高度不妊治療にステップアップして早5ヶ月。
その間、いつも頭の片隅で気になっていたことがある。
それは・・

(こそだてハックより引用)
高度不妊治療のリスク、
とりわけ顕微授精のリスクのことだ。
本当は前回の初移植前に、このことについて自分の考えを書いておこうと思ったのだが・・
結論がまとまらず、そして考えているうちにあっという間に陰性という結果が出てしまった。
なので、今回改めて。
当事者以外による顕微授精のリスクについて取り上げた記事は多くあるが、当事者がそのリスクについて深く考える記事はあまり見たことがない。
自分自身の不安について切り込むのは勇気のいることだが、順を追って自分なりに考えていきたいと思う。
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目次
顕微授精とは?
まず、顕微授精についておさらい。
顕微授精とは生殖補助医療のひとつで、
体外に取り出した卵子に、極細な針で人為的に精子1匹を注入させ授精を試みる方法のこと。
体外受精がシャーレの中に精子を泳がせ、ある意味「自然に」出会わせるのに対し、顕微授精は精子一匹を選別し「人為的に」直接卵子に注入することが特徴だ。

この技術に世界で初めて成功したのはベルギーで、1992年顕微授精による妊娠・出産が報告される。
日本での成功例はその2年後の1994年。
約24年前、私が小学生のころだ。
ARTの歴史 | 海外 | 日本 |
---|---|---|
体外受精 | 1978年 (イギリス) |
1983年 |
顕微受精 | 1992年 (ベルギー) |
1994年 |

その後、顕微授精の技術は世界に広まっていくのだが、欧米では近年、顕微授精で生まれた子供の先天異常率が自然妊娠に比べて高いことを述べた論文が複数発表されているそうだ。
世論としては「顕微授精と出生児の安全性」に関してはまだまだ不明な点が多いと言える。
そう、顕微授精の歴史はまだまだ浅いのだ。
日本での顕微授精実施件数

現在日本では体外で受精させる高度不妊治療のうち、実に半分以上が顕微授精だそうだ。
2015年、日本で行われた(顕微授精を含む)体外受精は約42万5000件。
そのうち半数が顕微授精だと考えると年間約20万件に上る。顕微授精で生まれた赤ちゃんは2.5万人/年とのことなので、年間総出生児数のうち約40人に1人にあたる計算になる。
顕微授精になる条件やリスクについて
顕微授精が適応される条件は?
顕微授精は基本的に
「顕微授精以外の方法では妊娠の成立が見込めない夫婦」
が対象となる。
具体的に言うと、
- 重度の男性不妊症
- 体外受精で受精が困難
- 原因不明不妊
といったケースが挙げられる。
顕微授精のリスク
調べてみると、一般的に顕微授精のリスクは概ね以下の2点と言われているようだ。
- 機能異常の精子が受精するリスク
- 子供に男性不妊が遺伝するリスク

①機能に異常のある精子が受精してしまうリスク
顕微授精は、直接卵子に精子を注入するため体外受精(ふりかけ式)に比べ受精率が高い。
しかし直接卵子に注入するがゆえに、本来自然の受精競争に勝ち残る能力を持ち合わせていない精子までも受精させてしまうリスクがあると言われている。
つまり、顕微授精については高い受精率も重要であるが、受精の前段階における精子選別の技術が十分に伴っているかも重要なポイントと言える。
十分に精子を選別できているかという懸念から「機能に異常のある精子でも受精してしまうリスク」があるとされるようなのだ。
②子供に男性不妊が遺伝するリスク
夫が重度の男性不妊だった場合、顕微授精で授かった男児には男性不妊が遺伝する可能性が指摘されているらしい。
その理由は、男性不妊により本来受精する能力がない精子でも受精が可能となることから、性染色体に異常のある夫の遺伝子が引き継がれ父親と同じ先天的な不妊症が現れるかもしれないということだった。
しかし、現在顕微授精で誕生した人たちの最高齢は現時点で26歳であり次世代の出産報告はまだ確認できていないらしく、現時点では明確な結論は出ていないようだ。
顕微授精が生まれて26年。統計を取るにも十分な量のデータが揃っていないといった側面もあるのかもしれない。
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私たちの顕微授精
NAC日本橋での顕微授精(IMSI)
私達は2017年9月からナチュラルアートクリニック日本橋に通い、高度不妊治療を受けている。

