リプロダクションクリニック東京(RCT)に続き、現在通院しているナチュラルアートクリニック日本橋(NAC)の説明会にも2度参加したので、結構時間が経ってしまいましたが、自身の勉強の意味も込め以下共有したいと思います。
あくまで説明会内容をある程度まとめながら、一部補完しながらも淡々と書いているものとなります。
RCTとNACの説明会の膨大なメモを整理し、順序立てて組み立てるのはめちゃめちゃ時間と頭を使い大変でしたけど、不妊治療というものについて相当知識が深まりましたね。
NAC日本橋や自然周期に興味がある方は是非ご覧ください。
相当ボリュームがありますので、冒頭に要点をまとめていますが、もっと詳しいことが知りたい場合には読み進めてみてください。
また、以下「目次」の中で気になる項目があればタップすると詳細にジャンプできますよ。ご活用ください。
では行きましょう。
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NAC日本橋の説明会内容要点まとめ(ポイント要約)
今回説明会に出てみて、ナチュラルアートクリニック日本橋は不妊治療は病気ではないと捉えており、自然周期に超特化したクリニックだなと認識しました。
NACは、最後まで迷ったRCTのような幅広いオプションは有してはいません。自然周期一本の超特化型の不妊治療クリニックです。
自然周期を主軸に据えた治療という、投薬による人為的なコントロールをある意味放棄し、その人その人のホルモン値や卵子・精子の状態などを徹底的に分析して、最高の針と熟練の技術で妊娠へと導くクリニックだと感じました。
数より、良い卵を1個でも採取すること
に重点を置いていると感じました。「良い卵子を一個でも採れればこっちのもの」と豪語されていましたし。
NACの治療方針は極めてシンプルです。
- 不妊は病気ではない。
- 卵子は老化しない。質の良い卵子の数が減っているだけ。
- 投薬によって人為的にコントロールする刺激周期ではなく、ホルモン値をしっかりと解析し、自然周期で採卵を行う。
- hCG、hMGは使用しない
- 全く投薬をしないわけではなく、クロミッドやブセレキュアなどの使用は最小限ながら処方。
- 人工授精はなく、体外・顕微授精のみ。
- 特許取得の特殊な針(超微細な針)を使用して主席卵胞のみならず、残骸卵胞及び小卵胞からも採卵。
- 移植は胚盤胞のみ。基本は凍結胚移植だが新鮮胚移植がないわけではない。
- 成功報酬制度を導入(2回まで)
- 年中無休日で開院しておりベストなタイミングを逃さぬ体制を敷いている。
↓要点↓
【卵子や妊娠について】
- 卵子は増えない減る一方
- 卵子は老化しない良い卵子が減るだけ
- 生まれた時に原始卵胞は200万個
- 1周期400分の1の割合で卵子は選ばれている
- 排卵予測は卵子のサイズではなくホルモン値
- 腹腔につながるのは子宮頚管のみ
- 子宮頚管を通れるのは精子のみ
- 妊娠率より生産率を重視
【体外受精について】
- 体外受精は真の勝者を選んでいるのだろうか
- 体外受精とは受精のハードルを下げる行為
- ふりかけ式と顕微授精
- 精液検査ではなく精子検査
- 自然周期採卵のみ
- hCG、hMGは使用しない
- hCGによる弊害を理解すべき
- クロミッドやブセレキュア等の使用あり
- 薬は投与する量とタイミングが最も重要
- ホルモン値の徹底分析が重要
- ピル調整はAMHを下げる(誰でも出来ない)
- 麻酔は不使用(多嚢胞性卵巣症候群は別)
- 採卵は残骸卵胞、小卵胞にも針を刺し採取
- 採精は院内のみ。持ち込み不可
- 基本は凍結胚移植(新鮮胚移植もあり)
- 胚盤胞移植のみ
- 1周期、移植卵数は1個のみ
- 成功報酬制度を導入(2回まで)
【その他】
- サプリは全て禁止
- 不妊は病気ではない
以下、説明会内容のほぼ全て
NACの説明会では、4枚ほど簡単にまとめられた資料が配られ(もっと詳しく記載された小冊子も500円で販売)約4時間の説明会を寺元理事長がスティーブジョブズのように動き回りながら身振り手振りを交え、内容を説明してくれます。
冒頭、「声小せ〜な〜」と思いますが、安心してください。徐々に熱を帯びて十分な音量レベルに達しますので。
卵子や精子、ホルモン、体外受精について
卵子の誕生と排卵
卵子は数日で出来るものではない。生まれた時に卵子の元となる原始卵胞(約200万個)として卵巣で眠っている。そしてある時目覚め排卵までの旅を始める。卵子数は加齢とともに減っていく。
原始卵胞から排卵に至るまでは5ヶ月〜10ヶ月くらいかかると言われている。
卵胞は一つの卵巣に10個ほどあり、卵胞の中には卵子のもとが20個ほど入っている。
よって両方の卵巣で約400個(20×10×2)の卵子のもとがあり、そこから生存競争を繰り広げてたった一個の卵子だけが飛び出してくる。つまりこの卵子は多くの犠牲の上に成り立っているのである(競争率400倍)。
裏を返せば、これは1周期で約400個づつ減っていくことを意味している。
この仕組みは解明されていないが、卵胞の多くは不完全であり、この選択で生き残ることで完全な卵胞を選ぶと考えている。この考えは超少数派。
一般的には全ての卵胞は良いもので、その中でより良いものが選ばれているとされている。
排卵後の卵胞(黄体ホルモン)の働き
卵胞は2cm近くになると破裂し、卵子が飛び出すとされている。ただ空卵胞もあり全て破裂によって卵子が飛び出すとは限らない。
無事、卵子が飛び出したら卵管采にキャッチされて卵管に取り込まれる。
そして、破裂した卵胞は黄体と呼ばれ、以降は子宮内膜を厚くする黄体ホルモンを作り着床を援護する。これは約2週間続く=高温期。
