記事下方に財務省主税局税制第1課にこのニュースについて電話で聞いた結果を追記しています
「子なし増税」で妊活ツイッターのTLが盛り上がっています。
発端は11月17日のこのニュース(しばわんさんツイート引用させてもらいます😉)。
https://twitter.com/shibawan1028/status/931284960933060608
以下に中日新聞記事内容全文抜粋↓
【子どもなし世帯、年収800万円超で増税案 政府検討】
政府が2018年度税制改正で議論する所得税改革に関し、子どもがいない世帯では年収が800万~900万円を上回る場合に増税とする案を検討していることが16日分かった。
各種控除の見直しにより高所得層が増税となる一方、低所得層は減税とし、子育て世帯も負担が重くならない仕組みを目指す。与党と調整しつつ今月下旬から議論を本格化させる。
年収の線引き次第で世帯によって明暗が分かれるため、世論の反応も見ながら慎重に制度設計を進める見通しだ。これまでの調整では、高収入な会社員ほど税負担の軽減額が大きい給与所得控除を縮小し、多様な働き方に対応した税制に改める方向だ。
※2017年11月17日 00時44分 中日新聞より抜粋
というもので、年収800〜900万円の子なし世帯が増税の対象となる案が浮上していることを紹介しています。
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は?
なにそれ?
なめてんの?
あの〜、好きで子なしやってんじゃねーわ!
おっと、感情的になってしまいました。
政府これ本気で言ってんですかね??
だとしたらかなり言いたいことがあるんだが。。。
ただ、いかんせんこのニュースだけでは情報が少なすぎるのでちょっと調べてみました。
今回いろいろと調べてわかったことを書いてみたいと思います。
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「子なし増税」の情報元について調べてみた
上記ニュース配信の前日11月16日の日経に同様の記事がありました。
内容はというと、
【高所得の会社員に増税案 財務省、給与控除を縮小】
財務省が2018年度税制改正で提案する所得税改革案をまとめた。会社員の給与収入から差し引ける給与所得控除を縮小する一方、すべての納税者に適用する基礎控除を引き上げる。
年収800万~900万円を上回る高所得の会社員は増税となり、フリーランスなど請負契約で働く人や自営業者は減税となる。多様な働き方を税制面から後押しする。
※2017/11/16 18時 日経新聞(有料電子版)より抜粋
これを読む限り、税金(税率)を上げるとか下げるということではなく、税金が控除される部分を多くしたり少なくしたりすることで、人によって結果的に増税となったり減税となったりするということみたいですね。
(控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くこと)。
ここで対象となる控除項目は、
- 給与所得控除
- 基礎控除
の二つ。
ニュース記事にある通り、
給与所得控除部分を減らし、基礎控除部分を増やすという案のようです。
あれ?子なし世帯への増税じゃないの?
しかし、日経の記事をみる限り、どこにも「子なし世帯へ増税」という記載がありません。
あるのは、年収800〜900万円を上回る高所得の会社員は結果的に増税となるとしか書かれていません。
う〜ん・・
どういうこっちゃ??
そこで財務省のHPで税制改正に関するページを探してみると「平成30年度税制改正要望」といったものがありました。
これは各省庁からの税制改正要望を財務省で取りまとめているページっぽいですね。
一応、すべて目を通してみましたが、所得税改革にまつわる記述や、付随しての「子なし世帯増税」的な記載は見つけられませんでした。
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と思ったら「子なし増税」につながる記述を発見!
では何を根拠として「子なし増税」なるニュースが出回っているんでしょう?
