男性にとっての不妊治療の第一歩といえば、精液検査ではないでしょうか?
精液検査とは、読んで字のごとく精液を調べる検査のこと。
一般的に精子の、
- 量
- 濃度
- 運動率
- 前進運動率
- 正常形態率
などを検査します。
採精〜提出方法は、
・家で採精し持参するパターン
・病院内で採精するパターン
と2通り。
採精方法は本人が本人による独自の手法で採取するのが一般的です。
私たち夫婦はこれまでに計8回の採精をしています。そんな経験もふまえ、これまでの精液検査の内容やそれらを通して感じたことを今一度サクッとおさらいしてみようと思います😀
本記事はこれから不妊治療を開始する・開始したばかりのご夫婦を念頭に余白を残したライトなタッチで綴っています。したがって治療ステージやご自身の状況によっては意図せず不快な思いをさせてしまう可能性がありますこと、あらかじめご留意願います。
目次
検査前の禁欲期間は?
禁欲期間については諸説あるようですが、2017年9月に参加したリプロダクションクリニック東京での説明会によると、過剰な禁欲期間をもうけることはかえって悪影響とのことでした。
禁欲は2〜3日くらいで構わないし、なんならなくても良いくらいの勢いでしたね。溜めすぎによる活性酸素の発生によって逆に精子がダメージを受けるというのがその理由の一つでした。
従い、逆に言ったら個人的には「禁禁欲期間」を意識した方が良いように思います。積極的に開栓しましょう。
採精室ってどんな感じ?
これまで、
- 総合病院婦人科
- はなおかIVFクリニック品川
- ナチュラルアートクリニック日本橋(NAC)
で精液検査を受けてきました。総合病院での検査は自宅で採精し持ち込むスタイルでしたが、その他2院はほぼ院内採精でした。
院内で採精をする場合、「採精室」という個室に通されます。
これから検査をされる方は、どんなところなんだろう・・と不安に思うかもしれません。自分も初めての時はそれなりに緊張しましたので。
そんな採精室はこんな感じです!
はなおかIVFクリニックの採精室

いわゆる漫画喫茶のような、横幅が狭いブースのような作りでした。
意図しての作りなのかどうかわかりませんが、側方視野を遮断し前方に視点を集めることで、結果としてより採精に意識を集中させる仕掛けなのかもしれません。まさに草むらから獲物を狙う肉食獣かのごとく没入できる作りだと勝手に解釈しています(いや多分そんなことはない)。
ちなみに、はなおかIVFは自宅で採精して持ち込んでもOKでした。
NAC日本橋の採精室

こちらはソファースタイルで、はなおかIVFに比べると幅も取られていてリラクゼーションを意識した?レイアウトでした。この構造は独創性に富んだ採精スタイル(流派や流儀)の方にもある程度対応できる、多様性を意識した作りなんじゃないかと(いや多分そんなことはない)。
多少無理はあるものの、涅槃像スタイル等も実現可能な余地を残していますね(私はしません)。
NAC日本橋は院内採精のみで自宅採精はNGでした。
なお、両院とも採卵日の受精実施に備えた精子の凍結対応は可能です。
採取した精子の提出方法
採精後の提出方法はクリニックによって様々。
はなおかIVFでは、「戦場」に採精カップを置き施錠して退出後受付に鍵を渡すという流れでした。あとで培養士が部屋からカップを回収してくれるので、カップを挟んで誰かと顔を合わせるということはありませんので、恥ずかしい思いはしなくてすみます。
ただ、しいて言うなら鍵を受付に渡す際、受付嬢の瞳の奥に「嘲笑」が浮かんでいるように見えるという勝手な被害妄想に一瞬さいなまれるくらいです(←考えすぎもいいとこ)。
逆にNACはカップを培養士へ直接手渡します。ブツの受け渡しの際にカップの「白いブツ」と、運んできた自分の身元を免許証等で確認されます。
ガン見です。

・・・ポーカーフェイスで乗りきりましょう。
この身元確認&受け渡し業務にこそペッパー君を従事させてほしいものです。

(心なしかペッパー君が男性の「シンボル」に見えてくる・・)
話は変わりますが、2018年1月〜3月に放送していた不妊治療ドラマ「隣の家族は青く見える」でも採精室の様子が流れましたね。