着床しなければ、黄体ホルモンは出なくなり月経を迎える。
子宮は医学的に「体の中」にある
変に思うかもしれないが、胃や腸というのは医学的には「体の外」という ”外界” という位置付け。
医学的には胃や腸の裏側にある腹腔内こそが「体の中」。子宮はこの腹腔内にある。
腹腔内に菌が入ると治療ができない(しづらい)。非常に大事な部分。
そして体の中(腹腔)と体の外をつなぐものは子宮頚管のみ。よって頚管粘液は非常に特殊な粘液であり、通常はロウのように固く締まっている。
腹腔につながる子宮頸管を通れるのは精子のみ
そして、この子宮頸管を通ることが出来るのは精子だけ。
さらにここを通り抜けることが出来るのは正常な直進精子のみとなる。つまりここで直進性の高い精子を選抜していると言える。
ここを通過出来る精子の割合は全体の4%と言われている。
受精とは激しい生存競争
運良く卵管膨大部までたどり着いたからといって、どの精子でも卵子と受精できるかというとそうではない。卵子の周りには透明帯と呼ばれる頑丈な細胞が覆っている。
そのため、精子の頭にはそれを壊す装置がしっかりと備わっていなければダメ。
受精出来る可能性は10万匹に1匹が入れると言われていて、とてつもない生存競争率。
この受精までの生存競争状態(メカニズム)を人間がつくりだすことは不可能であり神業。
しかし、30年以上前からこの神業を体外受精という方法によってなし遂げようとしているのが不妊治療である。
妊娠率と生産率について
妊娠率より生産率が重要。
体外受精1周期あたりの生産率は20代で20%ほど。39歳になると10%くらいと半分になる。この統計は10〜20年前からほとんど変化していない。
技術の革新や医療器具の進化があるにもかかわらず変化しないのはなぜだろう?
その理由としては、この受精〜妊娠〜出産という自然のメカニズムが人智を超えた神業の領域であることに他ならない。
つまりどんなに技術が進歩しても飛躍的に向上することはないと考えられる。ここが体外受精の限界ではないか。
よって私たちは、このつたない技術で解決できることはそう大してないと考えている。
卵子の質=老化が妊娠率の上昇を妨げているのだろうか?
ではいまだに向上しないこのデータの原因をどう患者に説明しているか?
(自分も含め)多くの医者が
「良い卵子がないから妊娠しない」
というふうに説明する。
確かにこの説明は間違ってはいない。その要因もあるだろう。
ただ、多くの医者はちょっと言い過ぎているきらいがあると私は思っている。これさえ言っておけば問題解決だと思いすぎているのではないかと。
だが、ちょっと考えればこれはおかしいと思う。
良い卵子がない=近年出てきた言葉に言い換えれば ”卵子の老化” という理由で妊娠に至らないと説明するのが一般的だが、30代半ばから卵子の老化が進むのであれば、30代半ばより以前の若い時でも体外受精の妊娠率(20%)が低いのはなぜだろうか。
体外受精は不自然な行為ではないだろうか?
体外受精(ふりかけ)での未受精は医療側の敗北なので、医者はとにかく受精させたい。そのためには卵子の周りの細胞(透明帯)を取り除くヒューナーズカットを行う。
しかし、本来は卵子からすればその細胞(透明帯)こそが、良い精子を選抜する”ふるい”の役目を果たしていて、これを突破できた優秀な精子のみを欲しいはず。
そして、受精環境としても本来は卵子と精子は卵管膨大部という比較的広いところで出会うのだが、体外受精では、とても狭いところに閉じ込め両者の接触を高めることで受精を促している。
つまりこのことからもわかるように、ようは体外受精とは受精のハードル下げる行為である。
しかし、同時にこれは
「真の勝者を選んでいるのだろうか?」
という疑問も生じさせる。
例えるならば、マラソンは42.195kmという長い距離によって本当に体力と実力のある1人の勝者を決めるもの。だがこれを100m位に縮めたら短距離走の速いやつや、運良く勝っちゃうやつも出てくる。このように真の実力や体力を兼ね備えているかに関係なく、多くが勝者になってしまう可能性を高めてしまうことと言える。
精子の選別について
精子の状態がよくない人は顕微授精となることが多い。顕微授精は精子を捕まえて針で卵子に注入するもの。
精子選択は培養士がこれまでの経験則からなんとなく動きが良いと思われる精子を選んでいるにすぎない。このように目視でかつ培養士の腕に頼った属人性の高い選別をせざるを得ないのが一般的なクリニックの内情である。
しかしNACでは、超高倍率装置を用いて、より正確に精子の状態を確認し選別を行う。高倍率下での捕獲、選別は熟練の技術が求められる至難の技。
このようにNACの選抜レベルは相当に高い。
自然の状態(神業)と違い、体外受精という競争のハードルを下げた環境で、真の勝者を選べないのであれば、せめて徹底した選抜基準と技術を高めて少しでも神業に迫ることが大事であると考えている。
投薬による治療が世界の主流
ステップアップと排卵誘発剤の使用という世界常識
世界中で、体外受精に進むにはある程度ステップ(手順)を踏むようガイドラインに定められている。
そろそろ子供作ろうかと思っていきなり「体外受精やろう」とはならない。
タイミング→人工授精→体外・顕微
このステップアップというものは全世界での共通認識である。
そして基本的に「排卵誘発剤を使いましょう」と全世界共通の手順がある。そしてこのことは医大の教育レベルでは省けないことになっている。
誘発方法は飲み薬や注射だったりと様々。これらの薬は世界中で手に入りそれほど高くない。そしてほとんどの国において安全とされていて、妊娠率を上げると考えられている。
投薬により卵子の状態はどうなっているのだろうか?
