前回、不妊治療中に同じ悩みを持つ方とのやりとりで救われた経験を振り返り、今後私も「不妊治療という深い悩みにおいて少しでも役に立ちたい」と書きました。
この先少しでも何か役立つことが出来るよう、今回は
不妊治療において辛かったこと・もどかしかったこと
を自身の体験から振り返ってみます。
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目次
先が見えない不安

一番につらかったのはやはりこの辛さ。
不妊治療は
頑張れば、努力すれば、必ず結果がついてくるもの
では、本当に悔しいけれど、ありません。
不妊治療はあくまで受精〜着床のハードルを人為的に下げる手助けをするものであり、結果を保証してくれるものではないんですよね。
治療を続けていく中で
この治療が今の自分達に本当に最善なのか?
この先に結果はついてくるのか?
常にこういった不安と闘っていました。
私たちが はなおかIVFクリニックに通い始めた頃、夫もその気持ちを書いていました。
「ゴールまでの距離がわからないので、スタミナやモチベーション、コストをどう配分・維持していくか迷ってしまう」
思い返しても、この漠然とした不安感は常につきまとっていました。
人には言えない悩み、絶え間なく押し寄せる孤独感

この悩みは、性格や環境などで個人差があるかもしれません。
私はどうしても頑なにこの悩みを、経験していない友人に話すことが出来ませんでした。
今振り返ってみると、私は自分が不妊だということを
- 恥ずかしいと思っていたし、
- 同情されるのが逆に辛かったし、
- 自分の弱さをさらけ出す強さがなかった
のだと思います。
誰かに話してみたいけど、話せない。そんなもどかしさも辛いことの一つでした。
私のような理由でなくても、おそらく「自身の不妊」や「不妊治療中であること」って当事者にとって気軽に話せるものではないですよね。
話しにくい理由の一つには、社会の雰囲気がまだまだ「不妊」や「不妊治療」に対して、オープンな風土がないからでしょう。
それは突き詰めると、当事者以外の人にしてみれば「不妊治療」というワードを受け止める「アンテナ」が十分に備わっていないからなんだと思います。
不妊治療への知識がない中で「分かってほしい」と求めても、そもそも符合する知識がないから消化できないんだと思うんですよね。
だから好奇心や偏見が生まれるのかなと。
そんな風に分からないことや、未知なものを拒否するのが人間の本能だと思います。
それを覆し変えていくには、教育はもちろんのこと、トップとボトム両方からの不断の発信、一人一人の小さなアクションを常に起こしつづけることで理解されていくと信じています。
以前、「高度不妊治療をどこまで人に話す?」と、ツイッターで質問しました。

238名もの方が回答してくれた結果は、33%が「夫にしか話していない」、更に「身内まで」というくくりは実に63%でした。
この結果から不妊治療って他人には話づらく、孤独なんだと改めて感じました。
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治療と仕事の両立

(引用元:妊活コーチ 松本亜樹子 オフィシャルブログ)
不妊治療と仕事の両立、だんだんと社会的な問題になってきていますよね。
NPO法人Fineの調べによると、働きながら不妊治療を経験した人の実に96%が
「仕事との両立は困難」
と感じているようです。
私は数年前に、近くに住む母親が日常生活に支障をきたす程の疾患を患ったこと、また「すぐに子どもができるでしょ、出来たら3歳までは一緒にいたいな」という当時の考えもあり、正社員から柔軟にシフトが組めるパートへと働き方を変えていました。
今の勤め先は小さな事務所で、社長は夫も誘って3人で飲みに行くほど身近で家族的な存在。そんな職場なので治療のことは詳しく話さずとも察してくれて、通院には恵まれていました。
しかし、新卒で入った社員数1万人規模の上場企業だったらどうだっただろうと想像した時、あの激務な職場ではとてもじゃないけど両立は困難を極めただろうと思います。転職した今の職場だからできたんだろうなぁと。
半休、有給・・いくら年間で取れる休みがあるとはいえ、労働者の権利を思いのままに行使するのはなかなか難しかったでしょう。
臨機応変かつ回数の多い通院と、読めない時間・・、その全てに対応するには以前の会社ではとても肩身の狭い思いをしただろうなと容易に想像ができてしまいます。
いやそもそも、不妊治療中だということを上司や同僚に打ち明けることすら出来なかったかもしれません。
そうそう、先日都が開いたこんなセミナーに参加してきました。