大器(松ケン)が初めて採精室に案内され、手順の説明を受けているシーンです。
彼のリアクションを見て、だいたいの男子はこんな感じだろうなと少しニヤけてしまいました。
採精室にはどんなツールやコンテンツがあるの?
公共の場で閲覧している方もいらっしゃると思うので、あえて「ツール」や「コンテンツ」と表現させていただきます。お察しください。
これまでの採精室にあったツールやコンテンツは
- (古めの)ERO本
- (↑の付録とおぼしき)ERO DVD
が主でした(TENGAとかVRとかは残念ながらありません)
またクリニックによっては、
- 制限時間がある
- ヘッドフォンがない
- 壁が薄い
というケースもあったりして、
- 時間的制約によるコンテンツ選抜に十分な時間を割けない
- コンテンツの音漏れが怖くて集中できない
といったことも想定されます。
よっていらぬ不安を取り除き採精に集中するには、Myツールとコンテンツを持参するというのも一つの手としてオススメです。
フリーWiFiはないところが多いと思うので、ダウンロードしていくとより安心でしょう。
採精カップってどんな形?

こんな容器です。
個人的な不満なのですが、このカップの形状っていろいろ難しいんですよね。まぁ不満というか改善の余地あるなって位のレベルではありますが。

松ケンも同じように
「この的に命中させんのかよ」
と不安そう(と勝手にアテレコ)
何が難しいって、的が小さいし、こぼしちゃいけないからあんまり間口を下とか横にしたくないし、命中させるには、射出角度にも細心の注意が必要だし、もっというとその日の射出力や量などの様々な要因によってその難易度も変動するわけで、まさに東京フレンドパークで「パジェロ」を狙いに行くくらいの集中力と緊張感というか、その構%(U#γ#(%0)αβ&!%!’ND’%!・・・
どうかこの形状を再発明してほしいものです。。
WHOの精子基準値って何?
「誰の精子基準値?」
と、とぼけているわけではありません。
フー?ではなく、ダブルエイチオー(世界保健機関)が定める世界的な精子の基準値です。
現在WHOが設定している精子の基準値は以下の通り。

この基準は10年単位で改定されるようです。
この数値は3大陸8カ国で12ヶ月以内にパートナーが妊娠した夫の精液から算出したものであり、かつこれは平均値ではなく、全数値を高低順に並べ100等分した下から5番目の数値。
つまり基準の「下限値」というわけです。
下限値と聞くとドキっとしてしまいますが、この基準がイコール妊娠可否を決める決定的なものではなく、あくまで治療方針を決める一つの目安。さらに医師曰く、この結果は体調にも左右されるようです。
現に自分も基準値内→基準値外と大きく変動したことがありましたし、こういうことはよくあるようです。したがって楽観はできませんが、一度の検査で過剰に心配しすぎることもなさそうです。まさに禍福は糾える縄の如しですね(使い方)
はなおかIVFでの検査結果はこのような形で渡されました(この時は人工授精の為の採精につき右側が「調整後所見」と記載されていますが、通常はこの欄にWHO基準値が併記されているはずです)

また、NACでは超高倍率な顕微鏡や最新機器を用いて、更に厳しく形態や数値などを解析する「クルーガーテスト」というものを実施しています。
多くの猛者たちがNACのこのクルーガーテストで鼻っ柱を折られます(私も折られた一人です)

詳しくはこちらの記事を↓
なおこの検査基準を不服として自分を正当化しようと必死に書いた記事はこちら↓
卵子と精子の生存期間

卵子の平均寿命が24時間前後に対し、精子は膣内で平均72時間(2〜3日)ほど生存するとされています。
精子は意外にタフガイです。この精子のタフガイさを利用して受精の確率を高めましょう。
どう利用するかというと、
排卵日2〜3日前からタイミングを取る
という作戦が有効です。
新型iPhoneを店舗前で数日前から長蛇の列をなして待つかのごとく・・
成田空港でハリウッドスターを黒山の人だかりで埋め尽くすかのごとく・・
事前に大量のファン(精子)で待ち伏せしておくことこそが、タイミング法においては理にかなった戦略となります。
つまり、排卵2〜3日前から精子を送り込み、卵管膨大部にいかに多くの生きた精子を待機させるかが重要といえます。
精子と精液について
精子が重要なのはもちろんですが、精液ももちろん重要です。精液は、精子と精漿(せいしょう)で構成されていて、この精漿は、
- 前立腺液
- 精嚢分泌液
から主に構成されています。
前立腺液は精子を守る役割があり、精嚢分泌液は精子のエネルギー源の一つであるようです。
それぞれの役割を例えるならば
- 前立腺液→精子のウェットスーツ
- 精嚢分泌液→精子の酸素ボンベ
のようなものかと。