どこにもそんな記述は見当たらない。。。
そこで、もう一度日経の記事群から探してみました。
すると上述した2017年11月16日18時の記事と同じ見出しの記事で、同日16日23時に最新版がありました。
【高所得の会社員に増税案 財務省、給与控除を縮小】
〜〜〜〜
22日から始まる与党の税制調査会で取り扱いを協議する。財務省は全体で増減税が同額となる税収中立を念頭に置くが、首相周辺は16日、子育て支援の観点から「子どものいる家庭は増税の対象外にする」と明らかにした。
※※2017/11/16 23時 日経新聞(有料電子版)より抜粋
内容はほぼ同じでしたが、違う点は上記下線部分。
「子どものいる家庭は増税の対象外とする」
との政府の発言があったようです。
これですね。
政府としてそのような考えを持っているということを、冒頭の中日新聞や共同通信などがフォーカスして書いたものではないかと思われます。
これを見る限り、決定ではないけれどもやはり「子なし増税」は既定路線と思われ、、、
まじか・・・
不妊治療者にとって辛い税制となるのか?
政府は、
子供のいる世帯は対象外=優遇
と言っているわけですが、逆から見れば
子なし世帯は対象のまま=増税
ということになります。
好きで子なしやっているわけではないので、ここだけ聞くと「は?」ってなっちゃいますよね。
でも本当に我々不妊治療者にとって不利になる税制なんでしょうか?
この記事を見る限り、考え方としては、
”高所得者の税負担を重くし、中低所得者の税負担を軽くする”
”自営業やフリーランスなどの税負担を軽くすることで、多様な働き方を支援する”
という税制を目指しているとわかります。
「子どものいる家庭を除外」という政府発言は不妊治療者として心情的に辛いものがありますが、考えなければないのはどれだけ我々にデメリットがあるのかを正確に掴むことかと思います。
個人的に思うこの問題のポイントは、
- 課税対象はどこを指すのか?
実質的に増税となってしまうのは誰なのか?ということなのかなと。
おそらく、自分も含め多くの方々が反応・反発しているのはもちろん政府発言に端を発する「子どものいる世帯の優遇」部分であるとは思うのですが、もっと言うと、結果的に増税対象となる年収800〜900万円以上という部分を ”世帯年収” と認識しているからではないのかなとも思います。
「夫婦合算年収だったら800万に届いちゃうよ!そんなところからも取るのかよ!」
ということなのかなって。
ただ現在、日本国では所得税は個人単位で徴収するはずで、夫婦共働きの家庭でも、夫と妻の所得税はそれぞれの所得に応じて個別に徴収されるものだと認識しています(間違ってたらすみません)。
つまり、
- 「子どものいる家庭は除外」という部分が大きく取り上げられた
- 年収800〜900万円以上は世帯年収を指しているのでは?
という認識の下、「子なし増税」というワードが急速に広がったのではないかと思います。
この世帯年収で考えるって点は、2014年に政府が少子化対策の一環として、所得税の課税対象を個人単位から世帯単位に見直す検討を開始したことも一因にあるのかなと。
この案は、世帯年収に対して所得税を課税すれば、子どもがいればいるほど税金が優遇されるので子どもを作る意欲が増し、結果少子化につながるといったまぁまぁ安直なもの。
裏を返せば、共働きより専業主婦の方が税制上有利になるので、現政権が掲げる成長戦略である「女性の活用」を結果的に阻害してしまうことにもなると思うのですが。
現在もこの所得税改革は議論中で、もしかするといずれフランスのように「世帯年収」に対して課税することにならないとも言えないので、「子なし増税」が現実になってしまう可能性もあるかもしれません。
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(個人)年収800万円以上の割合ってどれくらい?
ちなみに、年収800〜900万円以上の割合ってどれくらいなんでしょう?