初診で先生から下された診断は「超高倍率顕微授精(IMSI)」で、ふりかけの体外受精を希望することはそもそも叶わなかった。
改めて、先述の2点のリスクを私たちの顕微授精に当てはめて考えてみる。
①機能に異常がある精子でも受精してしまうことがあるリスク
NACでは、超高倍率装置を用いてより正確に精子の状態を確認し選別を行っている。
顕微授精の種類 | 倍率 |
---|---|
ICSI | 400倍 |
IMSI | 6,000倍 |
高倍率下での精子の捕獲・選別は、時間がかかることによっての悪影響も懸念されるため熟練の技術が求められる至難の技だそうだ。
その熟練の技術をNACは有していると説明会で寺元先生はおっしゃっていた。
また、夫の初診時の検査も凄まじく細かかった。
採血によるホルモン値はもちろん、その日に無作為に抽出した206匹の精子のうち「ベスト30」をひとつひとつ詳しく解説↓


診察室では高倍率にアップされた精子の動画も見せてもらうことができた。
この一連の流れから、NACの精子選抜・管理レベルは相当に高いというのが率直な感想だ。
よって、NACの精子選別・品質管理は確立されており、「機能に異常がある精子でも受精してしまうことがあるリスク」は限りなく低いと信じている。
もちろん、精子選別が完璧に行われるからといって必ずしも染色体異常がある精子をはじくことが出来るとは言えない。なぜなら染色体は精子や卵子の外見から判断することはできないからだ。
しかし、染色体異常の精子を除外することはできないからこそ、人為的に排除できるリスク=形質については最新鋭の機器や、熟練の技術者によって可能な限りリスクを減らしていると言える。
②将来、子どもに男性不妊が遺伝する可能性のリスク
初診で夫は、寺元理事長より「男性不妊」だと診断された。
精子の正常形態率が非常に低く、自然妊娠は極めて厳しいだろうと。
その結果、体外受精よりも授精率の高い顕微授精(IMSI)の適用となった。
このことは、今まで男性不妊を少しも疑っていなかった私たちにとって非常に衝撃的だった。
NACは一般的な「精液検査」とは異なり、精子ひとつひとつの詳細まで調べあげる「精子検査」なので、今まで気付けないことにも気付ける超精密検査なのだ。