東京都はこの6月から「働く人のチャイルドプランサポート事業」として、不妊治療と仕事の両立を支援する会社に奨励金を出すそう。
この取り組みがどの程度浸透するのか、またどの程度治療当事者の負担軽減につながるかは未知数ですが、だんだんとこういった「不妊治療に対する取り組み」が増えることはいいことだと思います。
このクリニックで本当に合ってる?情報の取捨選択の難しさ

現在、不妊治療といえばこのサイトというほど機能しているサイトってないと思うんですが、どう思いますか?(例えば「食べログ」のような)
似たような情報が散乱していて、全くまとまっていない。
口コミ数にはかなり偏りがあるし、それほど活発でもない。(だから、実際体験している方のブログを見るのが一番参考になるんですよね)
不妊治療の「先が見えない」という究極かつ根本的な不安も手伝って、
本当にこのクリニックでいいのかな・・?
と焦燥感に駆られてしまうこともありました。
私はNAC日本橋を卒業するまで、
総合病院婦人科
↓
はなおかIVFクリニック
↓
漢方・鍼灸院
↓
こまえクリニック
と複数の病院を4年間ジプシーしてきました。
もしも妊活・不妊治療を始めた当初からもっと詳細な一次情報に出会えていれば、その期間や選択するルートはまた違ったものになっていたかもしれないな、と思うのです。
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クリニック側からの情報開示が少ない
NAC日本橋を卒業した際にも書きましたが、今現在不妊治療クリニック側からの情報もかなり少ないと思っています。踏み込んだ独自の内容(実績)の開示が少ないな、と。
専門用語の説明や、妊娠に至るメカニズム等の教科書的な情報はネット上には溢れてるし、本を読めば十分に理解することができます。
そんな情報の海で、私たちが本当に知りたかったのは、例えばクリニックの
- (最新の)妊娠率
- AMH別妊娠率
- 卒業までにかかった費用(IVF回数等)
の年齢別の平均値といった情報でした。どこぞの企業がつくった教科書を丸写ししたような妊活サイトのありきたりな情報ではなく、現場の一次情報を欲していました。
自分と似たタイプの方がどれくらいの期間で、人工授精や採卵・移植を繰り返し卒業したのか。費用はいくらかかったのか。
もちろんその事例が自分にそっくり当てはまるわけではありません。
けれど、そういった情報を知れることで不妊治療という先が見えない中で、
- 自分が今どの位置にいて
- どういう傾向にあてはまって
- 自分にとってどのルートが一番妊娠の可能性が高いのか
ということが、イメージできれば治療を継続していく上で、少なからずモチベーションになっていくはずだと思っています。
と言いつつ、情報の海にも溺れてしまう

とはいえ不妊治療を始めた当初は、ネットに溢れる「教科書を丸写ししたような妊活サイト」の情報の海に溺れてしまうのもの。
こういったサイトが悪いとは言いません。入り口としては有益な情報ですし、妊活や不妊治療の間口を広げるという意味では十分に機能していると思います。
しかし、長く治療を続けてくると、
この検査の目的は?
検査の痛みは?
この薬って何のために使うの?
この会計って高いの、安いの?
刺激?自然?
みんなはどうしてるの?
副作用は?
これって妊娠超初期症状?
と、より個人差のあるニッチで深い悩みが湧きでてくるんですよね。
切羽詰まった中でそういったサイトをのぞいても、そもそも万人向けに発信された(つまり無難な)情報では物足りなく、温度差を感じてしまうんです。
もちろん、医療系サイトは特に企業が運営している場合、リスクを考えればどうしても無難にならざるを得ないでしょうし。
そんな中、私にとって一番有益な情報の入手先は同じ治療中の方が体験(一次情報)を綴ったブログでした。
こんなイメージ↓