排卵誘発剤を使用し体外受精にのぞむ卵子の状態はどうだろう。
- それまでの投薬の過程において最初の状態を保っているか?
- ボロボロになっていないか?
そこを考えなければいけない。
クロミッドで卵胞をたくさん発育させる
卵巣の中の卵胞を成長させるのは卵胞刺激ホルモン(FSH)。通常、卵胞とは1周期たった一個しか大きくならない。
そして、卵胞が大きくなると女性ホルモンが増加する。この女性ホルモンは脳に作用するもので、脳は女性ホルモンの増加によって「卵胞が成熟した」と認識する。
すると脳は卵胞を成長させる卵胞刺激ホルモン(FSH)を止める。
ここまでが自然な卵胞発育の流れ。
しかし、不妊治療ではたくさんの卵を採取することが大事ということで、1個だけでなく同時に複数の卵胞を投薬によって増やそうとする。
どうやるかというと、卵胞を育てるFSHを出し続ければいい。そのためにはFSH放出にストップをかける女性ホルモンを脳に到達させなければ良い(=阻害しよう)と考える。
女性ホルモンを脳へ到達させなくするには、クロミッドという薬を使えばいい。この薬は脳の女性ホルモンを感じる器官(レセプター)を阻害し、女性ホルモンを感じさせないようにするもの。
これで、脳はいつまでたっても女性ホルモンが増えていないと思いこみ、FSHを出し続ける。結果、沢山の卵胞が育つことになる。
ただしこのクロミッドは長いあいだ体内にとどまり急には消えないという性質を持つ。
ちなみに、加藤レディースクリニック(KLC)副院長時代にクロミッドを使った ”加藤式クロミフェン周期” というものを確立した。
KLCは今もこの理論で治療をしている。この理論によって自然周期の成功率は10%を超える様になった。
hCGで排卵を起こす
卵胞は大きくなれば勝手に排卵するものではない。破裂しなければ卵子は出ない=排卵とはならない。
そして、この排卵=破裂を起こすホルモンが、黄体化ホルモン(LH)。
通常、排卵は女性ホルモンの値が250〜350のゾーンにはまった時に起こるもの。400を超えるともう排卵は起きない。
ちなみに女性ホルモンが高い時というのは妊娠している時。妊娠中は女性ホルモンが500〜1,000位になる。
つまり、クロミッドにより女性ホルモンが増え続けることで、排卵可能なゾーン(250〜350)を越えてしまうと、体はもはや妊娠していると勘違いして排卵を起こさない(LHを出さない)のである。
そうなると卵胞はひたすら大きくなるだけ。3〜4cmとかお化けのような大きさになる。
育てても排卵しなければ困る。そこで人為的にLHを使って排卵を起こそうと考える。しかし人工のLHは非常に高く日本では手に入らない。
そこで代わりに、妊婦の尿から作られ非常に安価な「hCG」を使う。
hCGとLHの違い
hCGとLHは似て非なるもの。
決定的に違う点は、LHは妊娠前の排卵の時にしかでないホルモンだが、hCGは妊娠した時に出るホルモンで妊娠前の体には存在しない。
つまりこの二つが同時に体内に存在することは普通(自然の現象)ではない。そして厄介なことに、この2つのホルモンを感じるレセプター(器官)は一緒なのである。
そうなるとレセプターの共有という現象が起き、作用の強い方が優先される。
特徴 | ||
ホルモン | 作用 | 残存期間 |
hCG | 強い | 長い |
LH | 弱い | 短い |
※LHの残存期間が短いのは、排卵は短い時間の勝負だから
よってこの場合は作用の強いhCGが優先される。
排卵のスイッチは卵胞の大きさか?ホルモン値か?
