↑の続き。
先日参加した「不妊治療と仕事の両立推進シンポジウム」
東京都のチャイルドプランサポート事業が「不妊治療と仕事の両立推進シンポジウム」を6/26(水)に開催。誰でも参加OK。
チャイルドプランサポートとは
→従業員が不妊治療と仕事を両立出来るよう雇用環境の整備を充実させる企業に奨励金を支給する事業。初回の平成30年度は93社に交付されたみたい。 https://t.co/1ZA2dYMUbW
— ぽころぐ/不妊治療を身近な選択肢に (@pocoloooog) 2019年6月20日
この中で特に印象的だったのが、
- サイバーエージェントの取組み事例
- 日経の治療と仕事の両立への興味深い洞察
だった。今回は上記下段、日経社の「不妊治療と仕事の両立」についての発表を紹介したい。
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目次
これからは真の健康経営が求められる
日経社は他の登壇者とは違い自社の制度紹介ではなく、これからの企業経営の人材戦略という観点からの不妊治療への関わりについて、少子化などの外部環境要因等を織り交ぜて、あるべき/なるであろう未来について語っていた。
その中でまずポイントとなるのは「健康経営」
健康経営とは
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
経産省では平成28年度に「健康経営優良法人認定制度」を創設している。その目的は、
優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。
なお、健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
というもの。
つまり健康経営とは、
「働く人たちをボロボロになるまで働かせて使い捨てるようでは今後企業経営として成り立たなくなるよね。企業は従業員に いかに長く、健康的に働いてもらうか を真剣に考えなきゃいけないね」
ということかと。
そしてこの健康経営によって得られる具体的メリットは大きく分けて以下の3点とのこと。
- 多様な人材が働ける
- 帰属意識(エンゲージメント)
→心理的安全性高まる - 人材採用で優位に立てる
それぞれをかいつまんで説明すると、
①多様な人材が働ける
これは、例えば病気や怪我で働けなくなる可能性のある人も支援することで働くことができる、というメリットなどを指す。
②帰属意識(エンゲージメント)/心理的安全性高まる
従業員が仕事に生き生きと向き合う度合いを示す「エンゲージメント」。これが高いと、主体的で前向きに物事に取り組めるようになると言われている。
そしてエンゲージメントを高めることの一つに「心理的安全性」の向上があり、こういった不妊治療支援制度など、社員の働きやすさを促進する制度を設けることが心理的安全性を高めるひとつの施策でもある。
③人材採用で優位に立てる
①②を実行することで、社外へのアピールにもなる。
「あの会社って人にやさしい会社だよね。働いてみたいな」
と評価され、人材採用戦略上においてのメリットもある。
またこういった健康経営が活発に行われ社員が健康に働いてくれれば、国としても(極端に言えば)、
- ちゃんと社会保障費を払ってくれる
- 医療費もかからない
というメリットがあるというわけ。
じゃあ、そんな健康経営がじょじょに浸透している中で具体的に今何をやっているかというと、そのほとんどが
おじさんのメタボ対策。
(……. ほぅ)
しかし、近頃は本当にそれでいいのか?という風潮が高まってきている。
対して、若い世代や女性に対してストレートに届くような施策をとっているかというと、
無い。
そんな現状を考えれば、今後不妊治療や妊活支援というのは狙い目であり、取っていくべき施策といえる。

人材不足と言われて久しいが、2023年以降は人材の「枯渇」が加速する
健康経営の狙いを突き詰めれば、人材不足への対策(だと思う)。
新規採用が厳しくなる中、これまでのような労働力を使い捨てのように消費することは経営上のリスクになるというわけだ。
そして現在の人材不足は序の口で、2023年以降は人材が「枯渇」するというのだ。
なぜ人材が足りなくなるのか?