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身体的、金銭的な苦痛や圧迫
人工授精までの一般不妊治療と、体外・顕微受精の高度不妊治療。
子を授かりたいという純粋な気持ちに差はないけれど、身体的、金銭的においてはやはり高度不妊治療の負担はより大きいもの。
- 卵胞やホルモン値によって読めない通院
- 長い待ち時間による疲労
- 採卵、手術等の肉体的な痛み
- 高額な治療費でみるみる減っていく預金
- それでも成功するか分からない精神的苦痛
クリニックの待ち時間が長いのは、需要と供給のバランスが合っていないこともあげられるのかもしれません。通院した はなおかIVFやNACは本当に混んでいますし、その他のクリニックも混み合っていると聞きますから。
それに加え、肉体的な疲れ、痛み、副作用、精神的な不安。
超高額な医療費。
高額な医療費のために頑張って働いているのに、助成金の制限に引っかかるという矛盾。
両立できず退職せざるを得ない不条理さ。
ただ夫との子が欲しいだけなのに。
どうしてこんなに痛い思いをして、高額な医療費を払っているのに結果が出ないんだろう。
純粋な想いと突きつけられる現実とのギャップに、常に苦しめられるんですよね。
友人のSNS「ご報告」が辛い

「ご報告✨」
「安定期に入ったので報告します(^^)」
「今日やっと赤ちゃんに会えました。家族3人で頑張っていくので、これからもよろしくお願い致します(^^)」
頭ではわかってる・・
世はSNS全盛期。
私は今この友人の、ある幸せなワンシーンを見ているだけ。
だけど、治療中はこんな投稿を見るのが本当に辛い。。
目に入れたくない。
「なんで私は?」が止まらなくなってしまう。
妊娠〜出産がまぶしすぎる。
子を授かりたいと切実に願い憔悴していく中で、止まらないSNS情報にはかなり傷ついてしまっていました。
人の幸せを喜べない自分に対し自己嫌悪に陥ることもありましたが、メンタルの弱い私は、あまりに妊娠や子育て関連のヘビーな投稿ばかりの知人をアンフォローしたこともありました。
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疎遠になっていく友人たち
そして治療期間が長くなっていくと、妊娠中や子持ちの友人と会うのがどんどん辛くなっていってしまうんですよね。
「最近どう?」
「子供は?」
相手が何気なく聞いてくるそんな質問に必要以上に怯えてしまう。
私が望む未来を手に入れている友人たちの話題についていくのがしんどい・・
状況や環境は常に変化していくものだよね・・
友人が嫌いなわけではなく、今は互いに置かれた状況が違うだけ。
だから一時的に価値観や温度が合わないだけ・・
と、今は自分を守る時だと割り切って、自ら距離を取り疎遠になっていった友人も少なからずいました。
治療のストレスから増える夫との喧嘩
不妊治療はとてもセンシティブな医療です。
不妊の原因は男女半々なはずなのに、治療の肉体的負担はほぼ女性といっても過言ではない。
妻は、
「この辛さをわかってほしい」
「この痛みを知ってほしい」
「治療の話を聞いて欲しい」
それに対して夫は、
「身体的に男が何もできないのはしょうがない」
「そんな急なスケジュール変更は難しいよ」
「仕事が忙しくて話をゆっくり聞けない、疲れている」
不妊治療に協力的な夫ですら、こんな風にだんだんとすれ違いがおきてきてしまう時もありました。
そして、そんな治療のストレスや行き違いからくる喧嘩の辛さといったらもう。
もともとは喧嘩の少なかった私たちですが、治療を始めてからは数度の大喧嘩がありました。
その度に私は
「どうして辛いのは私なのに、わかってくれないの?」
と絶望していました。
夫にだけは、「大丈夫だよ。ぽっ子は何も悪くないよ、頑張ってるよ」と無条件で丸ごと抱きしめて欲しいんですよね。たとえわがままだとわかっていても。
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モチベーション維持の難しさ。時に襲われる絶望感
治療期間が長くなってくると、だんだんと
「このまま頑張れば本当に妊娠できるんだろうか・・」
「一度お休みしようかな・・」
とモチベーションを維持できなくなってしまう時があります。
考えないようにと思っても、やっぱり寝ても覚めても治療のことを考えてしまう、検索魔になってしまう。
心から「妊娠」を忘れることが難しい。
そしてだんだんと、そんな毎日に疲れてしまう。お酒やカフェイン、規則正しい生活に気をつける毎日にも疲れてしまう。
リラックスしたい、気分転換したい・・
でも与えられた時間を考えると、休んでいる暇なんてないのかな。
苦しい。
どんなに気持ちをまぎらわしても、ふとした瞬間、とてつもない絶望感に襲われるんですよね。突然涙が止まらなくなることも幾度となくありました。
周囲の何気ない言葉に傷ついてしまう