ここで少し話がそれるが、先ほど述べた通り排卵は女性ホルモンが250〜350の値に入った時に起きると言った。
しかし、多くの医師はこの女性ホルモンの値ではなく大きさを見て判断しがち。
そもそも大きさなんて18・20・22・25mmなど個人差によるところが大きい。大きさは十人十色であるので大きさで判断するというのは理屈に合わない。
これは大きさではなく、純粋にホルモン的な事象なのである。
さらにおかしいのが、生殖学会のテキストの内容(患者向けの冊子)。
ここには、
「卵胞が20mm以上になると排卵が近いので、補助的に血中のホルモンを検査する」
と書かれている。これでは排卵のタイミングを予測するには、大きさが重要であると捉えられてしまう。
極論「大きさを確認すればホルモン値はどうでもいい」ともなりかねない。
この説明は誤りで、真逆。
「ホルモン値が250〜350の幅に入ってきた時に補助的に大きさを知る必要がある」
が正しい。
大きくて黒い丸だから排卵寸前の卵胞ではない。その大きさに相当する女性ホルモンが測定されるから、それが卵胞だと認識できるのである。
hCGの弊害
hCGで排卵を起こそうにも、排卵させるべきタイミングを卵胞の大きさを基準に考えていては、適切なタイミングで投薬が行われるか疑問である。
例えば、大きさにばかり目がいくと、(女性ホルモンは出ていないのに)大きい丸が出ればhCGを投与しかねない。しかし大きな丸は “一過性嚢胞” という “水たまり” である場合があり、この水たまりはしょっちゅうでるもの。
ヤブ医者はこの水たまりを排卵が近い卵胞だと勘違いしhCGを投与してしまう。
薬というものは成分や効果以上に使うタイミングが大事なので、絶対に体の声を聞かなければいけない。声を聞くということはホルモン値を調べるということである。
ではhCGの話にもどる。
先ほど述べた通り、LHは作用が弱く、体温が1度あがると数時間ですぐに消えるくらい寿命が短い(5時間でほぼ消滅)。
それに比べhCGは作用が強い上に10日間ほど体内から消えない。
よって投薬のタイミングを誤るとこの ”作用が強く寿命が長い” 性質により引きこされる弊害がある。
部分黄体化により卵子が死ぬ
その弊害の一つとして、まだ排卵には未熟な卵胞にも作用することが挙げられる。
どういうことかというと、hCGの強い作用により、例えば小学4年生(未熟な卵胞)にいきなり高校に行け(排卵しろ)というようなむちゃくちゃな現象が起きる。
そんな理不尽なことをすると、子供はグレる。それと同じく卵胞もグレてしまう。
現実的にグレるとは、部分黄体化(ちょっとづつ黄体化する)するということ。この現象により血管が萎縮して卵胞の中の卵子は死ぬ。
このように投薬のタイミングを誤るとえらいことになる。
卵胞の不死化
2つ目の弊害。
では、適切なタイミングでhCGを投薬すれば良いかというとそうでもない。
考えてもみてほしい、そもそもhCGとは “妊娠して初めて出るホルモン” である。
hCGは細胞の寿命を延ばす(=不死化)ことができる極めて特殊なホルモン。そんなことができるホルモンはhCG以外にはない。
なんでhCGはそんな不死化という特別な働きを持つかというと、
妊娠という生命の最も根源的な働きの為だけに作られたホルモンだからである。
そう、これは胎児を生かそうとするホルモンであり、よって妊娠の時しか体内に存在しえない。
しかし、妊娠前にこれを体内に存在させるとどうなるか?
それは、卵胞に対して不死化という悪影響を及ぼすことになる。
不死化による遺残卵胞の増加という負のスパイラル
hCGを打つと大小さまざまな卵胞が反応する。反応=排卵(破裂)するのは、大きさでいうと大体12〜13mm以上のサイズの卵胞。
これ以下のサイズの卵胞はほとんど破裂しない。通常は破裂しない卵胞はその周期が終わると消滅するものだが、これらの卵胞はhCGの不死化の影響で生き延びてしまう(だいたいhCG注射1本で最短10日〜最長14日間、2本打つと20日以上と、確実に次周期にまで生き残ってしまう)。
これは完全に医原性疾患。
そして生き残った卵胞は次周期にはほかの卵胞よりもすでに大きいので、優先的に発育してしまう。
この古い卵胞=遺残卵胞が排卵し、次のhCGでまたも消滅すべき小さな卵胞が次周期まで生き延び、また排卵する。つまり本来のサイクルが乱れてしまっている状態になっている。
これでは良好な卵子の排卵は期待できない。
この負のスパイラルが続くと、良くない卵子が溜まっていき結果的に不妊の原因になると考えている。
投薬に「マイルド」も「優しい」もない。必要なのは投与のタイミングと量
クロミッドや、1本くらいのhCGの治療をよく、
- 体に優しい
- マイルド
などというが、そもそも投薬を行っていて100%体に優しい、マイルドといった治療などない。
薬とは、
それが必要とされている時期に、適切に投与された時のみにおいて、効果を発揮するものである。
薬の種類、強弱よりも、不適切な時に不要に投与されれば、それは優しいとかマイルドとかいう次元の話ではなく、良いか悪いかというだけの話。
薬を使っているか使っていないかよりも、必要な時に必要な量を投与しているかが大事。そこができていないのなら、強いとか弱いという以前の話、というのが持論。
hCGは体の仕組みを知れば知るほど使えない薬
さきほどから述べているように、投薬はその人のホルモン値を見て投与すべきもの。
そして、
hCGはいついかなる時においても使う大義名分はない
と考えている。
妊娠後に出るホルモンを妊娠前の人に投与するのはおかしい。
よく、さまざまな不妊原因の中でもとりわけ ”ピックアップ障害” が不妊の原因とされることが多い。人間の体は未解明な部分が多いのでこの原因が多いことに異論はないが、それ以前に
そもそも排卵された卵子は死んではいないか?
