卵数が少なくても「5回やって卵子数を蓄えたほうがいい」と簡単には私は言えない。
どちらにせよ、結婚や将来の子供のことについて迷いや悩みがあるなら検査だけでもしておくことは強くオススメしたい。AMHとか、こんな大事な数値があることももっと広く知られるべきだと思うし。
検査で自分の身体を知ることによって、起こすべきアクションを具体性をもって描くことができる。
ちなみに仕事仲間の女性(39)が、私の卵子凍結の話を聞いて早速申し込み、先日凍結まで終わらせた。
彼女としても以前から卵子凍結は気になって迷っていたそうだけど、実際に経験した人が身近にいれば、背中を押す1歩になるのかなと感じた。
積極的で前向きな彼女へ私からの質問
彼女はこの卵子凍結に関し、私以外の友人や仕事仲間、またトライアスロン仲間にも包み隠さず話している。
彼女は昔からどんなことにも非常にオープンな性格なのだ(例えば「結婚は?」なんていうプライベートでお節介な時代錯誤な質問に対しても、きちんと自分の率直な気持ちや意見を返すことができる)。
私自身は不妊治療に悩んでいることを当時 夫以外誰にも話せなかったので、そういった彼女のオープンな性格にいつも感心していた。
どうしてそんなにオープンに出来るの?
と聞いてみると、
「う〜ん。悩みが自分的にはシリアスじゃないからかな。それに人は自分が思うほど人のことを気にしてないと思うんだよね。(私は)隠すほうが自意識過剰だと思ってる。ひとつの話題として、隠さず話すほうがクリアで楽に感じるタイプだからかな。それに、絶対大丈夫だと思ってる部分もある」
という極めて前向きな答えが返ってきた。自己肯定感がしっかり備わっている彼女らしい意見だなと感じる。
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まとめ
2018年夏から卵子凍結を考え始め、トライアスロンのオフシーズンにと決めて卵子凍結に臨んだ彼女。
やると決めたら一直線に邁進する姿は、彼女の全てに共通する強く頼もしい姿だなと感じた。また、事前に予備知識としてきちんと勉強していくあたりもさすがだなと思った。
社会適応としての卵子凍結。
できる限り若いうちに卵子を採取〜凍結し、将来に備えるという新しい治療、新しい考え方。
もちろん、いくつ凍結しても不妊治療同様「絶対」はない。
また受精や妊娠に至らない、継続しない可能性は女性側だけにあるわけではなく、その原因は男女半々とされている。よって将来巡り合ったパートナーにその原因があることも多いにありうる。
もちろん、凍結卵子を使う前に自然妊娠することだって考えられる。
手段は多様化している。
私自身は社会適応としての卵子凍結に対し賛否を言える立場にないと思っている。
それは不妊治療の経験からも、特定の悩みや必要とされる手段について当事者以外があーだこうだ言うのはあまり意味がないと体感したからだ。
本人がデメリット等を納得し、認められている手段を希望していることに周りがとやかく言えるものではない。
社会適応としての卵子凍結には色々な意見があると思うが、今回凍結を行ない満足している彼女を見ていて感じたのは、確かに将来も含んだ「結果」は大切であるけれど、一方で結果までの過程も大切な人生の一部でありその過程を自分が納得し満足して進んでいくことも同じくらい大事だということ。
そしてその決断の答え合わせは他人がすることではなく、自分自身がするものだよな、と改めて感じた。
彼女の決断が良い未来を引き寄せると心から願っている。
将来、また彼女に気持ちを聞いてみたいと思う。
妻
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