ずばり少子化。
少子化が深刻化したのは、「1.57ショック」と言われた合計特殊出生率が戦後最低の1.57まで落ちた1989年と言われている。そしてその後も下降線をたどっている。
この1,57ショックの1989年以降に生まれた子供が、会社に入社するのは単純計算23年後の2012年以降。だから現在新卒人材が不足してきているのだそうだ。
すでに人材不足であるが2023年からはさらに深刻になるという。
それはなぜか。
実は1990年代でみると出生「率」は下がってはいるものの、出生「数」はほぼ横ばいとなっている(したがって23年後の2012年以降も同様に横ばいとなる)
しかし、2000年代に入ると出生「率」はもちろんのこと、出生「数」も年々明らかに減っているのだ。つまり2000年の23年後の2023年以降は顕著に人材が減るということになる。

※参考データ:Wikipedia「合計特殊出生率」
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人材枯渇時代において社員のエンゲージメントを高めることが非常に有効
そんな人材枯渇時代が到来した時、企業はさらに採用が難しくなることは自明。他社よりも優位に採れるような戦略をとっていないとどんどん苦しくなっていくことは間違いない。
そうなると、今いる人材をやめさせないことがおのずと重要になってくる。その為にはやめてもらわない為に支援をしていくことが必要で、その為の支援制度や取組みは以下グラフが示す通り近年増えてきている(会場で示されたグラフデータをもとに作成)。

年々妥結している数は増えてはいるが、言うてもまだ27社ほど。
ここで見るべきポイントは妥結ではなく、「要求」の推移。
めっちゃ増えていて、それだけ求められている証拠。この推移をみれば、今後もどんどんその求めは増えていくと思うし、呼応して導入する企業も増えていくことは間違いないだろう。
ある大手企業の女性管理職にインタビューして知った不妊治療の実情

日経のパネラーの方が不妊治療の問題があることを認識したきっかけは、以前に活躍する女性管理職が増えてきている現場を取材するということで、ある大手企業の40代半ばの女性管理職にインタビューを行った時のこと。
表向きは女性管理職がいつもどんな風に仕事をしているかという取材だったそうだが、不妊治療の問題を知るきっかけとなったある印象的な話があったそう。その内容はこうだ。
この体験談を聞いて 「結果的に不妊にしてしまっている一因は企業側にもあるのではないか」 と感じたそう。 そもそも日本の企業の人材の育て方は、欧米の若いうちからどんどんチャンスを与えて伸ばしていくというスタイルとは異なり年功序列式がまだまだ一般的。 まず20代は横並びで経験を積ませ、30代は激化する競争の中で役職を積み重ね、30代半ば〜後半あたりで課長あたりになってようやくひと段落つくというもの。 しかし、20代から30代半ばにかけてそんな競争をずーっと強いられているような職場環境では、女性は妊娠するタイミングを逸してしまう。つまり、女性が一番妊娠しやすい20代後半の時に会社から「会社に貢献できる人材になるように」とずっと言い続けられているわけだ。 その結果、高度な治療が必要になる女性が増えているとも言えるし、不妊の原因は個人の問題だけでなく企業にもその一端はあるのではないか。そういった認識を企業側が持って、制度設計から導入までを進めてほしい、ということだった。 確かに日本の雇用環境は子供を作りにくい環境であると言う点は激しく同意。ここまでことは単純ではないにしろ、不妊の遠因の一つに企業側の責任もあるという論は、改めて実例をもとに示されるとより納得させられた。 スポンサードサーチ 日経の方の話を聞いて思ったのは、企業も社員も働いて欲しい/働きたいということ。 どちらかが辞めてほしいとか辞めたいといったことはなく、どちらも見ている方向は一緒。 そして、今若い世代が会社を選ぶ基準の一つに「ずっと長く働ける会社かどうか」というのがあるそうだ。特にこの点は女性に顕著に多いとのこと。 つまり、治療によって休むことをリスクと考えるよりも、それを支援する制度や風土があることで得られる「採用アドバンテージ」のほうがはるかに大きい時代にどんどんなっていくのだと思う。 