とも思っている。
統計的に体外受精は2回までで授からなければ同手法での妊娠は難しいとされていて、欧米では3回でダメなら卵子提供を選択することが主流になっている。そして、卵子提供を受けると結構簡単に子供を授かる。
これは何を意味するのか?
これは、投薬によって卵巣が蝕まれているのではないのか?と考えている(実際には蝕まれているわけではないが=表現)。
刺激周期というもの
自然周期が医師から嫌がられる理由=刺激周期をする理由
自然周期が嫌われる理由に、
- 排卵のタイミングの予測が難しい
- 採卵数が少ない
ということがある。
排卵のピークというのは非常に短くわずか1〜2時間しかない。
しかもこのピークを予測できるのは、ピークの4〜8時間前からでないとわからない。そのため、逐一ホルモン値の確認と解析をし、ホルモンの上がり方を追って傾向を掴み、排卵時間を予測しなければならない。
しかしここまでしても、早く排卵してしまっては採卵はできないし、仮に採卵できたとしても、1個しかとれないのでは “非効率的” となる。これが多くのクリニックが自然周期を嫌がる理由である。
そして、自然周期の成功率はどこでやってもそれほど変わらない。平均で5%くらい(良くて10%)。
こういった現状を捉え、自然周期は、
「搾取している」
と書いている本もある。つまり、金儲けのためなのでは?と。
このように自然周期は、人為的にコントロールが難しく合理的でないので刺激周期にしようとなる。
突き詰めれば、刺激周期の体外受精の考え方とは、
いかに多くの卵を採るか
にかかっている。そのため投薬をし人為的にコントロールしようとする。大まかに言えば、
卵の発育・排卵を薬で止め、薬によって卵の発育と排卵を誘発するということである。
詳しい手順は、
脳下垂体に弱い刺激を(点鼻薬等で)与え麻痺させ、ホルモンを止める。
_____↓
発育させるためにhMGを注射で投与する。
_____↓
卵胞が育ったらhCGを使って排卵を起こす
_____↓
採卵
というもの。これには、
- ロングプロトコル
- ショートプロトコル
- アンタゴニスト法
といったものがある。
hMGという血液・体液製剤
卵の発育にはFSHが必要。この人工的に作られたFSHが “hMG” というもの。
FSHはどこからとるかというと、閉経した女性の血液または、おしっこから抽出する。
閉経した女性の脳は卵を育てたい一心で膨れ上がっている。この状態が俗に言う “更年期障害” 。更年期の方の血中には閉経前の女性の何十倍ものFSHが出ている。
閉経女性の血液またはおしっこから合成の注射薬を作ろうとすると、とんでもなく高額になるため(しかもこれは保険適用外)、コストの安い中国製のおしっこで作っている。
血液・体液製剤なので感染症リスクが高いということで、先進国ではあまり使われなくなっているが、日本はいまだに突出して消費量が多いというのが現状である。
刺激周期の投薬量
ピルを飲んで点鼻薬をして、卵巣の機能を止めて注射を打って採卵しましょう。
これが刺激周期のスタンダードなやり方。
ここで問題なのが投薬量。
通常、hMGの注射は200単位くらいを10日間ほど打つ。つまり計2,000単位が投与されることになる。
蓄積効果というものがあり、この注射で5日目にはFSHが20を超える。
通常自然の状態では生理3日目でピークが8、そこから減っていき5〜6、排卵の数時間だけ20まで上昇し、その後はまた5〜6と下降するもの。
ここからもわかる通り、自然の生理周期中にFSHが20を超えることはない。
結論、この10日分の注射で約1年分のFSHを投与することになる。1年分を濃縮して一気にどかーんと入れる。これが卵巣刺激というもの。
これは人間の体が耐えられるものなのだろうか?
その前に、なぜそんなに大量な投薬が必要なのか?
それは自然の状態と、脳の機能を止めた状態の違いによる。それを理解するためには、まず卵胞の巧みな機能と構造を理解する必要がある。
卵胞の巧みな機能と構造。女性ホルモンと男性ホルモン
大量投薬の影響について語る前に、卵胞の巧みな機能と構造について簡単に説明したい。
卵胞は、
「大きくなりたい!」
「育ちたい!」
と、育つことで女性ホルモンを増やしたい一心であり、女性ホルモンの増加こそが全てである。
例えば、サラリーマンのモチベーション(何かをしたい!という気持ち)は給料だが、卵胞にとってのモチベーションは女性ホルモンを増やすことにある。
では、女性ホルモンの原料とはなんぞや?
それは男性ホルモンである。男性ホルモンは女性の体に男性の10〜20分の1くらい存在している。
では男性ホルモンを作るものは何か?