ただ、NACに通院している方々のブログを拝見する限り、NAC初診でほとんどの男性が「男性不妊」と診断されているように見受けらる。
また、これだけ厳しい結果だったのにも関わらず、採卵当日に採取された精子の質については言及はなかった。
そこで私たち夫婦が考えたのは、
NACの精子検査はあえてかなり厳しい基準を設けている
のではないかということ。
(※あくまで個人の考えです)
仮にそうだとした場合、その目的はきっと以下のようなものではないかと。
- 「投薬」に頼らない「自然周期」だからこそ、薬の力を顕微授精という「研ぎ澄ました技術」でカバーするということ
- 卓越した技術を持って合理的かつスピーディに妊娠に導くということ
- どうしても女性が主役になりがちな不妊治療において、男性も「当事者」だということを強く認識させる病院側の配慮
このように私たちは感じている。
つまり、夫はNACで言えば「男性不妊」ではあるけれど、決して病名がつくような男性不妊ではないのだと思う。
NAC式の最短レールに乗せるため、あえて厳しい基準で検査していると。
それに加え、NACの精子選別技術を持ってすれば(例え病名のつく男性不妊であっても)限りなく形態の良い精子を選んでもらえるということ。
このことからも、NACのようなクリニックであれば将来子どもに男性不妊が遺伝する可能性のリスクはゼロとは言えないが、限りなく低いのではないか?と思うのだ。
高度不妊治療でのクリニック選びは慎重に
上記のように、高度不妊治療には高い技術力と管理能力が求められる。
私たちは現在NACに通っているので上記のように考えたが、決してNACを推しているわけではない。
ただ高度不妊治療クリニックを選ぶときは、夫婦で説明会に参加し、話し合い、納得して治療に進めるよう慎重に決めることが重要であることは間違いないと思う。
高度不妊治療への世間の目線
しかしどんなにリスクについて真剣に考えたところで、自然妊娠した人から考えたら顕微授精なんて
「考えられない!」
と思うだろうか?
人間のエゴ?
神の領域?
正直に言うと、私も昔は
「体外(顕微)受精までして・・」
と思う気持ちがあった。
不妊に悩み始めてからだって、
「自分はそこまでするのかな?出来るのかな・・」
と、ついこの間まで思っていた。
体外・顕微授精はやっぱりものすごい事だという印象が強く強くあった。
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「夫との子が欲しい」この思いこそが最大のパワーだと思う
だけど
どんなにタイミングを頑張っても、
人工授精を頑張っても、
体質改善を頑張っても、
長きにわたり授かることができず悩み苦しむと、
それでも夫との子を持ちたい
という自分の強い気持ちに改めて気付かされる。
「夫との子を持ちたい」という強い本能が、心理的ハードルが高かった高度医療に向かう気持ちを突き動かす。
そして可能性があるならばと精神的・肉体的な痛みを伴う治療に立ち向かい、結果が出るという約束があるわけでもないのに高額な治療費を払う。
私は最近思う。
リスクうんぬんよりも、
この本能のパワーが一番すごいのではないだろうか?
と。
強く愛のある意思でなければ、どうして皆こんな勇気のある挑戦ができるだろうか。
この思いこそリスクを上回る、尊ぶべきすさまじいパワーだと思うのだ。
胡散臭くなってしまうが、この「子孫を残したい」という本能こそこの地球が存在する宇宙のパワーと言ったって過言ではないと思う。
人生においての「リスク」という考え方
もちろん、顕微授精にはまだ解明されていないリスクも多いのだろう。
なにしろ顕微授精の歴史自体がまだまだ浅く、老後を迎えた方も一人もいないのだから。
それは理解ができるし、頭の片隅に置いておくべきことなのだろうと思う。
だけど自然妊娠だってリスクはある。
人工授精にだってリスクはある。
もっと言えば「生きている」事だってリスクだ。
安全でいたければ外出もできないし、食べるものだって吟味しなければならない。
そもそも世界はリスクで溢れている。
複雑で不確実な世の中で「生きる」こととは、「選択していくこと」とも言える。
そしてそうやって選択し生きていくということは、いつだってリスクと隣り合わせなのだ。
私がいつか顕微授精で子を授かり、なんらかのリスクに遭遇した時、
「あの時、顕微授精を選んだから・・」
と思うだろうか?
今なら、「思わない」と言える。
不妊治療において後悔しない未知を一歩ずつ進んできていると言い切れるし、そもそも何が起きても「顕微授精だから」と断定することは出来ない。
いつ、どこで、何が原因で、何が起こるかなんて、人生においてほとんどの場合わからない。
とはいえ、私とは違う人格、私とは違う人生を全うする権利のあるその子の親として、何があっても責任を持てるだろうかと悩む気持ちがあるのも事実だ。
けれど何が起きても、強い本能とパワーで「夫との子が欲しい」と突き進んだ気持ちを大切に、顕微授精のせいだと決めつけるのではなく、ひとつひとつ愛を持って対処していきたいと思うのだ。
この本能のパワーがリスクへの不安を和らげてくれる。
そんな風に思えるのは自分たちのエゴなのだろうか?
仮にそうだとしてもそれをジャッジできるのは、他ならぬ自分たちしかいない。
改めて、自分たちの行動に自信を持って堂々と治療に臨みたいと思う。

妻

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はじめまして、ぽっこさん、今年からNAC日本橋に通い始めた、ぱるです。
他院で採卵1回、移植3回し、けいりゅう流産を一度経験しました。NACの評判をききつけ、転院しましたが…
前日移植後、培養士から説明があり、衝撃の事実が発覚!融解時にダメージがあり、12に分割していた胚の半分以上がバラバラになり、一部しか残らなかったけど、理事長の判断で移植することになったと言われ、唖然。なぜ、移植する?
3日目、7日目で理事長に言われたのが、小さくなったから良くなかったですよ!だっら、移植しないで欲しい!
結局、7日目にかすかに数値が出ましたが、0になるのを待つことになりました。移植費用は返金されますが、返金すれば良いと考えているのが許せない。私と同じような思いをしている人は沢山いるんだろうなぁと思います。
今思うと、転院が正解だったのか、疑問です。
卒院者の出産率などを公表して欲しいです。
何かとベールに包まれている気が…
愚痴になってしまい、すみません。
卒院を目標に頑張りましょう!
ぱるさん
ぱるさんはじめまして!せっかくコメントいただいたのに、お返事おくれて申し訳ありません(><)
ぱるさんもNACなんですね(*^-^)
うんうん、確かにNACの移植で融解不良という結果はブログなどで少なからず見受けられる気がしますね。
私は高度不妊治療がNACでしか経験がないのですが、融解不良というのはほかのクリニックではないことなんですかね??
でもどちらにしても、大切な卵、大切な時間、バラバラの卵で移植はとてもショックですよね。それも移植後にその卵の状態を聞いたらなおさらですよね。。
あと卒院者のデータはほんとNACに限らず全てのクリニックに発表してほしいです。高度は未だに患者側からはわからない部分が多すぎます。これから不妊に悩む方たちのためにももっともっとデータが開示されていくことを望むばかりです。
治療はときに本当に辛いけど、、頑張りましょうね(*^^*)