ART(体外で受精させる技術)で生まれた子供の数は、日産婦が集計を始めた1989年から2015年時点までで、累積482,627人となっています。
ART出生児は年々増加していて、その伸び方には目をみはるものがあります。
少子化が叫ばれて久しいですが、その中で伸びているART出生児はどれくらいの割合を占めるのか気になったので調べてまとめてみました。
結論から言うと、少し乱暴ですが
不妊治療って少子化の波を結構な割合でブロックしてんじゃね?
と言えそうです。
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目次
体外受精で生まれた子供と全国出生児数の推移を比較
2005年〜2015年の10年間の
ART出生児数の推移👶🏻
全国出生児数の推移👶🏻を、05年の各数値を0として比較。
分かったことは、ART(体外受精)が少子化の波を約36%ブロックしてるということ。
ARTでこれならタイミング法や人工授精含む不妊治療全体ではその貢献度は更に広いのではなかろうか!? pic.twitter.com/jZiF3Lk5rm
— ぽころぐ@不妊治療を身近な選択肢に (@pocoloooog) 2018年8月10日
先にまとめたものを。

全国でみると年々出生児は減っています。
2015年の全国の出生児数は、2005年と比較すると年間5.6万人ほど減少。
一方体外受精で生まれた子供の数は急激に伸びています。2005年に体外受精で生まれた子供は2万人弱。2015年は3.1万人ほど増えて5万人の大台を突破しています。
もし仮に、体外受精という技術がなかったら、2015年は5.6万どころか+3.1万の8.7万人の減少幅になるということです。本来8.7万人減少するのを体外受精の力によって5.6万人の減少にとどめていると言えます。
つまり少子化の波を約36%ブロックしているということかと(3.1万÷8.7万)。
一応2005年から2015年のデータを以下に載せておきます。
年 | 体外受精出生児数 | 全国総出生児数 | 体外受精出生割合 |
---|---|---|---|
2005 | 19,112 | 1,062,530 | 1.8% |
2006 | 19,587 | 1,092,674 | 1.8% |
2007 | 19,595 | 1,089,818 | 1.8% |
2008 | 21,704 | 1,091,156 | 1.9% |
2009 | 26,680 | 1,070,035 | 2.5% |
2010 | 28,945 | 1,071,304 | 2.7% |
2011 | 32,426 | 1,050,806 | 3.1% |
2012 | 37,953 | 1,037,231 | 3.7% |
2013 | 42,554 | 1,029,816 | 4.1% |
2014 | 47,322 | 1,003,539 | 4.7% |
2015 | 51,001 | 1,005,677 | 5.1% |
※追記(2019.5)
2016年のデータが公開されたので更新しました↓

年間総出生数と、体外受精で生まれた年間出生数の最新データ(2016)を更新しました。2005年を起点に2016年までの12年間のそれぞれの推移=増減を比較しています。
(※画像転載可)
#不妊治療対策で日本生き返るかもよ pic.twitter.com/tPUB1aMkTz
— ぽころぐ/不妊治療を身近な選択肢に (@pocoloooog) 2019年5月29日
いまや体外受精で生まれる子供は20人1人
先ほどのグラフからもわかる通り、体外受精で生まれた子供はわずか11年で2万人弱から5万人強と約3倍にまで急伸しています。
2005年には50人に1人だったのが、2015年には20人に1人となっている計算です。
自分の世代に置き換えれば、体外受精で生まれた友達はクラスに2人はいることになります(1クラス40人前後の時代)。

直近のデータによると20人に1人から18人に1人になっているようです。
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なぜこんなに体外受精での出生児数が伸びているんだろう?
その前にART(生殖補助医療=体外受精/顕微授精による不妊治療の総称)の歴史を以下ご覧ください。

初めて体外受精で生まれた方(ルイーズブラウンさん)は今や40歳になっています(2018年現在)。そう考えると半世紀近い歴史があるんですね。
話しを戻します。
世は少子化の中、なぜ体外受精で生まれた子供がこれほど増えているのでしょう。
この現状を自分なりに考えると、
- 技術の進歩
- クリニックの合理化が加速
- クリニックの増加
- 不妊治療の認知度の広がり
- 助成金の拡大
などが挙げられるんじゃないかな。
技術の進歩
技術の進歩はやはり凍結技術によるところが大きいのではないかと。
新鮮胚移植も良い点があると思いますが、凍結することで子宮内膜との同調をより狙えるようになったことで妊娠率が上がったと認識しています。これにより多くの治療周期を行えるようになったと思います。
もちろんそれ以外にも多くの技術の進歩や革新があり、日々アップデートされていっているでしょう。
クリニックの合理化が加速
技術の進歩によって提供できる医療レベルもあがり、また近年ではITの活用などで効率化、合理化が加速しているのだと。
それによって伸びゆく需要の取りこぼしも減っているのかな。
クリニックの増加
1990年には体外受精(ART)が実施できる施設は全国に156しかありませんでした。
その時の体外受精による出生数は1,200人。
全出生児数に占める割合はわずか0.09%と、2015年の5.1万人と比較すると25年で42倍にも増えたことになります。
ではクリニックも同じように25年で42倍になったのでしょうか。
いえ、その増加率は4倍弱ほど。
これを言いかえれば、1クリニックあたり25年で10倍の治療周期に対応できることになったと言えます。
その背景は、やはり技術の進歩含めたクリニックの合理化の加速なのかなと。
そう思う理由は直近の10年間(2005〜2015年)をみればさらに一目瞭然です。
年 | CL数(日産婦登録) | 全国総出生児数 | CLあたりの出生児数 |
---|---|---|---|
2005年 | 641 | 19,112人 | 30人 |
2015年 | 607 | 51,001人 | 84人 |
比較 | 94% | 2.6倍 | 2.8倍 |
むしろクリニック(CL)数は減ってるのにクリニックあたりの出生児数が増加しているのは、やはり技術の進歩と合理化によるものではないかと思います。
もしくは昔は供給が需要を大きく上回っていただけで、増えたのではなく、今が適正なバランスだったりして?
不妊治療の認知度の広がり
技術の進歩や革新
↓
技術のハードルが下がる
↓
知見がたまっていく
↓
医療従事者の裾野が広がる
↓
クリニック数増える
↓
人目につく(広告打つ)
↓
通院者増える
↓
以前より身近になる
という感じで認知度が広がったのではないでしょう。
助成金の拡大
近年、国や都道府県、市区町村が不妊治療に対する助成金を増やし始めています。
個人的にはこの要因って結構大きいんじゃないかな。現状国としては年間156億くらい割いています(2016年時点)。
助成実績件数は10年前からすると10倍近くに増えているので、予算額も10倍位になったのかもしれません。このインパクトは大きいと思います。患者はもちろん、クリニック側にも。
まとめ
今後も不妊治療を求める方は増えていく可能性が高いと思います。
現在、どのクリニックも混雑は凄まじく、本当に大変な思いをされている方が多くいるのが現状です。
それを解消するためには、
- クリニック数を増やす
- 技術革新やIT活用で更に効率化を図る
といったことも進めばいいですが、もっと根本に対して対策を講じるべきだと考えます。
- 仕事との両立の困難さの解消
- 助成金拡充または保険適用を
といったことが必要になってくるのだと。
お金だけで解消を図るのではなく、現在の社会構造(働き方)を変えていくことが必要だと思います。
そのためにはまず現状の認知が必要であることは言うまでもないでしょう。
このデータを見る限り個人的には少子化への歯止めに少なからず寄与している部分もあるなと感じています。
ということで、微力ながら発信を続けていきます。

夫

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