それはLH。
そして、男性ホルモンを女性ホルモンに転換するのはFSHなのである。
【男性ホルモンの女性ホルモン転換の流れ】
男性ホルモンはごく微量の脳からでるLHから作られ
____↓
男性ホルモンは卵胞に作用して男性ホルモンを女性ホルモンに転換するためのホルモンの感受性をあげ、
____↓
そして、男性ホルモンはわずかなFSHで女性ホルモンに変わる。
つまり、男性ホルモンというのは、卵胞の「大きくなりたい!」というモチベーション(気持ち)を持たせてあげるホルモンと言える。
余談:サプリには微量の男性ホルモンが含まれている
先ほど述べた通り、女性ホルモンの原料は男性ホルモン。そして更年期は、男性ホルモンが減るため、女性ホルモンが作られづらくなることにある。
よって、サプリに男性ホルモンを入れることで
「体調が良くなった」
と感じるのだ。
サプリは適齢の女性には本来不要なもの
このように、女性ホルモンが欠乏している更年期の人へは、女性ホルモンの原料となる男性ホルモンが微量に入ったサプリの服用はある意味で効果はある。
しかし、これが女性ホルモンが十分にある適齢の女性に与えるとどうなるだろうか?
もちろん、原料である男性ホルモンが増えるので女性ホルモンは増える。しかし、女性ホルモンが増えると、脳は卵胞が十分に発育したと勘違いをする。よって、まだ卵胞が小さいにもかかわらず、脳が勘違いして「排卵させよ」と誤った指令を与えしまうのだ。
要は、人間の体はそんな簡単ではないということ。何かを加えればすぐに良くなるというものではない。
では刺激周期による大量投薬に体は耐え得るのか?
このように卵胞というのは複雑かつ絶妙な仕組みになっている。
では、刺激周期のFSH(=hMG)の大量投与を行うとどうなるかというと、本来適当なFSHで発育する卵胞の仕組みを壊してしまうことになる。
刺激周期を行うクリニックの中には、「FSH(hMG)をたくさん打つことの何が悪いのか?」という医師もいる。
(雑誌のインタビュー記事と、学会講演の音声を元に)、
「投与してもすぐ戻るよ。回復するよ!」
「世界中でやっているから大丈夫!」
「一発目で受精させるんだ!一発勝負だ!ガンガン行くんだ!」
と刺激周期は ”強気でやるべき” と雑誌や、学会での聴衆の医師らに向けて、弱気になるな強気で行けと鼓舞している。そして、これを聞いた医師たちは「やっぱ、そうだよな」となる。
しかし、”一発勝負” ということは ”一回しかチャンスが無い” と言っていることと同じ。
この時点ですでに墓穴を掘っている。つまり、回復しないと言っていることと一緒。よって、2発目はない。人間の体はそんな強い刺激には耐えられない。
そして、脳は刺激を記憶するもの。麻薬も一度やったらそれ以上の刺激が必要になる。
そう考えれば、同じく脳に作用する不妊治療で使われる薬に依存性はないのか?と思うのだ。
このように、薬の怖いところは一旦慣れると躊躇なく繰り返し使ってしまうところにある。
薬を使うことに依存してしまうし、もっと言えば、その薬だけでなく処方する医者に依存してしまうともいえよう。
hCGによるレセプターの共有とその破壊
NACに来るほとんどの患者がhCGを打ってきている。
注射をすると体内のhCGの値は、15分から30分で500まで急上昇する。
一方、自然の状態(自然妊娠)では、1日で5、4日間で50、9日間かけてやっと500にまでゆっくりと上昇するもの。
なぜ、自然の場合ではこんなにゆっくりあがるのか?それは、
作用の強いhCGでレセプターを破壊しないため。作用が強いhCGを一気に入れると、レセプターが壊れてしまうのだ。
先ほど、同じレセプターを利用しているこの二つのホルモンが、同時に存在した場合、作用が強いhCGが優先して使うと述べた(同時には使用できない)。
これは、いうなれば鍵穴に鍵を入れて開けるのではなく、
「もう鍵で開けるなんて面倒くせぇ!蹴破って開けちまえ!」
という感じ。そうなるとそのドア(=レセプター)は壊れて次から使えなくなる。
さらにこれは持論だが、レセプターが壊れると、卵胞から卵子が飛び出さなくなる可能性があると思っている。
だから、自然の状態ではドアを壊さぬようゆっくりと開けるのだ。
ピルによる遺残卵胞一掃(調整)
KLC時代にクロミフェン周期を確立したと言ったが、刺激周期を行ってきた人へこの方法で成功させる為にいろいろと試行錯誤した。その結果、ピルによる遺残卵胞の一掃に行き着いた。
不良卵子は大きな卵胞(遺残卵胞)の中に入っている。大きな卵胞の中の卵子は成長が早くこれが不協和音(負のサイクル)の原因となっている。
よって、卵胞のサイズを揃えてあげることが重要(全員同じスタートラインに並べる)。
そして、そうするにはピルによって均一化(バラツキをアジャスト)を行うことで、同じスピードで良いやつも悪いやつも育つようになる。
この一掃の詳しい仕組みは、ピルを使うと卵胞を育てるホルモンFSHが下がり卵胞が小さくなることにある。全体的に小さくしてバラツキを抑えることで、良い卵子が出てくる可能性を高めようというもの。
例えば、これまで10個のうち全部ダメだったのが10個のうち3個は良い卵子が出てくるというふうに改善することが多い。