精子のために気をつけること
精子は増えることのない卵子と異なり、常につくられるもの。
そしてその量や質は、生活習慣からも良くも悪くも影響を受けるとされています。
以下は2017年9月リプロダクションクリニック東京の説明会で配布された資料をもとに作成した「精子に良いこと18ヶ条」です↓

こういった点を気をつけることが精子の量や質の向上に良いとされています。まずもって禁煙はマストかと。
なお「育毛剤は飲まない」とありますがこれはおそらく「発毛剤を飲まない」と言うことを指していると思われます。育毛や発毛を促す成分を「服用」することが精子にとっては悪影響を及ぼすということかと。
NACで自分の精子をボロカスに言われた際にも「発毛剤飲んでない?」と聞かれました。やはり発毛や育毛に関する成分の服用は精子にとって良くないというのは不妊治療界での共通認識なんでしょう。
不妊原因の半分は男性にあり
日本産科婦人科学会HPにも記載されていますが、不妊の原因は夫婦双方にその可能性があります。
ですが自分も含め、男性って
「出ているから問題ない」
って思いがちではないでしょうか。
無意識に「物体の有無」と「質の問題」を一緒くたにしているように感じます。事実自分がそうでした。
実際には量や形態、運動率などなど多くの所見から判断されるべきものであり、染色体異常まで含めると「出ている」だけで問題ないと考えるのは非常にナンセンスです。
今は「Seem」という自宅採精キットもある時代
たとえば、現在「#大人の性教育」という取り組みを行い、主に男性の不妊治療の意識改革や現状を変えようと活動されている吉川雄司さん(@UG_0117)が勧める「Seem」を活用するのも一つの手段。
このキットは自宅で採精してその場で測定することが可能なようです。
#Seem を使って精子の濃度と運動率を測るはなし。妊活に向けて男性側ができることは何か、講演中です!#大人の性教育 pic.twitter.com/qFdh1cdWkV
— 吉川雄司@「#みんなの取り組み」制作中 (@UG_0117) 2018年9月15日
これを利用してまずは自宅で気軽に採精&測定するのも手で、男性に当事者意識をもってもらう有効な手段だと思います。
測定できるのは「濃度」「運動率」の2点のようですが、それでも自宅で測定できるなんてすごい時代ですね。
ただ個人的に一点懸念するのは、クリニックでの精液検査を嫌がっている旦那さんの場合、もしもその自宅での測定結果が良かった際、
「ほら、俺は大丈夫じゃん。だから検査しなくていいよ」
という風に変に自信を持たせてしまうと逆効果。これを盾に籠城を決め込まれては元も子もありません。
そもそも旦那さんが嫌がる理由は「恥ずかしい」「めんどくさい」というのもあると思いますが、やはり「なんか怖い」って気持ちがあるんじゃないかと思います。
「悪い結果が出たらどうしよう」と。
ですので、旦那さんへは事前にこう諭しておきましょう。
「これで結果が良かったら、クリニックでの検査も安心だね♡」
と、クリニックでの検査前にウォーミングアップ的な位置付けとして話を進めましょう。結果が良ければ褒めに褒めてクリニックにスキップして向かいましょう。
逆に結果が良くなかった場合には、
「これでわかるのは濃度と運動率だし他の項目は良いかもよ!だからクリニックで本格的な検査をして、しっかり診てもらおうよ!」
と前向きに促し不屈の闘志に火をつけ、原因を一緒に解明しようよ!と、ロッキーのテーマをかけながら気持ちを奮い立たせて共にクリニックへ向かいましょう。
男って論理的に考える傾向が高く、それゆえ悪く言えば「納得する理由がないとなかなか行動に移せない」という部分もあると思います。だからこそ、こういったワンステップを挟むことでクリニックに行く理由や動機付けを論理的にできるのではないでしょうか(上記例は男性側が非協力的な場合であり、また全ての男性に当てはまるとは言えません)
まさに「知るところから、はじめよう」ということが大事ですね。
東京都は助成金も出ます
一般不妊治療には精液検査も含まれます。
一般不妊治療や高度不妊治療については以下表にておおよそのイメージをお掴みください。