人材はまさに「人財」という意識を、企業側は否が応でも高めざるを得ないし、そうしないと結果として社としての更なる成長も望みづらくなるということなのかもしれない。 とは言え、理想だけでは経営や事業運営は円滑に回らないという現実もあるし、制度をつくっても形骸化してしまう可能性だって大いにある。 ではどうやって作っていけばいいのか? そのヒントとしてすでに一般的になってきている「子育て支援」の実際の現場での課題の中に 「配慮」と「遠慮」の区別ができていない ということがある。 そしてこれはまさに子育て支援に限らず、不妊治療支援においても同じようなことが起きるのではないかと。具体的にどういうことかと言うと、当人が大変だからと周囲が当人の仕事を大きく軽減しすぎたりする場合。 そういった適正な仕事量とは大きくかけ離れた対応は配慮ではなく「遠慮」といえる。 仕事量を過剰に軽減しすぎると当人にとってはある種成長の機会を奪われることになり、また周囲が自分に遠慮しているとわかってしまうと「迷惑をかけて申し訳ない…」という気持ちから辞めてしまうことにも繋がりかねない。 実際に、子育てで会社を辞める理由の上位に「周りに迷惑をかけているから」という調査結果も出ている。 配慮と遠慮の線引きを、 「この人はどこまでだったらできるだろう?」 と深く考えて上司や周りがサポートするということが欠かせないし、不妊治療支援制度においても同様に欠かせないものであると。 配慮と遠慮という言葉で示されるとすごくわかりやすかった。あぁ確かになと納得。とは言え、頭では分かっていてもこの線引きって現場ではなかなか難しいのだろうなと思う。 ただ不妊治療との両立においては、引き合いの例とは逆のケースもあると思う。遠慮や配慮自体がそもそもない為に過剰に仕事を抱え込むことになり、結果的に制度を活用しづらいといったケース。むしろこちらの方が多いような気が個人的にはする。 スポンサードサーチ では具体的にどうやって配慮と遠慮の線引きをすればいいのだろうか。 それを考えるには、逆になぜ線引きができないかを考える必要がある。線引きを難しくする大きな理由の一つに、 「知識がない」 ということが挙げられる。例えば不妊治療で言えば こういった知識が正しく認知されていないことがいずれのケースにおいてもそもそも大きい。 制度を作る前にみんなが正しく不妊治療の課題やその内容について知る機会を持つことがまずもって必要。いかに理解ある風土を育てるかが、機能する制度を作る上で必要不可欠ということだった。 この話を聞いて思ったのは、すべての根本は教育や啓発であり、正しい知識と詳しい実情を多くの人が知り理解することが何においても大前提として必要だなと。 この点はサイバーエージェントの取り組みでも同じ趣旨のことが言われていたので、本当にそうなんだろう。 制度の重要性を人材確保の面から、今後いかに企業側にとってメリットとなり得るか、データを交えての詳細な説明は非常に興味深かった。 制度を考えている企業は、こう言った点までしっかりと認識した上で、設計〜導入をすべきだと思う。企業も社員も同じなのは「働きたい」ということ
とは言え理想と現実のギャップはある。まずは「配慮」と「遠慮」の区別をつけるべき
やはり「知識」を正しく知り理解することが根本的に必要
まとめ
夫
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「私は既婚ですが子供はいません。20代はバリバリ仕事を頑張って、20代後半で結婚しました。
30代になろうという頃に子作りを始めようと夫と相談し始めました。しかし、ちょうどその時に上司から
「面白いプロジェクトがあるけどやってみない?これやると将来につながるよ」
と誘われ、2年ほどの短期プロジェクトということもあったので、子作りは一旦保留してプロジェクトに専念しました。
ですが、結局そのプロジェクトは5年以上かかり気がつけば30代後半になっていました。
そこで子作りを開始しようと思ったのですが、今度は夫が転勤で単身赴任となってしまいました。結局30代に思ったように子作りができず、今日に至っています」