そして、良い卵子を1個でも見つければこっちのもの。
これをKLCで行ったら受精率が上がって周囲から「なんで?」と評判になった。
さらに、新橋夢クリニック時代にはピルを2倍量投与するという ”完全調整法” を確立。するとさらに妊娠率が高くなるという結果を得た。その時、
「刺激はある程度は必要で、そして均一化が大事なんだ」
と考えた。
と同時に、結局は薬に頼っているではないか。ほんとうに薬害はないのか?とも。
不妊症は薬で治せる病気だと思っている人がいる
不妊症は病気ではない。健康な人たち。
癌じゃない人に抗がん剤は与えない。そんな本当に健康な人を薬でリセットできる=リセットスイッチがあるとロボットの様に考えている人がいる。
でもそんなロボットのようなリセットスイッチはない。
もっというと、ピルによるリセットスイッチがない=出来ない人たちにはどうしたら良いのか?と思うのである。
ピル調整のデメリット
ピルのリセットは実は全員にはできない。できる人とは、卵巣の機能が十分残っている人だけ=原始卵胞の数が多い人。
言い換えれば、
一発勝負ができる人。
ピルを飲んだ後のAMHは確実に下がる。だいたい30%程度下がる。それは、ピルのせいで小さかったやつがより小さくなってしまい死んでしまうため、結果的にAMHは下がる。
ピルは大きいやつには良いが、小さいやつには悪影響なのだ。
そうなってくると卵胞の数が少ない人ほど減り方が著しくなり、下手したら半分になることも。ピルのせいで卵巣の回復は相当の機能停止(クラッシュ)に陥り、最悪の場合、次周期に閉経するといった可能性もある。
よって誰にでも使えるものではない。
これができる人はAMHが3以上と、全体の10%くらいの人にしか使用できない。
そうなると、やはり病気ではない不妊に対して、投薬に頼らない治療を確立したいという気持ちが強くなっていった。
近年、助成金の適用年齢が下げられたが、これはリセットボタンをおせない人はそもそも治療するのは(体外受精を選ぶのは)間違っているよと、大学の指導的立場の人は考えている。
AMHが低い年齢層の人は妊娠する可能性が低いから、対象年齢を下げたい。それによって成功率を上げたい。助成金を下げたい。と考えている。そんな背景から(慶応の教授が)助成金の年齢制限は38歳で切りたいと提言するも、さまざまな反発があり実現には至ってはいない。
そして、2010年頃から急に ”卵子の老化” という言葉が出てきた。数よりも “卵子の老化” が問題だと。
ちなみに、卵子の老化と染色体の異常をごっちゃにしている人が多い。多くの雑誌ではそれらを一緒くたに論じられている。
染色体の異常とは、その異常が発動するまでは正常のまま発育し、ある日突然発動され突然だめになるもの。
一方、老化は突然起きるものではなく、もはや発育ができない状態。
つまり極端に言えば、染色体が異常な卵子は授精(妊娠〜出産)は可能だが、どこかの時点で突然異常が発生しダメになり、卵子の老化はそもそも授精しない。
卵子の老化について
卵子の老化はないと考えている
NACでは卵子の老化は無いと考えている。
そもそも “卵子の老化” という言葉は昔からあったものではなく、近年出てきたもの。
まずAMHとは卵子の数を推測する値。卵子の数というのはAMH値をみるに、30歳で1〜10万個、40歳で1,000〜1万個というふうに加齢と共に直線的に下がっていく。卵子の数(AMH)はある時を境に急に減るというわけではない。
対して、一般的に示されている妊娠率は、35歳前後を境としてカーブを描いて急降下する。
しかし、NACの数千の治療例から統計をはじき出すに、妊娠率がカーブを描いて下降することはない。AMH同様、直線的に下がっていくのだ。
なぜ一般的に示されている妊娠率のデータはある時点を境にカーブを描いて下降を加速させているのだろう。
これは、35歳以下のために作られた欧米の治療法を35歳以上の人にやっていることが要因の一つであると考えている。
それは無理がある。シニアにフルマラソンをさせてはいけない。それなりのやり方があるはずなのだ。
NACの症例からみても、加齢によって数が減少し妊娠率が下がるということは間違いないが、だからと言って老化を示す証拠はない。加速度的に老化するというデータは存在しないのだ。
妊娠率がカーブを描いて急降下しているのは、助成金の制限年齢を下げるため意図的にカーブさせ、そのカーブが起きる(=妊娠率の急減)根拠として ”卵子の老化” という言葉を生み出し、こじつけているのではないかと邪推。
NACの採卵〜胚移植の方法
NAC独自の残骸卵胞及び小卵胞採卵技術
毎回良い卵子(アタリ)が出てくるとは限らないし、ダメだという周期があるのは確か。
しかし、その周期 ”アタリ” がでてくるか分からないのに、刺激のように一発勝負をかけて、もし外したら目もあてられない。そう、周期を間違えば受精はできない。
ただこうやって言うと、
「そうは言っても自然周期は1個しかとれないし、何度も採卵しなきゃなんない。しかもその1個がダメならどうしようもない」
となる。確かに自然周期では卵を人為的に育てていないので少量しかとれない。1個もとれないことも多い。
では、残骸卵胞やその他の小卵胞から採卵したらどうか?