タイミング法や人工授精を含む不妊治療のことを「一般不妊治療」と言います。
東京都はこの一般不妊治療や不妊検査に上限5万円まで助成金を出しています。詳しい検査項目は以下の通り↓
対象の検査 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
不妊検査 | •精液検査 •内分泌検査 •画像検査 •精子受精能検査 •染色体、遺伝子検査 等 |
•超音波検査 •内分泌検査 •感染症検査 •卵管疎通性検査 •フーナーテスト •子宮鏡検査 等 |
一般不妊治療 | •待機療法(タイミング指導) •薬物療法 •人工授精 等 |
東京都の一般不妊治療助成金の詳細についてはこちらの東京都福祉保健局HPで確認下さい。
また以前に東京都の一般不妊治療助成金について書いた記事はこちら↓
対象要件にあてはまれば検査代などの多くを助成金でカバーすることが可能です。
また高度(特定)不妊治療については全国で助成制度を設けていますし、男性不妊への助成もあります。以下記事を参考にされてください。
ちなみに来年からは男性不妊への助成金も増額される予定です(内容は東京都の助成制度が主になります)↓
男性の高度不妊治療の助成金も、2019年度より初回15万円から30万円に引き上げられるようです。
年齢制限無し(女性は年齢制限あり)
恐らく、精巣又は精巣上体から採取するための手術が該当するものと思われます💡男性不妊治療の助成、初回30万円に引き上げ:日本経済新聞 https://t.co/tlFeWv4BP3
— ぽころぐ@不妊治療を身近な選択肢に (@pocoloooog) 2018年9月29日
まとめ
- 不妊の原因の半分は男性に起因
- 精液の測定は自宅でもできる時代に
- 精液検査は助成対象の地域もある
と、その意義は勿論のこと、対処できる環境も整ってきています。
加齢と共に妊孕性は下がっていくことから、夫婦として挙児を望み、かつ1年以上の妊活で授からないのであれば不妊治療を行う医療機関の戸を叩いて欲しいと思います(個人的には一刻も早く子を望むのであればすぐに医療の力を借りることを検討して良いと思います)
精液検査を行うことで当事者意識もより強まると思いますし、そうならなくとも逆に言えば不妊治療において男性が行うことは重篤な男性不妊を除き、採精くらいです。
治療における男性側の負担は多少の精神的苦痛(羞恥心など)は伴うでしょうが、一連の行為は肉体的苦痛(TESE等の場合を除く)を伴うものではなく、女性の精神的・肉体的苦痛や負担に比べればその多くが軽微なものであると実体験からそう感じています。
もちろん時間の確保や仕事との調整が難しい部分もあるかと思いますが、自宅での採精や精子の凍結が可能なクリニックもあるので絶対に対処できないものではありません。
そして時間の確保は女性も同様であり、かつ通院頻度や長時間の診察待ちを考えれば、その難しさは女性の方がはるかに大変であることを忘れてはなりません。
ですので、共に挙児を望んでいる中で不妊治療を一つの選択肢として検討を始めた際には、上述の通り男女の治療におけるインパクトの比較も参考の上、是非とも男性側も積極的に協力してほしいと思います。

というか「協力する」という表現は違いますね。不妊治療は夫婦二人で共に向き合うもの。同じ目線で取り組むべきです。そうでないと途中、ささいなことで必ずモメます。
繰り返しますが、不妊治療は夫婦二人で取り組むものです。共に乗り越える意識を持つことが何より大事です。
最後は少し上から目線の説明に受け取られるかもしれませんが、男性の不妊治療における精液検査を切り口に、実体験に基づく感想を書いてみました。
本記事が不妊治療を開始される方、開始した方に参考情報という形で少しでもお役に立てれば幸いです。

夫

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