妊活開始当初、仲が良い友人や同僚には「子供が欲しいと思っている」ことをなんとなく話していました。
話の成り行きで、そういった話題になると必ず言われるのが、
「考えすぎなんじゃない?」
「忘れたころにくるっていうよね」
「息抜きしてる?」
「最近旅行に行ってなくない?」
「◯◯ってサプリいいらしいよ」
なんて言葉たち。
優しさからくる言葉だと頭ではわかっていても、
考えちゃうし、忘れることなんぞほとんどないし、息抜きなんぞで子供できたらもはや苦労しないし、通院で旅行に行く時間もお金もないし、一般的に言われる「妊活に良いこと」は全部やってるし!!うるせぇ!!!
なんて思っちゃうんですよね。。
どんどんどんどん、周囲の言葉にも卑屈に、そして傷ついていってしまうんです。だからまた殻に閉じこもり、孤独に陥るという負のスパイラルが無限ループするんですよね。
こういった周囲との温度差も、本当に辛いしもどかしい。
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不妊治療の痛みや愚痴を書きなぐる日々

治療中から感じた気持ちを、自分の中で整理するため、気持ちを吐き出すためにいつもこんな風に書きなぐっていました(いったい何十枚と書いたことか・・・)。
そんな、日々書きなぐることで分かるのですが、不妊治療の辛さって突き詰めると
- 先が見えない医療だということ
- 加えて治療費が高額だということ
この2つに要約されるんじゃないかなと思うんですよね。
先が見えないから、
なんで私なの?
努力しているのになんで?
あの子と何が違うの?
と、もどかしくて悔しくてやりきれない気持ちになってしまう。
加えて、超高額な医療費がのしかかって
こんなにお金を払ってるのになぜ?
いろんなものを犠牲にして頑張っているのにどうして?
と、不条理さと虚無感に苛まれるんですよね。
「頑張って結果が出るのなら」
「せめてもう少し家計に優しい費用だったら」
といつも不毛な空想をしていました。
不妊治療で変わった私の考え方
不妊治療という経験をして感じたことをつらつらと書いてみました。
卒業した私がこんなことを書くことに違和感を抱かれる方も少なからずいらっしゃるかもしれません。もし嫌な気持ちにさせてしまったらごめんなさい。
ただ、私たちは本当に辛いこの経験を通して人生が変わりました。考え方や生き方が変化してきました。
妊娠は本当に奇跡だし、もっと早い段階で知っておくべきことも多くあるし、孤独なこの悩みの共有の方法だってまだまだアイデア次第で沢山あると思います。
この辛い経験を経て「辛かったね」ではなく、何か少しでもこの課題に対してできることはないかと、これまでずっと考えてきました。
もちろんこのブログを立ち上げたこともその理由の一つにあります。
そんな風に思う中、昨秋NACに転院した頃からその思いはより具体性を帯びて強まっていきました。
私たちは今、不妊治療への理解を広く周知することの一翼を担えないかと本気で考えています。そしてそれを実現するためには、自らがまず起点になることで、小さくとも行動することで、実現できるのではないかと思っています。
つづく↓

妻

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