どういうことかと言うと、排卵した後の潰れた残骸卵胞に針を刺して、残った液体を回収しその中に卵子がないかを見てみるということを行う。
すると、この破裂した残骸卵胞の中には、卵子が飛び出さずに残っていることが多々ある。
そして、この残骸卵胞からの卵子の回収率はどんなに少なく見積もっても40%はある。私に限っては50%くらいと約半分の高い回収率となっている。このことから、残骸卵胞から卵子が飛び出ていないことが頻繁に起きていることがわかる。
そして、この事実をネイチャーに提出したが、医療業界ではそもそも潰れた卵胞の中に卵子は残っていないというのが定説になっているので笑って突き返された。定説を覆すのはいろいろと厄介なのだ。
また、主席卵胞とならなかった小卵胞からの回収も行っている。
小卵胞の空胞率は2〜3割。これは、小卵胞の中に7〜8割の確率で卵子がいるということに他ならない。そして、その回収率は50%を超えている。
では、この小卵胞からとってきた卵子はどんなやつかというと、生きて成熟しているM2卵子が27%、M1という未成熟卵子と成熟卵子の間のものが10%、未成熟卵子は63%といった割合になっている。
そして、自然周期における通常の主席卵胞のみでの体外受精に比べ、小卵胞卵子まで含めた体外受精だと妊娠率は2倍以上になる。
生産率でいうと、主席だけだと11%だが、小卵胞卵子まで含めると生産率はなんと25%もあるという結果が出ている。
ちなみに、この小卵胞から採卵するには特殊な針をつかう。この針は私が特許を持っており、非常に極微細な針でめちゃくちゃ細い。現在この針があるのは、NAC、新橋夢クリニック、おち夢クリニックにしかない。
もとは白血病の人の採卵のために開発した。白血病の人を出血させては大変まずいので超細い針を作る必要があった。
このような特殊な針を用いて残骸卵胞や小卵胞からの採取を投薬に頼らず技術によって解決しようとする、世界でも特殊でオリジナルな手法で行うのがNACである。
NACの移植方法は凍結胚移植
NACでの移植は凍結胚盤胞で移植する。妊娠率の低い初期胚は使用しない。胚盤胞で戻す一番の理由は、
内膜との同調性を良くするため。
通常、受精卵は胚盤胞の状態で着床する。よって、胚盤胞まで生育させ凍結して子宮に戻すのがほとんど。
さらに初期胚から胚盤胞に成長するには、100〜150時間と50時間もの幅があり、かつ子宮内膜は黄体ホルモン補充によって、成熟(肥厚)速度は上がっている状態。
凍結ではなく新鮮胚移植もしないことはないが、このように卵の発育速度に50時間もの幅がある中、成熟速度の速い子宮内膜と同調させるのは非常に難しい。
よって、胚盤胞にし(可能性が高い他周期に対応できるよう)凍結してからもどすことがほとんどである。
日本の凍結技術の高さとそれを生み出したKLC
ちなみに日本の凍結技術は世界トップクラス。
ガラス化保存技術といって、国際的にも評価の高い技術を有している。今や日本の体外受精のほとんどが凍結移植となっている。
遡って2005年頃までの国内での凍結移植件数はほぼKLCの凍結件数とイコールだった。
つまり、日本の凍結技術を生み出し引っ張ったのはKLCなのである。この凍結技術の発達・導入により結果的に妊娠率があがることが明らかになっていった。
そうすると現在主要な全国のクリニックがKLCに凍結技術講習を受講しに来た。
当時はKLCの技術がなければ凍結はできなかったのだ。
「成功なくして報酬なし」という方針
NACは2回目までは成功報酬制度を導入している(3回まで成功報酬制にしてしまうと倒産してしまう)。
自然周期は高価な薬剤は使わない分、ホルモン値がどう変化するかという予測や解析が非常に難しい。裏を返せば非常に高度なことを行っていると言える。そしてこの高度な治療を行うためには過剰と思われる設備が必要になるのは仕方がない。
ただ、小卵胞採卵ができるようになったことで成功率が上がり、だいたい半分の人が2回までで卒業するようになってきた。よって2回の成功報酬はできると考えて実行に移した。
投薬に頼らぬ治療を確立する理由
医療は投薬なくして成り立たない。
この薬を作り供給して医療を支えているのは企業である。
そして企業は利益を出さなければ成り立たない。
そもそも投薬のガイドラインをつくったのは病院でも医師でもなく製薬会社である。
このガイドラインは、数値で決める。
「この数値が出たらこの薬を飲みなさい」
というふうに、昔のように病気になってから投薬するという流れではない。まず投薬ありき。投薬すべき数値の設定は製薬会社という利益を追求する企業である。
これは何を意味するのか・・・
私は、加藤修氏(故KLC理事長)とともに「薬に頼らない治療」という信念でKLCを設立した。
加藤氏はそれが確立できないまま志半ばで亡くなった。よって私はそれを引きついでいる。
※この情報は2017年10月時点のものです。あくまでメモと記憶をもとに説明会内容を書き記したものとなります。誤りがあった場合は申し訳ありませんが、必ずしも情報の正確性は担保しておりませんことご了承願います。あくまでご自身の責任において随時ご判断ください。この情報をもとにしたご判断や結果に対しての責任は負いかねますので予めご了承願います。
夫
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