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると2016年の年収分布は以下の通り。
年収800万円超以上は9%で、800万円以下は91%と大部分を占めています。
先ほどの日経にはさらにこういった記述があります。
納税者であれば会社員以外も一律に適用される基礎控除を拡充。いまは38万円の控除額を50万円程度に引き上げる案が有力だ。フリーランスなど会社員以外の人は課税所得が圧縮できるため、減税になる。
給与所得控除は給与収入に応じ、最大220万円を差し引ける。年収800万~900万円を下回る会社員は、基礎控除の拡大分と相殺して負担増にならない範囲で控除を縮める方針だ。
※※2017/11/16 23時 日経新聞(有料電子版)より抜粋
これって全体の91%にあたる800万以下の会社員は負担増にならないということかと思います。
また、だれにでも一律に適用される基礎控除額の拡充により課税所得が圧縮できるので、会社員以外の方は減税になるとしています。
これは働き方改革の一環というところもあるようですね。
ちなみに年収1,000万円の人で、年間10万円前後の負担増になるようです。
まとめ
かなり衝撃的なニュースだったので、気になって調べてみました。
確かに政府として、子どものいる家庭は優遇する考えがあることは事実としてわかりました。
ただ課税対象は世帯ではないので(たぶん)、大多数の人は増税の波をまともには食らわないようにも思われます。
(自分が年収800万もないので)少し安心した部分もありますが、今後も議論継続中の所得税改革によっては世帯年収を課税対象とすることもあるかもしれません。
ただ、それよりも個人的には今後消費税が10%にあがる方が痛いな〜と思っています。
11月22日から始まる与党の税制調査会で取り扱いを協議するらしいので、何か進展などあってわかったらまたシェアしたいと思います。
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【11/24追記】財務省 主税局 税制第1課に電話して聞いてみた結果
今回の「子なし増税」のニュースについて電話で聞いてみました。
まず財務省の代表番号(03-3581-4111)にかけ、
「2018年度の税制改正の所得税に関して質問があるのですが」
と伝えると、主税局税制1課なる部署へ回されました。
この主税局税制第1課とは、
所得税、相続税、贈与税、登録免許税などの直接国税、国税通則、内国税の徴収一般及び税理士等に関する制度の企画・立案。
電話:03-3581−4111
内線:5732(所得税)
内線:2449(相続税など)
を行う部署のようです。
そして以下質問をぶつけてみました。
- 子なし増税の真偽
- 対象は世帯年収か
- 問い合わせ数はどうか
最初に11月17日に各新聞で出回った「子どもなし世帯、年収800万円超で増税案 政府検討」なるニュースの真偽について確認しました。
回答としては、
「そういった指示はくだっておりませんし、現状そういった検討はしていません」
とのこと。
そこで一応確認として、
「仮にそういった流れがあったとしても、所得税の課税対象はあくまで”個人単位”に現状変わりは無いですよね?」
と確認すると、「その通りです」とのこと。
さらに、
「2014年始めにフランスのように所得税の課税対象を個人単位から世帯単位にするという政府発信がありましたが、現在どうなっていますか?」
「今のところ具体的には進んでおりません」
とのこと。
「問い合わせ多いですか?」
と聞くと
「多いです・・・」
と少し苦笑いでした。
主税局の回答に嘘はないと思いますが、あくまで現時点での答えであり、今後変わることも多いにあるかと思います。
やはりこのような回答を聞く限り、今回の「子なし増税」の盛り上がりは、11月16日の所得税改革案を伝える日経の記事内で首相周辺の「子どものいる家庭は増税の対象外にする」という発言を各新聞が「子供世帯は減税対象」という書き方ではなく、「子なし世帯は増税」と少し ”煽って” 書いたんじゃないかなって思います。
今回のニュースいろいろ調べてみた結果をまとめると、
- 政府は所得税改革を検討中
- 子供がいる世帯は対象外の可能性有り
- 所得税課税対象は「個人単位」と不変
- (個人)年収800〜900万以上は結果的に増税
- (個人)年収800万以下は結果的に減税
と言えます。
夫婦片方の収入がゼロで片方が年収800万あれば増税の対象ですが、子供がいれば増税対象外ということ。
つまり、夫婦それぞれの年収を800万(世帯年収1,600万円未満)までに抑えれば減税になるということです。
電話を切る際に、
「我々は不妊治療者です。子なし増税の真偽はともかく、子供を望んでも授からない人もいます。今後税制を見直す際にはそういった人の存在も強く認識のうえ改正に着手してください。子を育てることも大変ですが、その前の子を授かることに四苦八苦している人間が相当数いることもお忘れなく。よろしく頼みます」
と、伝え電話を切りました。
頼むぜ財務省!
夫
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